プリュ・オー!

プリュ・オー!
Plus oh !
監督 ジャン=リュック・ゴダール
脚本 ジャン=リュック・ゴダール
出演者 フランス・ギャル
音楽 フランス・ギャル
編集 ジャン=リュック・ゴダール
配給 フランスの旗 M6 (放映)
公開 フランスの旗 1996年4月20日
上映時間 4分
製作国 フランスの旗 フランス
言語 フランス語
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プリュ・オー!』(仏語Plus oh !、「もっとオーを!」の意)は、ジャン=リュック・ゴダール監督による、1996年製作のフランスの短篇映画である。歌手のフランス・ギャルが依頼し、彼女の曲『Plus haut』(1980年)のミュージック・ビデオとして製作された。

概要[編集]

1996年、『夢見るシャンソン人形』などで知られるフランスのポップス歌手、フランス・ギャルが、1980年のアルバム『Paris, France』所収の曲、『Plus haut』をシングルカットするにあたり、そのミュージック・ビデオの製作を、かねてから『ヌーヴェルヴァーグ』(監督ジャン=リュック・ゴダール、主演アラン・ドロン1990年)が好きだったゴダールに依頼した。最初は断ったゴダールだったが、「いわゆるクリップ製作にはなりませんよ」と言いながら、最終的には引き受けることにした[1]。本作のタイトルは、ギャルの曲のタイトルと同じ音(「プリュ・オー」)をもつが、曲名の意味が「もっと高く」であるのに対して、「もっとオーを!」という驚きを喚起する意味に換えられている。

クレーンに乗った撮影監督のシルエット映像で始まる本作は、のちの『二十一世紀の起源』(2000年)や『時間の闇の中で』(オムニバス『10ミニッツ・オールダー』の一篇、2002年)と同様のつくりをしており、とくに近現代絵画とカトリックの宗教画の引用が多く、また、トーマス・エジソンが発明したキネトスコープ最初の映画での鷲が乳児を掴んで空を飛ぶショットや、ヘンリー・フォンダのキスシーン、グレタ・ガルボのポートレート、セルゲイ・エイゼンシュタイン監督の『イワン雷帝』(第二部・1946年)、ジャン・コクトー監督の『美女と野獣』(1946年)、ウォルト・ディズニー製作の世界初の長篇カラーアニメーションである『白雪姫』(1937年)など大量の映画のアーカイヴ・フッテージをモンタージュしてつくられている。セリフのひとつもないこの「映画」は、ゴダールにとってはサイレント・フィルムであり、サイレント時代に多用された「アイリス」で、歌うフランス・ギャルの口もとや瞳を捉え、その口もとに「OH!」の「O」の文字を乗せる遊びをしている。

このゴダール監督のサイレント・フィルムでのゴダールのメッセージは、

芸術は見はしない。それは姿を変える。L'Art ne voit pas. Il métamorphose.
美は聴きはしない。それは姿を変える。La Beaute n'écoute pas. Elle métamorphose.
愛は考えはしない。それは姿を変える。L'Amour ne pense pas. Elle métamorphose.
映画は語りはしない。それは姿を変える。Le Cinéma ne parle pas. Il métamorphose.

といった字幕でのみ語られている。

また、『イワン雷帝』のカットは、おなじスローモーションのかけかたで、『時間の闇の中で』でも使用された。

Plus haut』のCDシングルは1996年3月15日ワーナーのU10レーベルから発売になったが、多数の引用によってつくられ完成した本作は、著作権上の問題から、ニュースや音楽に特化したフランスのテレビ局M6で、同1996年4月20日にたった1度だけ放映することとなった[1]。その後、2006年パリポンピドゥーセンターでのゴダール展に際してのレトロスペクティヴ等で上映された。

作品データ[編集]

カラー作品(ビデオ) / 上映時間 4分 / 上映サイズ1:1.37(スタンダード・サイズ

スタッフ・キャスト[編集]

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  1. ^ a b 仏語版WikipediaFrance Gallのページの記述の抄訳。

外部リンク[編集]