白雪姫 (1937年の映画)

白雪姫
Snow White and the Seven Dwarfs
監督 デイヴィッド・ハンド
脚本 テッド・シアーズ
オットー・イングランダー
アール・ハード
ドロシー・アン・ブランク
リチャード・クリードン
メリル・デ・マリス
ディック・リカード
ウェッブ・スミス
原作 グリム兄弟
製作 ウォルト・ディズニー
ロイ・O・ディズニー
出演者 アドリアナ・カセロッティ
音楽 フランク・チャーチル
レイ・ハーライン
ポール・J・スミス
撮影 ボブ・ブロートン
製作会社 ウォルト・ディズニー・プロダクション
配給 アメリカ合衆国の旗 RKO
日本の旗 大映洋画部
公開 アメリカ合衆国の旗 1937年12月21日
ドイツの旗 1938年
日本の旗 1950年9月26日[注釈 1]
上映時間 83分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $1,490,000
興行収入 $418,200,000
配給収入 日本の旗 7323万円[1]
前作 (本作がシリーズ第1作)
次作 ピノキオ
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当時の白雪姫の特集動画(1937年製作)
劇中の挿入歌「ハイ・ホー英語版」を歌う7人の小人たちの動画

白雪姫』(しらゆきひめ、原題:Snow White and the Seven Dwarfs)は、1937年アメリカ合衆国ファンタジー映画ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ製作で、世界初のカラー長編アニメーション映画である。

概要[編集]

グリム兄弟による童話白雪姫』が原作。 ディズニーの長編映画第1作目であり、歴史に残る名作にするべく、莫大な労力と金額が費やされ、4年の歳月と170万ドル(当時の金額)の巨費を投じて制作された大作である。世界初のカラー長編でありながらフルアニメであり、作成されたセル画の枚数は25万枚にも上る(白雪姫から遥か後の時代に緻密な描画で有名となったスタジオジブリ作品でも、『崖の上のポニョ』の17万枚が最多である)。結果として質感すらも感じさせるキャラクターの動きが実現されている。まだアニメーションといえば実写映画の合間に子供向けに上映される短編を指していた時代であり、成功を危ぶむ声も多く、「ディズニーの道楽」と言われていたが、ふたを開けてみれば6,100万ドルの収益を上げる桁外れの大ヒットを記録した。

挿入歌の『いつか王子様が』(Someday My Prince Will Come)は、ジャズやポピュラー音楽のスタンダードナンバーとして多くのアーティストによってカバーされている。また、小人のマーチ『ハイ・ホー』(Heigh-Ho)も有名である。

あらすじ[編集]

むかしある城に白雪姫という美しい王女が住んでいた。幼い頃に両親を亡くしていた白雪姫は継母である女王とともに暮らしていた。しかし女王は大変恐ろしい魔女で、白雪姫を下働きのように扱っていた。そして魔法の鏡に「この世で一番美しい女は誰?」と聞くのが日課になっており、魔法の鏡が女王だと答えるのを聞いて満足していた。

ある日、いつものように白雪姫が働いていると、偶然通りかかった王子と出会い恋に落ちる。同じ日に、女王がいつものように魔法の鏡に声を掛けると、魔法の鏡は「世界で一番美しいのは白雪姫です」と答えてしまう。怒り心頭の女王は、手下の狩人に白雪姫を殺し彼女の心臓を持ち帰るよう命令する。哀れに思った狩人は彼女に女王の陰謀を教えて森の奥へと逃し、代わりに豚の心臓を持ち帰って女王を欺く。

一方の白雪姫は、森で迷った末に動物達に導かれて小さな家を発見し、中が汚れているのを見て掃除を始める。その家は七人の小人たちが住む家であった。やがて鉱山での仕事から戻って来た小人たちに挨拶をすると、小人たちは白雪姫を歓迎して家事全般を引き受けることを条件に匿い、白雪姫は小人たちと共に楽しい一夜を過ごす。

一方で、白雪姫が生きていることを知った女王は、白雪姫を自ら手にかけることを決心。魔法の薬を飲んで醜い老婆に変身し、毒リンゴを作って小人たちの家に向かう。その際、「毒リンゴの呪いは恋人の初めてのキスで解ける」ことを知ったが、「死んだと思い込んだ小人たちが生きたまま埋めるだろう」と本気にしなかった。

翌朝。小人たちが仕事に出た後、白雪姫は彼らに留守の間は誰も入れるなと忠告を受けていたが、家にやってきた怪しい物売りの老婆を家に招いてしまう。その老婆の正体は、白雪姫が生きていることを知り今度こそ亡き物にしようと魔法で化けた女王だった。異変を察知した動物たちの知らせで、白雪姫に危機が迫っていることを知った小人たちはすぐさま家に引き返し、老婆に化けた女王を追撃。崖に追い詰められた女王は巨石を落として小人たちを殺そうとするも、突然の落雷によって谷底へと落ちる。

しかし時既に遅く、白雪姫は女王が与えた毒リンゴを口にし息絶えていた。物言わぬ白雪姫の前で涙にくれる小人たちは、彼女の美しさを惜しみ、埋葬することなくガラスの柩に安置して片時も傍を離れようとしなかった。

時は流れて翌年の春、白雪姫の恋人で、彼女の行方を探し続けていた王子が白雪姫の柩を見つけ出し、静かにくちづけを交わす。すると、息絶えたはずの白雪姫が息を吹き返した。女王がリンゴに浸した毒は、口にしたものを殺すのではなく永遠の眠りに落とすというものであり、真実の愛のキスを受けて毒の魔法が打ち消されたのだった。

平和の訪れと王子との再会の喜びを胸に、小人たちに別れを告げた白雪姫は王子と共に旅立ち、王子の国で末永く幸せに暮らすのだった。

キャラクター[編集]

ディズニーランド・パリでの白雪姫と王子。
白雪姫(Snow White)
本作の主人公。14歳。とある国の王女で、とても美しく可憐な容姿と優しい心を持った美少女。
その美貌のため、継母である女王の怒りを買い殺害を企てられるが、手下の狩人の助けもあり森の奥に逃れる。女王から召使い同然の扱いを受けていたため王女でありながら家事全般をこなしたり、小人達に食事前の手洗いやマナーを教えていたりと家庭的な一面も身についている。
ディズニープリンセスの1人。
王子(The Prince)
白雪姫を救う王子。女王の城で歌っていた彼女を見て一目惚れをし、ずっと行方を探していた。ラストでは死んでいた白雪姫を発見し、彼女に口づけをして死の眠りから救い、自分の城に連れて行った。
女王(The Evil Queen)
本作のディズニー・ヴィランズで、白雪姫の継母自惚れ屋で自分の美貌を世界一と思っており、それが他人に脅かされることを断じて許そうとしない高慢かつ残酷な性格の持ち主。
普段はかなり冷静な性格で、感情を表に出すことはないが、老婆になった後は感情が豊かになり、死体を蹴飛ばすなど残虐な面が強調される。一方、毒リンゴの毒は「恋人とのキスで解ける」ことを知っていながら「小人たちが生きたまま埋めるだろう」と言うなど、詰めが甘い部分もある。実は魔女でもある。
自分よりも美しい美貌の持ち主である白雪姫を殺害するため配下の狩人に命令するも、裏切られて欺かれたため自らの手で殺害を企て、自らみすぼらしく醜い物売りの老婆に変身しやって来る。その時小鳥たちに正体を感づかれてしまうも、襲われた事を逆手に取りわざと具合が悪くなったフリをしてまんまと家に入り込み、毒りんごで白雪姫を亡き者にする。直後に駆け付けた小人たちに追い詰められ、巨石を落として反撃しようとした瞬間に落雷で足元の崖が崩れ、醜い老婆の姿のまま転落死した。
7人の小人たち英語版(The Seven Dwarfs)
森の奥の鉱山でダイアモンド掘りをしている小人(ドワーフ)たち。それぞれ性格に基づいて名前がついている。また、この順番で毎日仕事場への行き帰りをする。
ドック/先生(Doc)
温和な性格で先生のように物知りなメガネをかけた小人。7人のリーダー的存在。少しでも慌てると言葉を言い間違えたりつっかえたりしてしまう。
グランピー/おこりんぼ(Grumpy)
現実的で、感情的。いつも険しい顔をしている。かなりのツンデレで、当初はよそ者で女性である白雪姫に反発していたが、彼女にキスされたことがきっかけで好意を抱くようになり、危険が迫っていると知ると真っ先に飛び出すなど根は優しい。白雪姫が永遠の眠りについた際は悲しみをこらえて涙を流し、目覚めた彼女と別れる際に投げキッスを送った。また白雪姫も小人達の誰よりも彼と仲良くしようとする場面があった。
ハッピー/ごきげん(Happy)
いつもにこにこしている元気いっぱいのムードメーカー。七人のなかで唯一、白い眉毛をしている。
スリーピー/ねぼすけ(Sleepy)
いつも寝たそうな顔をしている。のんびりした性格。
バッシュフル/てれすけ(Bashful)
照れ屋で、誰を見てもすぐに真っ赤になるほど純情。
スニージー/くしゃみ(Sneezy)
花粉が苦手でアレルギーを持っているらしく、周囲の物が吹き飛ぶほどのくしゃみを連発する。本人や周囲の悩みの種でもある。
ドーピー/おとぼけ(Dopey)
なぜかしゃべらない。白雪姫の事が大好き。小人の中では唯一髭が無く、見た目も振る舞いも子供のようなあどけなさである。ごきげん曰くどもり屋らしい。白雪姫に何度も口でキスしようとするなどおませな部分もある。
ウォルト・ディズニー自身によると、ドーピーが喋らない理由は、自分が「喋ろうと試みたこともないから」である(実際には、ドーピーのイメージにぴったりの声優が見つからなかったためといわれ、叫び声のみをエディ・コリンズが担当した[2])。また、サッカーブラジル代表チームの監督であるドゥンガの名前は彼にちなんでいる。
魔法の鏡(The Magic Mirror)
物知りの鏡。問いかけに対しては常に実直に答えるため、白雪姫を危機に陥れてしまう。
ハウス・オブ・マウスでは店に飾られており、ミッキー達が悩みの相談をすることがあるが、融通が利かないことが多く、時には相談内容のバカバカしさに皮肉をぼやく事も。
ミッキーマウスのワンダフルワールドではミッキーの大ファンで原作と異なり、「この世で一番美しいのは白雪姫ではなく、ミッキーだ」と言い、女王に殴られたり、ミッキーマウスマーチを歌うなど他の作品では見せなかったはっちゃけな一面を見せた。
狩人(Humbert/The Huntsman)
女王の手下として仕えている。女王の命令に従って白雪姫を森に連れていってナイフで殺害しようとするが彼女の美しさと純粋さで手を下せず、女王に殺害を依頼されたことを告白した上で彼女に森の奥に逃げて戻らないようにと念を押し、豚の心臓を彼女のものと偽って女王に献上することでごまかした。

声の出演[編集]

役名 原語版声優 日本語吹き替え
1958年公開版 1980年公開版
白雪姫 アドリアナ・カセロッティ 富沢志満 小鳩くるみ
王子 ハリー・ストックウェル 五十嵐喜芳 三林輝夫
女王 ルシル・ラ・ヴァーン英語版 北林谷栄 里見京子
先生 ロイ・アトウェル 東野英治郎 熊倉一雄
おこりんぼ ピント・コルヴィッグ 三津田健 千葉順二
ねぼすけ 柳家小さん 北村弘一
くしゃみ ビリー・ギルバート 坊屋三郎 槐柳二
てれすけ スコッティ・マットロー英語版 春風亭枝雀 二見忠男
ごきげん オーティス・ハーラン 三遊亭円馬 滝口順平
おとぼけ エディ・コリンズ英語版 原語版流用
魔法の鏡 モローニ・オルセン英語版 村上冬樹 大木民夫
狩人 スチュアート・ブキャナン英語版 八代駿
ナレーター N/A 谷育子
  • 1958年版による公開:1958年(大映)、1969年(ブエナ・ビスタ)、1985年(東宝)[注釈 2]
※この日本語版は「ピノキオ」(1959年公開)と同時に録音されている[3]
  • 1980年版による公開:1980年(東映)、1990年(ワーナー)、1994年(ブエナ ビスタ ジャパン)
※この新バージョンで白雪姫を演じた小鳩くるみは、当時日本語版の制作に従事していたディズニー・プロのブレーク・トッドから、「あなたの演じる Snow White は完璧だ!」と絶賛を受けている[4]
  • ディズニーから発売されているソフト(VHS、DVD、BD等)には1980年公開版の吹き替えを収録。
  • 注:日本国内の映画館で上映されたのは1950年1958年1980年だけではなかった。

スタッフ[編集]

映像制作[編集]

製作 ウォルト・ディズニーロイ・O・ディズニー
原作 グリム兄弟
脚本 テッド・シアーズオットー・イングランダーアール・ハードドロシー・アン・ブランクリチャード・クリードン
メリル・デ・マリスディック・リカードウェッブ・スミス
音楽 フランク・チャーチルリー・ハーラインポール・J・スミス
キャラクター・デザイン アルバート・ハータージョー・グラント
白雪姫担当作画監督 ハミルトン・ラスク
王子担当作画監督 ビル・ティトラ
7人の小人担当作画監督 フレッド・ムーア
魔女担当作画監督 ノーム・ファーガソン
レイアウトチャック チャールズ・フィリッピヒュー・ヘネシーマクラーレン・スチュワートテレル・スタップケンドール・オコーナートム・コドリック
白雪姫担当原画 マーク・デイヴィス
小人担当原画 レス・クラーク
鳥担当原画 エリック・ラーソン
王子担当原画 ミルト・カール
マジックミラー担当原画 ウォルフガング・ライザーマン
女王担当原画 フランク・トーマス
魔女担当原画 ジョン・ラウンズベリー
ハゲタカ担当原画 ウォード・キンボール
女王担当原画 アート・バビット
原画 オリー・ジョンストンディック・ランディーロバート・ストークス
ジェームズ・アルガーアル・ユグスターサイ・ヤングジョシュア・メダーウーゴ・ドルシ
ジョージ・ローリーフレッド・スペンサービル・ロバーツバーナード・ガーバットグリム・ナトウィック
ジャック・キャンベルマーヴィン・ウッドワードジェームズ・カルヘインスタン・クワッケンブッシュライリー・トムソン
ヒュー・フレイザーケン・オブライエン
美術監督 ハロルド マイルズグスタフ・テングレンケン・アンダーソンヘーゼル・セウェルジョン ヒューブレイ
背景 マイク・ネルソンマール・コックスクロード・コーツフィル・ダイクレイ・ロックレム
モーリス・ノーブルサム・アームストロング
色彩設計 マーセリット・ガーナー
撮影 ボブ・ブロートン
録音 ウィリアム・E・ギャリティ
音響効果 ジム・マクドナルド
演出 パース・ピアースウィリアム・コトレルウィルフレッド・ジャクソンラリー・モーリーベン・シャープスティーン
監督 デイヴィッド・ハンド

日本語版音声制作[編集]

《1958年版》

製作指揮 ジャック・カッティング
台本翻訳 田村幸彦
演出・音楽監督 三木鶏郎
録音 国際ラジオセンター
コーラス ダークダックス
服部リズムシスターズ

《1980年版》

総指揮 ブレーク・トッド
翻訳 金田文夫
訳詞 若谷和子
制作進行 松坂尚美
録音 東亜映像録音株式会社
小人のコーラス ボニージャックス
コーラス 東京混声合唱団

挿入歌[編集]

  • 私の願い(I'm Wishing
  • ワン・ソング(One Song
  • 歌とほほえみと(With a Smile and a Song
  • 口笛ふいて働こう(Whistle While You Work
  • ハイ・ホーHeigh-Ho
  • ブラドル・アドル・アム・ダム(Blludle-Uddle-Um-Dum
  • 小人達のヨーデル(The Dwarfs' Yodel Song (The Silly Song)
  • いつか王子様がSomeday My Prince Will Come

未使用曲[編集]

  • ミュージック・イン・ユア・スープ(Music in Your Soup
小人達が白雪姫と共に食事をするシーンで使用される予定だった曲だったが、「内容が下品」とのウォルトの判断により、色彩前の段階で動画化されアフレコ済みだったシーン映像と共にカットされ没となった。ウォルトが司会を務めたテレビ番組「ディズニーランド」の中で初めて公開された。
2001年版と2009年版のDVDに未公開映像と共に楽曲が収録されている。
  • 大切にしよう、子供の心(You're Never Too Old to Be Young
「小人達のヨーデル」の採用前に候補として上がっていた楽曲だが、最終的に没となった。
※いずれもデジタル・リマスター版のサウンドトラックにボーナストラックとして収録されている。

日本語版制作当時の歌のタイトル(邦題)[編集]

1958年版[5]
私の願い/歌ただ一つ/笑顔で歌って/口笛ふけば/それ掘れそれ掘れ~ハイ・ホウ/ブルルル・ブンブン/小びとのヨーデル/いつか私の王子さまがやってくる
1980年版[6]
わたしの願い/歌ひとつ/ほほえみと歌と/口笛ふいて働こう/仕事の歌~ハイホー/手を洗う歌/へんな歌/いつか王子様が

サウンドトラック[編集]

  • 『ディズニー映画より 白雪姫』(ディズニーランド・レコード、1973年発売)LP:WFD-388
  • 『ディズニー映画より 白雪姫』(ディズニーランド・レコード、1975年発売)LP:SKK(D・H)2002
  • 『白雪姫 歌と音楽 日本語版オリジナル・サウンドトラック』(ビクター音楽産業株式会社、1980年発売)LP:JBX-2003/カセット:VCK-652
  • 『白雪姫 英語版オリジナルサウンドトラック完全収録盤』(日本コロムビア株式会社、1980年12月発売)LP:GZ-7187〜8-BV
  • 『白雪姫 オリジナル・サウンドトラック』(株式会社ポニーキャニオン、1990年11月21日発売)PCCD-00020
  • 『白雪姫 オリジナル・モーション・ピクチャー・サウンドトラック デジタル・リマスター完全盤』(株式会社ポニーキャニオン、1993年8月20日発売)PCCD-00097
  • 『白雪姫 オリジナル・モーション・ピクチャー・サウンドトラック デジタル・リマスター完全盤 キャラクター人形入り限定版』(株式会社ポニーキャニオン、1994年3月18日発売)PCCD-00110
  • 『白雪姫 オリジナル・サウンドトラック デジタル・リマスター完全版』(株式会社ポニーキャニオン、1996年1月19日発売)PCCD-00145
  • 『白雪姫 オリジナル・サウンドトラック デジタル・リマスター盤』(エイベックス・エンタテインメント株式会社、2000年1月19日発売)AVCW-12069
  • 『白雪姫 オリジナル・サウンドトラック デジタル・リマスター盤』(ユニバーサル ミュージック合同会社、2018年11月14日発売)UWCD-8001

製作エピソード[編集]

白雪姫、王子、女王が登場するシーンのアニメーションを作成する際にはロトスコープというフライシャー・スタジオから採り入れた手法が用いられた。コマ送りで撮影した生身の人間の動きをベースにトレースして動画化するという手法だが、これにアニメーションならではの動きの誇張を加えることにより、写実的かつ自然な動きの表現に成功している。また、マルチプレーン・カメラを使用することで3次元的な奥行きを表現し、更にテクニカラーによって色彩を施した。なお、ディズニーでは1932年から既に短編アニメのカラー化が行われている。

マルチプレーン・カメラで生み出された白雪姫の立体感は、日本の草創期のアニメ界にも大きな影響を与え、瀬尾光世の下で持永只仁が多層式撮影台を開発。1941年に瀬尾の「アリチャン」が生み出された[7]

日本公開[編集]

日本での公開は第二次世界大戦の影響もあり、西ドイツ(当時)と並んで1950年と各国に比べて遅い方だが、第二次世界大戦以前にこれ程までに質の高いアニメーションを制作していた事実と、制作を実現したアメリカの圧倒的国力に、公開当時に本作品を見た若者の多くが驚愕したという。特にディズニーアニメーションから多大な影響を受けたことで知られている手塚治虫は「(公開時に映画館で)本作を50回は見た」と回想している(なお手塚治虫は個人的に劇場用フィルムの廃棄品を特殊なルートでアニメーション製作の研究のために買い入れて保有していた。これはVHSLDDVDなどが登場するはるか前のことである)。

1951年までに400万を超える児童が都市部の映画館で観たとされ、常設館での上映が一巡した後は、大映が地方の公共団体やPTAなどに1日1万5,000円でフィルムの貸し出しを行った[8]。このため映画館のない地方でも、「学校行事などで同級生と共に白雪姫を観た」、 「初めて観た映画が白雪姫だった」という記憶を持つ者も多い[9]

リバイバル公開[編集]

1993年にはコダックのシネオンというデジタル処理で映像修復が施されたデジタル・ニュー・バージョンが公開され(日本での公開は1994年)、興行収入4,000万ドル以上を記録するなど大ヒットした。なお、この時点でドルビーサラウンドによる音声のステレオ化が行われている[10]

米国本公開時はRKOに映画配給を委託しており(ブエナ・ビスタ設立まで)、オープニングで「配給:R.K.O」というクレジットと、エンディングに「RKO RADIO PICTURES」の社名ロゴが背景の地紋に埋め込まれていたが、後のリバイバル上映時にRKOを省いたものに差し替えられた。このRKOが入った本来のオリジナル映像は、2001年版DVDに当該部分のカットが特典映像扱いで本編と別に収録された後、2009年版DVD/BDの本編映像に組み込まれ、本公開時のオリジナル版へ完全に復元された。

本作は作品中に著作権表記が有るものの公開時期が古く、リニュー(著作権更新手続き)が行われなかった事から、公開当時の米国の法律(方式主義)により権利放棄とみなされ、米国に於いてはパブリックドメインとなった(このため、コモンズに高解像度のスクリーンショットが収録されている)。また、日本では日本国内での上映公開から50年間を経た時点で著作権の保護期間が終了した(現在は法律が改正されて国内公開後70年間保護される規定になったがこれは法律の改正前に保護期間が終了した)と考えられることから、現在パブリックドメインDVDで旧画質のものが発売されている。しかし、デジタル・ニュー・バージョンは、公開された1993年から新規の著作権が発生した。

2007年、映画公開70周年を迎え、それを記念してフロリダディズニー・ワールドでは限定版フィギュアリンが販売された。 (世界各国の公開年については、シンプル英文版「Snow White and the Seven Dwarfs (1937 movie)」も参照)

現在の評価[編集]

2008年にはアーティスト、学者、評論家、歴史家で構成される1,500人以上の審査員によって選定される「AFIアメリカ映画100年シリーズ」の『アメリカ映画アニメーション部門トップ10』で1位に輝いている[11]。白雪姫城のモデルとなったとされるセゴビアアルカサルには多くの観光客が訪れる。

東映まんがまつり[編集]

1980年のリバイバル公開時には、「東映まんがまつり」内の一本として公開された。「東映まんがまつり」で海外のアニメ映画が上映されるのは、1977年7月17日公開の『世界名作童話 せむしの仔馬』以来で、「ディズニー作品」は史上初。

同時上映作は次の3本。

『鬼太郎』のみTVブローアップ版で、あとの2作品は劇場用新作。

ディズニー作品が「東映まんがまつり」で公開されたのは以下の事情による。ディズニー作品は1970年代後半、日本であまりヒットせず[12]1977年4月29日に公開された『星の国から来た仲間』を最後に1977年秋から[13]、日本での直接配給機構であるブエナ・ビスタ映画日本支社の解散・閉鎖をめぐって労使対立が続いて配給業務がストップし[13]、ディズニー作品は2年以上日本で公開されなかった[12][13][14]1979年になって和解が成立して新たに(旧)ウォルト・ディズニー・ジャパンが設立され、1979年11月29日帝国ホテルで記者会見があり、ハロルド・アーチナルブエナ・ビスタ・インターナショナル社長、松岡功東宝社長、金子操同副社長、岡田茂東映社長が出席[14]。東宝と東映と契約し二年ぶりにディズニー作品の日本マーケットへの再進出が決まり[14]、1980年からディズニー作品が日本で上映されると発表された[14]。松岡社長は「東宝は過去、ディズニー映画全作品を興画してきた。同社が映画を作る姿勢、観客に夢を与える姿勢に共鳴したからで今回も作品を配給することにした」と述べ、岡田社長は「東映はディズニー映画を追い越せと東映動画を育て、昨今はその時歩を国内外に築いている。今回はウチが『白雪姫』を公開することになった」などと話した[14]

ディズニー側は新旧のアニメで年間2番組はブッキングしたいと希望したが、東宝の番線に空きがなく、そこで「1980年夏の東映まんがまつり」に入れてもらえないかと金子東宝副社長と岡田東映社長で話し合いがもたれ、「年間1番組なら引き受ける」との合意に至った[12]。岡田としては当時、東映洋画角川映画や「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」の興行を手掛けるようになってマーケットが拡大し、東急レクリエーションと共に洋画興行でSTチェーンを組む松竹との軋轢が起こり、STチェーン内で摩擦ができていた事情から、より東宝に近づいておいた方が得策と判断した[12]。また将来的なフリー・ブッキングを見据えての措置でもあった[12]。翌「1981年夏の東映まんがまつり」でも『101匹わんちゃん大行進』と『ミッキーマウスとドナルドダック』の2本が「東映まんがまつり」枠で公開されている。そのため、1980年のリバイバル公開時の『白雪姫』、1981年のリバイバル公開時の『101匹わんちゃん大行進』、『ミッキーマウスとドナルドダック』の3本は、いずれも東映洋画ではなく通常の邦画系として公開された。また、1992年4月25日公開の「夢のファンタジーワールド」で『シンデレラ』と『ミッキーのたつまき騒動』の2本は、東映とワーナー・ブラザースの共同配給という形で、テアトルヒューマックスの系統にて小規模で公開された。

小説[編集]

  • 著:ジム・ラッツィ/訳:橘高弓枝『白雪姫』偕成社、1997年12月1日。ISBN 4-03-791110-8 

絵本[編集]

  • 訳:立原えりか/三石宏文、三石泰江、片山径子『白雪姫』講談社〈ディズニー名作童話館⑦〉、1988年1月10日。ISBN 4-06-194257-3 
  • 訳:森はるな『白雪姫』講談社〈ディズニーおはなし絵本館②〉、2001年9月10日。ISBN 4-06-271462-0 

メディアソフト[編集]

ディズニー社は家庭用ビデオテープレコーダーが登場してきた当時、テレビケーブルテレビ等で放送されている同社作品がテープ録画されることにより、繰り返し視聴されてしまい、映画館やテレビでの売り上げに被害をもたらすものとして、ソニー社を訴え、両者は長らく裁判で争い続けたという有名な経緯がある。そのような事情から、ディズニー社の方針が変わって映像作品がVHSビデオテープに収録されて販売されるようになったのは比較的遅かった。

ビデオテープ/LD[編集]

1993年に映像修復が施されたデジタル・ニュー・バージョンのセルビデオ(VHS)出荷本数はアメリカで2700万本、日本では1994年10月28日に「ウォルト・ディズニー・クラシック」レーベルとして期間限定生産で発売、180万本を記録[15][16]している。

2001年DVD版[編集]

2001年12月1日にウォルトの生誕100周年を記念し、ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメントが「プラチナ・エディション」シリーズの最初のソフトタイトルとして、1993年のデジタル・ニュー・バージョンを基にドルビーデジタル5.1chサラウンドにリマスター(英語のみ)などを施し、本編ディスクのみの通常版と特典映像を収録した2枚組の「デラックス・エディション(デラックス版)」が全世界同時発売となった。

日本では独自企画で、発売時に当時絶頂期にあった浜崎あゆみとタイアップし、このプロモーション用に制作された「いつか王子様が」のカバーがCMソングに使われ、フルコーラスのミュージックビデオが収録されたDVDビデオが購入者対象のキャンペーンにより抽選でプレゼントされた(他のCDDVDには未収録)。また、糸井重里プロデュースのミッキーマウスデザインのDVDプレイヤー同梱版も若干数発売された。

映像特典・オーディオコメンタリー[編集]

(☆印は本編ディスクに、★はVHSにも収録/2001年デラックス版のみ)

  • バーバラ・ストライサンドのカバーによる「いつか王子様が」のミュージッククリップ☆★
  • オーディオコメンタリー(ウォルトの30年分のラジオ音声などを作品解説へ再構成したもの)☆
  • ワイルド・ライド・ゲーム☆
  • 「ハイ・ホー」シング・アロング・ソング(劇中のハイ・ホーに英語字幕を付したもの)☆★
  • VIPツアー
    • メイキング・オブ『白雪姫』
    • ストーリー・ボードと完成品の比較
    • アート・デザイン
    • 美術設定
    • レイアウトと背景画
    • 映像のテスト
    • キャラクターの誕生
    • 取りやめになったコンセプト
    • ボイス・キャスト(オリジナル版声優のキャスティングの解説)
    • 『白雪姫』修復作業(デジタルリマスター版制作メイキング)
    • 未公開シーン(オーディオトラックに原画を順送りした構成)★
  • RKO版オープニングとエンド・クレジット
  • シリー・シンフォニー春の女神』(アニメーション)
  • ディズニー・スタジオの歩み(WDCの社史を関連映像を交えて1920年代から1990年代まで10年刻みで関係者が解説したもの)
    • 「白雪姫」予告編集(アメリカでの初公開時の予告編とリバイバル上映時の予告編)
  • プレミア
  • パブリシティ

2009年BD/DVD版[編集]

日本では2009年11月4日ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメントからBlu-ray Disc2枚と本編DVDの計3枚組の「ダイヤモンド・エディション」、DVDビデオ2枚組の「プラチナ・エディション」、DVDビデオ1枚の「スペシャル・エディション」が発売された。「ダイヤモンド・エディション」のBDMVでは更なる映像のデジタルリマスターによりHD化し、DTS-HDマスターオーディオ7.1Chサラウンドにリマスタリングした音声を収録。また、2001年デラックス版の映像特典の殆どを再収録している。

2001年デラックス版から追加された映像特典[編集]

  • プリンセスと魔法のキス』特別映像
  • すべては、ここから始まった。
    • その後の物語『白雪姫へのプレゼント』
  • ハイペリオン・スタジオ・ツアー(本編制作当時の蔵出し映像)
  • ゲーム&アクティビティ
    • プリンセス診断ゲーム魔法の鏡よ教えて!
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2001年デラックス版との差異点[編集]

  • バーバラ・ストライサンドのカバーによる「いつか王子様が」のミュージッククリップを削除
  • RKO版オープニングとエンド・クレジットを削除(本編に組み込まれている)
  • 本編で製作会社(ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ)のタイトル映像が現行の3DCG描画によるものへ改められている。

パブリックドメインDVD[編集]

日本では2007年頃からパブリックドメインDVDとして複数のメーカーから廉価で発売されている。

MovieNEX[編集]

日本では2016年5月18日ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンからBlu-ray DiscとDVD、デジタルコピー(スマートフォンタブレット端末で、本編映像を見ることができるサービス)、MovieNEXワールドがセットになったMovieNEXが発売された[17]

ボーナス・コンテンツ[編集]

  • ウォルト・ディズニーの思い:『白雪姫』
  • 『白雪姫』から生まれるプロダクト
  • デザインについて:最初のディズニープリンセス
  • あなたが知らない7つのこと
  • 70秒でわかる『白雪姫』
  • 初期のストーリー:王子との出会い
  • はじめての長編アニメーション
  • 『白雪姫』のアニメーターたち
  • ハイペリオン・スタジオツアー
  • エクスポージャーシートの解説
  • その後の物語『白雪姫へのプレゼント』
  • ストーリー会議:こびとの描写
  • ウォルトは語る:女王の命令
  • 未公開シーン:♪ ミュージック・イン・ユア・スープ
  • 未公開シーン:ベッドを作ろう
  • ボイス・キャスト
  • 音声解説

リメイク[編集]

実写リメイク映画が2024年春に公開予定である[18][19]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 吹き替えでの初公開は1958年。
  2. ^ パンフレットや、フィルム冒頭のクレジットには1980年版の出演者名が記載されていたものの、実際には1958年版の音声が使用された。

出典[編集]

  1. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)81頁
  2. ^ 火の鳥文庫『ディズニー』
  3. ^ 1959年公開時の「ピノキオ」映画パンフレット
  4. ^ 1980年リバイバル公開時の映画チラシ
  5. ^ 1958年公開時の「白雪姫」映画パンフレット
  6. ^ ウォルト・ディズニー映画「白雪姫」日本語版オリジナル・サウンドトラック『白雪姫~歌と音楽』/ビクター音楽産業 JBX-2003 (1980年)
  7. ^ 横田正夫、小出正志、池田宏『アニメーションの辞典』p.61、朝倉書店、2012年。
  8. ^ 「白雪姫は1万5千円」『朝日新聞』昭和26年10月6日
  9. ^ 世相風俗観察会『増補新版 現代世相風俗史年表 昭和20年(1945)-平成20年(2008)』河出書房新社、2003年11月7日、38頁。ISBN 9784309225043 
  10. ^ 公開時のチラシより
  11. ^ Animation - AFI: 10 Top 10” (英語). AFI.com. 2014年10月27日閲覧。
  12. ^ a b c d e 「映画・トピック・ジャーナル 『ディズニー映画日本市場に復帰』」『キネマ旬報』1980年1月上号、200頁。 
  13. ^ a b c “東宝、東映、ディズニー映画を肩代わり配給―55年春以降、年間5本公開予定。”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社): p. 10. (1979年11月20日) 
  14. ^ a b c d e “東宝・東映W・D映画配給 三年ぶり白雪姫他五作品”. 週刊映画ニュース (全国映画館新聞社): p. 1. (1979年11月24日) 
  15. ^ ブエナ・ビスタアラジン』220万本 『白雪姫』は180万本」『日経産業新聞』1995年1月23日付、7面。
  16. ^ 日経BP社技術研究部『進化するアニメ・ビジネス―世界に羽ばたく日本のアニメとキャラクター』日経BP社、2000年、42頁。ISBN 4-8222-2554-2(日本での出荷本数のみ記載)
  17. ^ 白雪姫|ブルーレイ・DVD・デジタル配信|ディズニー公式”. ディズニー公式. 2019年2月6日閲覧。
  18. ^ Rubin, Rebecca. “Disney Removes 'Star Wars' Spinoff 'Rogue Squadron' From Release Calendar, Sets Dates for 'Snow White,' 'Inside Out 2' and 'Lion King' Sequel” (英語). Variety. 2022年9月15日閲覧。
  19. ^ “ディズニー実写版『白雪姫』2024年3月に全米公開決定”. シネマトゥデイ. (2022年9月16日). https://www.cinematoday.jp/news/N0132439 2022年9月23日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]