全日本スキー技術選手権大会

全日本スキー技術選手権大会(ぜんにほんスキーぎじゅつせんしゅけんたいかい)は全日本スキー連盟(SAJ)が運営する、スキーの総合技術を競う大会である。技術選と略称されることがある。

概要[編集]

参加資格はSAJ1級以上で、各都道府県予選を突破した選手がスキー技術、巧さを競う。 アルペンレースのように「タイム」を競う概念はなく、フリースタイル競技のように技の難度が直接点数に反映されることもない。 設定された斜面に対してどのようなターン弧を描いてくるか、どれだけスキー板の性能を引き出すことができているかなど、 さまざまなポイントを評価し、順位を決定する。

アルペンスキーやモーグル競技が限られた状況の中でパフォーマンスを競うのに対して技術選は、中斜面の一枚バーンから、 うねりを含む複合斜面、さらにはコブ斜面など、ゲレンデのあらゆるフィールドを戦いの場とする。

雪面コンディションも、アイスバーンと見まがうようなハードパックから、最低限のグルーミングのみを施した不整地(コブ斜面)で行うものなど、 一般スキーヤーが普段滑走している状況に近いシチュエーションで競技が行われるのも特徴である。

タイムそのものを競う競技ではないが、ターンの質とスピードには密接に関わるため、ほとんどの種目は驚異的な滑走スピードで繰り広げられる。 種目によっては極めて難度の高い斜面が設定されるため、選手にとっては恐怖心との戦いでもある。

一般スキーヤーが普段楽しんでいるゲレンデを舞台に、その技能を種目ごとにイグザミナーがジャッジし、すべての種目の獲得点の合計が高い者が勝利する。 いわば、ゲレンデスキーヤーの頂点を決める大会である。

現在は5審5採用制によって行われており、100点満点として各イグザミナーがそれぞれ満点中の20%を採点し、その合計点で競う[1]。一言でいえば斜面状況、雪質に適した合理的な滑りをより速いスピードの次元で表現した選手に高得点が与えられる。

競技種目及び斜面設定については大回り、小回り、フリーの3種を、急斜面、総合斜面、不整地の3タイプで組合せて実施される。

各地区予選を勝ち抜いた選手が、予選2日間、準決勝、決勝、決勝スーパーファイナルと5日間にわたりスキー技術を競いあう(2020年・第57回大会)[2]。前年の大会での上位者は予選が免除される。決勝に残れるのは男子90位タイ、女子30位タイまでであり[3]、本選からの得点すべてを合計し、最も合計点が高い選手が優勝者となる。

アルペンノルディックなどのいわゆる競技スキーはSAJの競技本部が統括するが、技術選は教育本部が開催する大会である。

2011年の第48回大会は、NBS長野放送、BS12 TwellV(トウェルビ)にてテレビ放送された。

OTTO'S(有)オッツ、㈱芸文社(スキーグラフィック)などからDVDが発売されていて、過去にはスキージヤーナル㈱からの発売もあった[4]。また直接の物ではないが、SAJ公認スキー指導員・準指導員受検等の際に教本として購入する、山と渓谷社(過去にはスキージヤーナル)より発行されている本(一例として、公益財団法人 北海道スキー連盟 教育本部メモ など)に添付されている指導用DVDに前年度大会のダイジェストが収録されている事がある[5]

歴史[編集]

1964年から年1回開催されており、2019年の大会時点で56回を数える。第1回から第15回までの大会名称は「全日本デモンストレーター選考会」、第17回から第22回までの大会名称は「全日本基礎スキー選手権大会」であった。

1990年~1995年までは外国人選手の出場が認められていて、女子は5年連続で、男子も3年連続で外国勢が制した。その後、外国人選手については、各都道府県連盟にて行う技術選の予選大会を兼ねた基礎スキーの大会では「オープン参加」として参加は出来るが技術選には参加出来なくなる規則となっているケースがある[5]

2020年度[6]の第57回大会は「第1回国際スキー技術選手権大会」を兼ねた大会とし、外国人選手の参加を正式に認める大会とする予定だった[2]が、2020年感染拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)の影響に伴って、政府から同年2月26日付での「大規模なスポーツや文化イベントなどの中止・延期・規模縮小の要請」を受けた事により、2月27日から3月22日までの全てのSAJ主催事業の中止決定を受けて同大会も中止となった[7][8]

2020年度[6]現在も各都道府県連盟主催の技術選予選兼基礎スキー大会については、前述と同様に外国人選手はオープン参加の取り扱い及び規則となっている事もある[3]

歴代の優勝者[編集]

男子[編集]

開催スキー場 優勝者 第2位 第3位
全日本デモンストレーター選考会
1 1964 山形県 蔵王 平川 啓紀 平沢 文雄 宮沢 英雄
2 1965
宮城県 鳴子
北沢 宏明 平沢 文雄 丸山 庄司
3 1966
長野県 白馬八方尾根
丸山 周司 佐藤 俊彦 大塚 太重郎
4 1967
長野県 白馬八方尾根
斉藤 城樹 佐藤 勝俊 丸山 周司
5 1968
長野県 白馬八方尾根
斉藤 城樹 佐藤 勝俊 丸山 周司
6 1969
長野県 白馬八方尾根
藤本 進 丸山 周司 関 健太郎
7 1970
長野県 白馬八方尾根
丸山 周司 藤本 進 関 健太郎
8 1971
長野県 白馬八方尾根
平川 仁彦 藤本 進 関 健太郎
9 1972
長野県 白馬八方尾根
藤本 進 関 健太郎 吉田 智与士
10 1973
長野県 白馬八方尾根
藤本 進 関 健太郎 三枝 兼径
11 1974
新潟県 苗場
藤本 進 佐藤 正明 丸山 隆文
12 1975
新潟県 苗場
関 健太郎 藤本 進 三枝 兼径
13 1976 長野県 白馬八方尾根 平川 仁彦 丸山 隆文 三枝 兼径
14 1977 長野県 白馬八方尾根 丸山 隆文 佐藤 正明 山口 正広
15 1978 長野県 白馬八方尾根 丸山 隆文 山田 博幸 佐藤 正明
16 1979 長野県 白馬八方尾根 佐藤 正明 相田 芳男 山口 正広
全日本基礎スキー選手権大会
17 1980 北海道 大和ルスツ 吉田 幸一 佐藤 正人 相田 芳男
18 1981
長野県 白馬八方尾根
佐藤 正明 吉田 幸一 相田 芳男
19 1982
長野県 白馬八方尾根
佐藤 正人 佐藤 正明 渡部 三郎
20 1983
岩手県 網張
佐藤 正人 小熊 恵一 吉田 幸一
21 1984
青森県 大鰐温泉
細野 博 佐藤 正人 吉田 幸一
22 1985
青森県 大鰐温泉
佐藤 正人 細野 博 渡部 三郎
全日本スキー技術選手権大会
23 1986 長野県 白馬八方尾根 渡部 三郎 佐藤 正人 金子 裕之
24 1987 長野県 白馬八方尾根 渡部 三郎/佐藤 正人 金子 裕之
25 1988 長野県 白馬八方尾根 渡辺 一樹 佐藤 譲 大平 成年
26 1989 長野県 白馬八方尾根 渡辺 一樹 斉木 隆 佐藤 譲
27 1990 長野県 白馬八方尾根 佐藤 譲 渡辺 一樹 斉木 隆
28 1991 長野県 白馬八方尾根 渡辺 一樹 佐藤 譲 森 信之
29 1992 群馬県 尾瀬岩鞍 渡辺 一樹 森 信之 沢田 敦
30 1993 群馬県 尾瀬岩鞍 M. Farny 渡辺 一樹 佐藤 譲
31 1994 長野県 野沢温泉村 M. Galcia M. Farny 渡辺 一樹
32 1995 長野県 野沢温泉村 B. Greber 粟野 利信 M. Galcia
33 1996 北海道 ルスツリゾート 猪又 一之 粟野 利信 渡辺 一樹
34 1997 新潟県 石打丸山 粟野 利信 宮下 征樹 二瓶 勝
35 1998 秋田県 田沢湖 粟野 利信 山田 卓也 猪又 一之
36 1999

長野県 白馬岩岳

柏木 義之 佐藤 久哉 宮下 征樹
37 2000 長野県 白馬八方尾根 柏木 義之 粟野 利信 宮下 征樹
38 2001 長野県 白馬八方尾根 宮下 征樹 柏木 義之 能登 恒
39 2002 長野県 白馬八方尾根 宮下 征樹 柏木 義之 山田 卓也
40 2003 長野県 白馬八方尾根 柏木 義之 山田 卓也 佐藤 久哉
41 2004 長野県 白馬八方尾根 柏木 義之 山田 卓也 片山 秀斗
42 2005 長野県 白馬八方尾根 佐藤 久哉 柏木 義之 丸山 貴雄
43 2006 新潟県 苗場スキー場 佐藤 久哉 片山 秀斗 丸山 貴雄
44 2007 新潟県 苗場スキー場 井山 敬介 柏木 義之 佐藤 久哉
45 2008 新潟県 苗場スキー場 井山 敬介 柏木 義之 山田 卓也
46 2009 長野県 白馬八方尾根 柏木 義之 井山 敬介 丸山 貴雄
47 2010 長野県 白馬八方尾根 丸山 貴雄 山田 卓也 柏木 義之
48 2011 長野県 白馬八方尾根 丸山 貴雄 井山 敬介 山田 卓也
柏木 義之
49 2012 長野県 白馬八方尾根 丸山 貴雄 吉岡 大輔 柏木 義之
50 2013 長野県 白馬八方尾根 吉岡 大輔 丸山 貴雄 柏木 義之
51 2014 長野県 白馬八方尾根 井山 敬介 柏木 義之 丸山 貴雄
52 2015 長野県 白馬八方尾根 柏木 義之
丸山 貴雄
井山 敬介
藤井 守之
53 2016 長野県 白馬八方尾根 吉岡 大輔 丸山 貴雄 柏木 義之
54 2017 北海道 ルスツリゾート 丸山 貴雄 井山 敬介 山田 卓也
55 2018 北海道 ルスツリゾート 吉岡 大輔 丸山 貴雄 井山 敬介
56 2019 長野県 白馬八方尾根 武田竜 佐藤 栄一 井山 敬介
57 2020 (中止)
58 2021 新潟県 苗場スキー場 武田竜 佐藤 栄一 井山 敬介
59 2022 長野県 白馬八方尾根 武田竜 丸山 貴雄 井山 敬介
60 2023 長野県 白馬八方尾根 武田竜 奥村駿 川上 勇貴
61 2024 北海道 ルスツリゾート 武田竜 奥村駿 齋藤 圭哉

※選手氏名、施設名称等は当時のものを使用しております
※第57回大会は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により中止

女子[編集]

※女子選手の参加は第14回大会から

開催スキー場 優勝者 第2位 第3位
全日本デモンストレーター選考会
14 1977 長野県 白馬八方尾根 岡田 良子 酒井 美代子 橘 順子
15 1978 長野県 白馬八方尾根 岡田 良子 遠藤 理恵 酒井 美代子
16 1979 長野県 白馬八方尾根 本田 久美子 上森 紀子 大久保 よし子
全日本基礎スキー選手権大会
17 1980 北海道 大和ルスツ 本田 久美子 上森 紀子 岡田 良子
18 1981
長野県 白馬八方尾根
松田 久美子 岡田 良子 宮下 紀子
19 1982
長野県 白馬八方尾根
内藤 裕子 岡田 良子 大浦 るみ子
20 1983
岩手県 網張
宮下 紀子 岡田 良子 佐藤 智子
21 1984
秋田県 大鰐温泉
宮下 紀子 内藤 裕子 佐藤 智子
22 1985
秋田県 大鰐温泉
宮下 紀子 大浦 るみ子 佐藤 智子
全日本スキー技術選手権大会
23 1986 長野県 白馬八方尾根 茂野 裕子 魚住 頼子 松田 久美子
24 1987 長野県 白馬八方尾根 高砂 祐子 内川 芳美 松田 久美子
25 1988 長野県 白馬八方尾根 山崎 操 佐藤 智子 松沢 三千代
26 1989 長野県 白馬八方尾根 田端 夏葉 高砂 祐子 松沢 三千代
27 1990 長野県 白馬八方尾根 K. Franziska 田端 夏葉 山崎 操
28 1991 長野県 白馬八方尾根 M. Svet F. Krassnizer 大関 千秋
29 1992 群馬県 尾瀬岩鞍 M. Svet 田端 夏葉 D. Viberti
30 1993 群馬県 尾瀬岩鞍 M. Svet K. Pusnik 田端 夏葉
31 1994 長野県 野沢温泉村 M. Svet K. Pusnik M. Kiehl
32 1995 長野県 野沢温泉村 M. Svet K. Pusnik M. Kiehl
33 1996 北海道 ルスツリゾート 白河 三枝 伊藤 真紀子 輪島 千恵
34 1997 新潟県 石打丸山 白河 三枝 上村 文代 吉田 美輝子
35 1998 秋田県 田沢湖 上村 文代 中田 良子 佐藤 ひろみ
36 1999 長野県 白馬岩岳 白河 三枝 上村 文代 輪島 千恵
37 2000 長野県 白馬八方尾根 白河 三枝 上村 文代 切久保 深雪
38 2001 長野県 白馬八方尾根 本間 綾美 山川 純子 白河 三枝
39 2002 長野県 白馬八方尾根 嶺村 聖佳 山川 純子 本間 綾美
40 2003 長野県 白馬八方尾根 嶺村 聖佳 中田 良子 本間 綾美
41 2004 長野県 白馬八方尾根 嶺村 聖佳 山川 純子 中田 良子
42 2005 長野県 白馬八方尾根 嶺村 聖佳 山川 純子 中田 良子
43 2006 新潟県 苗場スキー場 嶺村 聖佳 森 幸 太田 真由実
44 2007 新潟県 苗場スキー場 嶺村 聖佳 三星 佳代 中田 良子
小野塚 彩那
45 2008 新潟県 苗場スキー場 松沢 聖佳 中田 良子 小野塚 彩那
46 2009 長野県 白馬八方尾根 松沢 聖佳 小野塚彩那 三星 佳代
47 2010 長野県 白馬八方尾根 松沢 聖佳 金子 あゆみ 高橋 育美
48 2011 長野県 白馬八方尾根 金子 あゆみ 小野塚 彩那
水落 育美
49 2012 長野県 白馬八方尾根 兼子 佳代 佐藤 麻子 金子 あゆみ
50 2013 長野県 白馬八方尾根 佐藤 麻子 金子 あゆみ 水落 育美
51 2014 長野県 白馬八方尾根 佐藤 麻子 兼子 佳代 金子 あゆみ
52 2015 長野県 白馬八方尾根 佐藤 麻子 春原 優衣 金子 あゆみ
53 2016 長野県 白馬八方尾根 佐藤 麻子 金子 あゆみ 春原 優衣
54 2017 北海道 ルスツリゾート 栗山 未来 金子 あゆみ 春原 優衣
55 2018 北海道 ルスツリゾート 栗山 未来 大場 朱莉 金子 あゆみ
56 2019 長野県 白馬八方尾根 栗山 未来 金子 あゆみ 春原 優衣
57 2020 (中止)
58 2021 新潟県 苗場スキー場 春原 優衣 青木 美和 大場 朱莉
59 2022 長野県 白馬八方尾根 栗山 未来 神谷 来美 青木 美和
60 2023 長野県 白馬八方尾根 渡邊 渚 神谷 来美 春原 優衣
61 2024 北海道 ルスツリゾート 渡邊 渚 青木 美和 春原 優衣

脚注[編集]

  1. ^ 全日本スキー技術選手権大会運営細則(平成30年12月13日改正版) (PDF) の26による。
  2. ^ a b 参考資料:「公益財団法人 全日本スキー連盟 教育本部オフィシャルブック 2020」著者:公益財団法人 全日本スキー連盟、発行所:山と渓谷社ISBN 978-4-635-46024-8
  3. ^ a b 参考資料:「公益財団法人 北海道スキー連盟 2020年度 教育本部メモ」著者:公益財団法人 北海道スキー連盟 教育本部、発行所:山と渓谷社
  4. ^ スキージヤーナル㈱の倒産により、現在は発売されていない。
  5. ^ a b 参考資料:「公益財団法人 北海道スキー連盟 2019年度 教育本部メモ」著者:公益財団法人 北海道スキー連盟 教育本部、発行所:山と渓谷社
  6. ^ a b 公益財団法人 全日本スキー連盟 定款 (PDF) 第6条(事業年度)により、連盟における事業年度を毎年8月1日から翌年7月31日までの期間と定めている。これは日本においての通常のスキーシーズンが考慮されている。
  7. ^ 2020/02/27【お知らせ(重要)】新型コロナウイルス感染症の拡大に係る本連盟の対応について
  8. ^ 2020/03/03【お知らせ(重要)教育本部】各種大会・事業の中止について(3/3 中止事業追記)

外部リンク[編集]