Gqタンパク質αサブユニット

guanine nucleotide binding protein (G protein), q polypeptide
識別子
略号 GNAQ
Entrez英語版 2776
HUGO 4390
OMIM 600998
RefSeq NM_002072
UniProt P50148
他のデータ
遺伝子座 Chr. 9 q21
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guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha 11 (Gq class)
識別子
略号 GNA11
Entrez英語版 2767
HUGO 4379
OMIM 139313
RefSeq NM_002067
UniProt P29992
他のデータ
遺伝子座 Chr. 19 p13.3
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guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha 14
識別子
略号 GNA14
Entrez英語版 9630
HUGO 4382
OMIM 604397
RefSeq NM_004297
UniProt O95837
他のデータ
遺伝子座 Chr. 9 q21
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guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha 15 (Gq class)
識別子
略号 GNA15
Entrez英語版 2769
HUGO 4383
OMIM 139314
RefSeq NM_002068
UniProt P30679
他のデータ
遺伝子座 Chr. 19 p13.3
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Gqタンパク質αサブユニット: Gq protein α subunit)は、ヘテロ三量体Gタンパク質αサブユニットファミリーである。密接に関連するファミリーのメンバーも含めて、 Gq/11Gq /G11)ファミリーまたはGq/11/14/15ファミリーとも呼ばれる。 Gqタンパク質αサブユニットは、Gqα、Gαqなどとも表記される。 Gqタンパク質はGタンパク質共役受容体と共役し、ホスホリパーゼCβ(PLC-β)を活性化する。PLC-βはホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸(PIP2)をジアシルグリセロール(DAG)とイノシトール三リン酸(IP3)に加水分解する。IP3は貯蔵されているカルシウム細胞質に放出するセカンドメッセンジャーとして作用し、DAGはプロテインキナーゼC英語版(PKC)を活性化するセカンドメッセンジャーとして作用する。

ファミリーのメンバー[編集]

ヒトではGqαサブユニットファミリーには4つのメンバーが存在する。

  • GqαはGNAQ英語版遺伝子によってコードされる。
  • G11GNA11英語版遺伝子によってコードされる。
  • G14αはGNA14英語版遺伝子によってコードされる。
  • G15αはGNA15英語版遺伝子によってコードされる。

機能[編集]

Gqの一般的機能は、細胞表面のGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化に応答して細胞内シグナル伝達経路を活性化することである。GPCRは、受容体-トランスデューサー-エフェクターという3つの構成要素からなるシステムの一部として機能する[1][2]。このシステムのトランスデューサーはヘテロ三量体Gタンパク質であり、3つのサブユニットから構成される。GqαなどのGαタンパク質は、強固に結合した2つのタンパク質、GβとGγ(Gβγ複合体)と複合体を形成している[1][2]。受容体によって刺激されていないときには、GαはGDPを結合し、Gβγと不活性なGタンパク質三量体を形成している[1][2]。受容体に細胞外の活性化リガンド(ホルモン神経伝達物質など)が結合すると、活性化された受容体はグアニンヌクレオチド交換因子として作用し、GαからのGDPの放出とGTPの結合を促進し、それによってGβγからGTP結合型Gαの解離を駆動する[1][2]。解離したGTP結合型GαとGβγは、それぞれ下流のシグナル伝達酵素を活性化する。近年、GβγとGTP結合型Gqαは、GqαのN末端αヘリックス領域を介して部分的な相互作用を維持していることが示唆されている[3]

Gq/11/14/15タンパク質は、PLC-βを活性化することでカルシウムとPKCを介した経路へシグナルを伝達する[4]。PLC-βは、細胞膜リン脂質PIP2をDAGとIP3に切断する。DAGは膜にとどまり、IP3は可溶性分子として細胞質へ放出される。IP3は拡散し、小胞体の専門化したカルシウムチャネルであるIP3受容体に結合する。これらのチャネルはカルシウムに対して特異的であり、カルシウムの小胞体から細胞質への移行のみを行う。細胞はカルシウムを能動的に小胞体に隔離して細胞質のカルシウム濃度を低く維持しているため、この放出は細胞質のカルシウム濃度の上昇を引き起こし、カルシウム結合タンパク質やカルシウム感受性過程を介して細胞内の活性の変化のカスケードを引き起こす[4]

DAGは放出されたカルシウムとともにPKCの特定のアイソフォームを活性化し、活性化されたPKCは他の分子をリン酸化することでさらに細胞の活性を変化させる[4]

Gq/11αのQ209L変異はぶどう膜悪性黒色腫英語版の発症と関係しており、その薬理学的阻害(FR900359環状デプシペプチド)は腫瘍の成長を減少させることが臨床前試験で示されている[5]

受容体[編集]

次に挙げるGタンパク質共役受容体がGqと共役する。

少なくとも一部のGq共役型受容体(ムスカリン性アセチルコリンM3受容体など)は、不活性状態で既にGqと組み立てられた(既に共役した)状態で存在している。この不活性状態の受容体とGタンパク質との組み立てには、Gq共役型受容体のC末端テールに共通する塩基性残基に富む領域が必要なようである[6]

出典[編集]

  1. ^ a b c d “G proteins: transducers of receptor-generated signals”. Annual Review of Biochemistry 56: 615–649. (1987). doi:10.1146/annurev.bi.56.070187.003151. PMID 3113327. 
  2. ^ a b c d “Nobel Lecture: Signal transduction: Evolution of an idea”. Bioscience Reports 15 (3): 117–133. (1995). doi:10.1007/bf01207453. PMID 7579038. 
  3. ^ “Gβγ Signaling to the Chemotactic Effector P-REX1 and Mammalian Cell Migration Is Directly Regulated by Gαqand Gα13 Proteins”. J Biol Chem 294 (2): 531–546. (January 2019). doi:10.1074/jbc.RA118.006254. PMC 6333895. PMID 30446620. https://www.jbc.org/content/294/2/531. 
  4. ^ a b c Molecular biology of the cell (4th ed.). New York: Garland Science. (2002). ISBN 0-8153-3218-1. https://archive.org/details/molecularbiolog000wils 
  5. ^ “Direct Targeting of Gαq and Gα11 Oncoproteins in Cancer Cells”. Sci Signal 12 (573): 5948. (March 2019). doi:10.1126/scisignal.aau5948. PMID 30890659. https://stke.sciencemag.org/content/12/573/eaau5948.long. 
  6. ^ a b “Inactive-state preassembly of Gq-coupled receptors and Gq heterotrimers”. Nature Chemical Biology 7 (11): 740–747. (August 2011). doi:10.1038/nchembio.642. PMC 3177959. PMID 21873996. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3177959/. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]