1997年イギリス総選挙

1997年イギリス総選挙
United Kingdom general election, 1997
イギリス
1992 ←
1997年5月1日
→ 2001年

内閣 第2次ジョン・メージャー内閣
解散日 1997年4月8日
公示日 1997年4月8日
改選数 659
選挙制度 単純小選挙区制
有権者 有権者を参照
選挙後の党派別勢力図

投票率 71.3%(減少6.4%)
  第1党 第2党 第3党
 
党首 トニー・ブレア ジョン・メージャー パディ・アッシュダウン
政党 労働党 保守党 自由民主党
党首就任 1994年7月21日 1990年11月28日 1988年7月16日
党首選挙区 Sedgefield Huntingdon Yeovil
前回選挙 271議席、34.4% 336議席、41.9% 20議席、17.8%
選挙前議席 273 343 18
獲得議席 418 165 46
議席増減 増加 147 減少 171 増加 26
得票数 13,518,167 9,600,943 5,242,947
得票率 43.2% 30.7% 16.8%
得票率増減 増加 8.8% 減少 11.2% 減少 1.0%

党派別議席分布図
  労働党   保守党   自由民主党

選挙前首相

ジョン・メージャー
保守党

選出首相

トニー・ブレア
労働党

新首相に就任した労働党首トニー・ブレア

1997年イギリス総選挙(1997ねんイギリスそうせんきょ、英語:United Kingdom general election, 1997)は、イギリス議会(正式名称:グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国議会)の議員を選出するために1997年5月に行われたイギリス総選挙である。

概要[編集]

1994年に党首に就任したトニー・ブレアの下で「ニュー・レイバー」と呼ばれる政策を掲げ、支持を拡大しつつあった労働党が、ジョン・メージャー率いる保守党から政権を奪回できるか否かが注目された。選挙の結果、労働党は地滑り的な大勝利を収め、1979年の総選挙以来18年ぶりに与党に返り咲いた。

後にイギリス首相となるテリーザ・メイが初めて当選した選挙である。

基礎データ[編集]

政権の座を退くことになったジョン・メージャー(保守党)
第3党である自由民主党党首(当時)のアッシュダウン(写真の左側の人物)

内閣[編集]

解散日・公示日[編集]

  • 1997年4月8日

投票日[編集]

  • 1997年5月1日

改選数[編集]

  • 659

選挙制度[編集]

投票方法
秘密投票、単記投票、1票制
選挙権
18歳以上のイギリス国籍を有する男女、および英連邦市民、アイルランド共和国市民で一定の欠格要件(刑務所に服役中など)に該当しない市民で、居住地域の自治体で選挙人登録をした者。
被選挙権
18歳以上のイギリス国籍を有する男女、および英連邦市民、アイルランド共和国市民で一定の欠格要件(刑務所に服役中など)に該当しない市民で、居住地域の自治体で選挙人登録をした者。

選挙の争点[編集]

選挙を目前にした4月上旬に各党はそれぞれ、マニフェスト(選挙綱領)を発表した。保守党の選挙綱領は減税や雇用、経済対策に重点を置き、対する労働党の選挙綱領は教育や雇用、地方分権に重点を、第3党の自民党の選挙綱領は教育や経済、環境、コミュニティなどを中心としたもので、教育や雇用、減税などを争点に争われた。政権獲得を狙う労働党は、18年間の保守党政権は失敗であったと規定した上で「イギリスはもっとより良い生活を受けるに価する」というキャンペーンを展開し、変化を訴えた。対する保守党は経済状態が良好であることを強調し、「イギリスは景気づいている。労働党がそれを吹き飛ばそうとしている」と応じた[1]

選挙結果[編集]

  • 投票率:71.3%
  • 有効投票数:31,286,284票
  • 候補者数:3,724名
  • 当選者数:659名
党派別議席数と得票数・率
党派別獲得議席
党派別獲得議席
党派 当選 候補者 得票数 %
労働党
Labour Party
418 639 13,518,167 43.2
保守党
Conservative Party
165 648 9,600,643 30.7
自由民主党
Liberal Democrats
46 639 5,242,947 16.8
アルスター統一党(UUP) 10 16 258,349 0.8
スコットランド国民党(SNP) 6 72 621,550 2.0
プライド・カムリ(PC)[2] 4 40 161,030 0.5
社会民主労働党(SDLP) 3 18 190,814 0.6
シン・フェイン党(SF) 2 17 126,921 0.4
民主統一党(DUP) 2 9 107,348 0.3
英国連合党(UKUP) 1 1 12,817 0.0
議長(speaker)[3] 1 1 23,969 0.1
その他 1 297 159,639 0.5

出典:英国下院資料“GENERAL ELECTION RESULTS,1 MAY 1997”より引用して作成した。なお、当選者がなかった政党については省略。

選挙の結果、労働党は結党以来最高の418議席を獲得し、1979年ジェームズ・キャラハン政権下で行われた総選挙での敗北で政権を失って以来、18年ぶりに与党となった。反対に保守党は、現職閣僚7名が落選、ウェールズスコットランド両地域で全議席を失った他、都市部でもロンドンバーミンガムの一部選挙区を除き全敗、結党以来最低の165議席で大惨敗し、野党に転落した。第3党の自由民主党は、得票率は前回並みであったが、労働党との戦略投票により議席数を前回より大幅に増やし、結党以来最高の46議席を得た。この3政党以外のウェールズやスコットランド及び北アイルランドなどの地域政党も健闘した。

女性議員の増加[編集]

労働党の大勝以外に、もう一つ特徴的なこととして、女性議員の大幅な増加が挙げられる。前回の総選挙における女性当選者は60人で下院全体の9%余りに留まっていたが、本選挙でほぼ倍増の120名が当選し、下院全体の18%が女性で占められることとなった。特に労働党のみで見た場合は102名が当選、当選者全体の24%、女性当選者全体の8割以上を占めたが、これは当選可能性が高い接戦選挙区に女性候補者を積極的に擁立した措置によるものが大きいと言える。

本選挙における女性候補者と当選者、
当選者全体に占める女性当選者の比率
党派 候補者 当選者
(a)
党全体の
当選者
(b)
(a)/(b)
労働党 156 102 418 24.4
保守党 66 13 165 7.8
自由民主党 139 3 46 6.5
その他の政治勢力 311 2 30 6.0
全体 672 120 659 18.2
出典:「英国総選挙におけるジェンダー状況。党主導による女性候補者登用策の合法化とその問題点」6頁の“表1英国下院女性候補者と女性議員の数1918-2005年”より引用して作成。

出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 谷藤悦史「1997年イギリス総選挙に関する分析」、日本選挙学会年報『選挙研究』No13、1998年、190頁右側
  2. ^ PCの正式名称は“Plaid Cymru”でウェールズ語の表記である。英語では“The Party of Wales”で直訳すれば「ウェールズの党」。
  3. ^ 引用した資料では“speaker”議長となっていたので、議長として記述する。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]