完全食

完全食(かんぜんしょく)とは、健康を維持するために必要な栄養をすべて含んだ食品、あるいは食事である。

語源[編集]

二木謙三による定義
医学会の重鎮であり健康法を提唱した二木謙三1921年には使用している[1]
二木は、芽の生える玄米をはじめとした植物類や、動いている動物など、まだ生きている食物を完全食と呼んだ[2]。いったん死ねば元に戻すことはできず腐敗するが、そのような食物が身体を変質させ病が起こる[3]。豆腐のように豆を殺したものや、刺身のように部分を取り出したものは不完全とした[4]
また二木は、健康を維持するために必要な栄養素を非常に豊富に含んだ食品として玄米を指して使った[5][6]。玄米から皮を精白した白米は死んでおり、ビタミンやミネラルも減るために、不完全であり肉食などの副食を必要とし、完全食であれば小食で済むとした[7]
佐伯矩による定義
栄養学の創設者である佐伯矩の栄養学では、1日分の必要な栄養が含まれた食事のことを完全食[8]、あるいは標準食[9]と呼ぶ。そうでない食事は偏食である。1日単位で見ると必要な栄養素の量を満たしているのだが、1食毎で見ると1日分の等分ではない場合は不完全で偏食であり、理想的な食事ではないとされる[10]。等分された場合は、完全食と呼ばれる[10]
1日3回に分けて食べる場合、必要な栄養素が3等分された毎回完全のほうがよいことをラットと人間での実験を根拠に主張しており、そのことを毎回食完全(EMP:Each Meal Perfect)と呼ぶ[11]。毎回食完全の理論が完成されたのは、1924年頃とされている[12]
現代における定義
現代においては、厚生労働省日本人の食事摂取基準」に定める必須栄養素を過不足なく補える食品が、もっとも完全食の定義に近いといえる。

完全食の例[編集]

一般に「完全食」と呼ばれているものを、ここで挙げる。完全食の中にも、栄養素に過不足がないもの(完全食)と、過不足があるもの(準完全食)に分かれるが、一般には両者を合わせて「完全食」と言われている。

現状において、あらゆる必要栄養素を過不足なく補える自然界の食材はない(探せば存在するかもしれないが、味・量・価格などの問題により、少なくとも一般には出回っていない)。そのため、完全食と言われる食材をメインに、完全食同士を組み合わせたり、完全食でない他の様々な食材を取り入れて足りない栄養を補うことが肝心である。

必須栄養素に過不足がないと主張されているもの(完全食)[編集]

Huel(ヒュエル)
英国発の完全栄養食。パウダーやバーなど。
Soylent(ソイレント)
アメリカの栄養基準に準拠した完全食。パウダー。
andew(アンジュ)
日本の栄養基準に準拠した完全食。チョコレート。
COMP(コンプ)
日本の栄養基準に準拠した完全食。ドリンクやグミ、バーやアイスなど。
BASEFOOD(ベースフード)
日本の栄養基準に準拠した完全食。パスタおよびパン、クッキー。

必須栄養素に過不足があるもの(準完全食)[編集]

玄米
カロリーは350kcalで白米とほぼ変わらず、糖質も同じくらいある。白米と比較して、カリウムが2.6倍、ビタミンB1が5倍、マグネシウムも豊富。その他の栄養素も軒並み白米よりも多く含まれているが、ごくわずかな差であり、他の副菜で補ったほうが効率が良いレベルである。
たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンをバランスよく含んでいる。ビタミンC、食物繊維が含まれていない(殻を食べればカルシウムも摂取できる)が、ほぼ完全栄養食と言える。以前は、コレステロールを取りすぎないよう1日1個が推奨されていたが、それは草食動物の兎に高カロリーの鶏卵を摂取させるという実験から得られた結果であり、現在では毎日5個くらい食べても問題はないとされている。[要出典]
牛乳
サツマイモ
餃子
納豆
ヨーグルト
トマト
ブロッコリー
リンゴ
キヌア
オートミール

その他[編集]

「牛乳は完全食品です」というキャッチコピーは、アメリカの連邦取引委員会に誤解を招くような不正な広告だと指摘されている[13]

ローヤルゼリーは、女王蜂の食料であり完全食と言われる事があるが、人間にとっての完全食であるとの結果は出ていない。

食品中に含まれる栄養素[14]
(食品100gあたり)
食品名 玄米めし 普通牛乳 全卵(生、鶏)
たんぱく質 2.8g 3.3g 12.3g
脂質 1.0g 3.8g 10.3g
炭水化物 35.6g 4.8g 0.3g

三大栄養素のバランスから見ると、卵は炭水化物が非常に少ない。玄米は炭水化物の比率が高すぎる。

認定の可否[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 二木謙三 『食物と健康』 修養団出版部、1921年。25頁。
  2. ^ 二木謙三 『完全にして正しき食物』 大日本養正会《大日本養正会叢書1》、1932年10月。30 - 32頁。
  3. ^ 二木謙三 『完全にして正しき食物』 大日本養正会《大日本養正会叢書1》、1932年10月。4、18 - 19頁。
  4. ^ 二木謙三 『健康への道』致知出版社、2003年2月。ISBN 978-4884746438。27頁(新紀元社からの初版は1942年)
  5. ^ 二木謙三 『食物と健康』 修養団出版部、1921年8月。24頁。
  6. ^ 二木謙三 『営養と玄米食』 1932年。
  7. ^ 二木謙三 『完全にして正しき食物』 大日本養正会《大日本養正会叢書1》、1932年10月。1、43、45、51頁。
  8. ^ 佐伯芳子 『栄養学者佐伯矩伝』 玄同社、1986年。ISBN 978-4-905935-19-3。158頁
  9. ^ 柳井一男、松井貞子 『新佐伯式フードガイド-新時代の食育と健康管理のために』 フットワーク出版、2006年5月。ISBN 9784876895465。31頁。
  10. ^ a b 佐伯芳子 『スピード栄養料理-ひとり暮らしのあなたのために』 実業之日本社、1964年。194-195頁。
  11. ^ 柳井一男、松井貞子 『新佐伯式フードガイド-新時代の食育と健康管理のために』 フットワーク出版、2006年5月。ISBN 9784876895465。30頁。
  12. ^ 柳井一男、松井貞子 『新佐伯式フードガイド-新時代の食育と健康管理のために』 フットワーク出版、2006年5月。ISBN 9784876895465。76頁。
  13. ^ フランク・オスキー 『牛乳には危険がいっぱい?』 東洋経済新報社、ISBN 978-4492041918。2003年4月。199頁。
  14. ^ 五訂増補 日本食品標準成分表(文部科学省)

関連項目[編集]