11jigen

11jigen(じゅういちじげん)は、2009年頃から2014年頃にかけて科学技術論文における不正行為をインターネット上で大量に指摘した男性である[1][2][3][4][5][6]。大学等の研究機関への告発作業も行った[1]

11jigenという名前は、初期の追及対象であるアニリール・セルカンが11次元宇宙を研究したと主張していたことに由来する[7][8]。「JuuichiJigen」や「Juuichi Jigen」[1]や「11次元」[8][9]、あるいはTwitterアカウントの名前である「論文捏造&研究不正」[10]と呼称されることもある。

概要[編集]

2009年頃からボランティアで科学論文における文章盗用や画像の改竄捏造を暴くようになった[5]。自作のブログTwitterYouTubeを主な活動場所としている[1][3]

2022年現在、一般人に対しては匿名を保っている。Science誌の記事上では民間企業の生命科学研究者(a life science researcher in the private sector)と説明されている[1]。2011年6月には都内に在住していた[2]

匿名にも関わらず存在は世界的に認知されており、例えばアメリカ合衆国の経済誌Forbesは、11jigenのブログをソースにしたディオバン事件に関する記事を、11jigenが該当ブログ[11]を作成してから一週間程度で配信した[12]

尚、11jigenが告発ブログを作成していた名古屋市立大学の論文不正事案に係る調査報告書に「ある個人の方」という表現が告発者に対して使われていることや[13]、11jigenが告発ブログを作成していた獨協医科大学の論文不正事案に関して、告発文に告発者の氏名が書かれており[14]、その告発者がインターネットのブログに同じ内容を掲載していると報道されていることなどから[15]、11jigenは各研究機関に対しての告発は実名で行なっていると推測される。

2014年のSTAP騒動においては、

  1. Nature Letter論文のSTAP細胞のキメラの胎盤画像と、FI-SCのキメラの胎盤画像が酷似している[16]
  2. Nature Article論文のSTAP細胞由来テラトーマ免疫染色画像と、小保方晴子早稲田大学大学院博士論文の骨髄sphere由来テラトーマ免疫染色画像が酷似している[17]
  3. 小保方博士論文の冒頭20ページの文章が、NIHサイトのほぼ完全な剽窃である[18]

という事態を大きく変えた3つの疑義を提供した。その結果、STAP騒動は国内外を問わず連日極めて大きく報道されることとなった[19][20][21][10][22][23][24][25][4][5][6]

山中伸弥が2000年に発表した論文への疑義[4]は、2ちゃんねるのスレッド「捏造、不正論文 総合スレネオ2」の240番目のレス(2013年3月30日)と511番目(2013年4月6日)のレスが初出であり、11jigenが2013年に作成していたブログはその内容をまとめて解説したものだった。11jigenは、STAP細胞論文の疑惑が決定的になった2014年3月中旬までの一年弱の間、Twitterのアイコンをその疑義を表した図[26]にしていた。ブログにおいては「捏造指摘ではない」と書いていたものの、STAP騒動が過熱していた2014年4月末に、週刊新潮がこれをネタにしたスキャンダラスな記事[27]を配信した。そのため、STAP騒動の期間中に、1年ほど前にノーベル生理学・医学賞を受賞したばかりであり、STAPの捏造の一番の被害者ともいえる山中が自身の捏造疑惑について謝罪する会見がNHKニュース7のトップニュース等として突如報じられる事態となった[28]。謝罪会見の直後、この2ちゃんねるの書き込みをしたのは匿名Aだと断定するツイートを11jigenは投稿した[29]

2014年(平成26年)4月2日に報道された読売新聞との対面取材において、STAP騒動における自身の活動の反響の大きさに戸惑っていることと、研究不正追及からの引退を考えていることを表明した[30]2022年11月20日現在、少なくともTwitterでは2015年5月15日を最後に新しい活動は行っていない。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e Whistleblower Uses YouTube to Assert Claims of Scientific Misconduct SCIENCE INSIDER 25 January 2012
  2. ^ a b “論文不正、諭旨退職に…独協医大”. 読売新聞. (2011年6月27日). オリジナルの2011年6月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110629115101/http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20110627-OYT8T00693.htm 2022年11月10日閲覧. "...同医大に告発文を送った都内の男性は..." 
  3. ^ a b Brookes, Paul S. (2014-04-03). “Internet publicity of data problems in the bioscience literature correlates with enhanced corrective action” (英語). PeerJ 2: e313. doi:10.7717/peerj.313. ISSN 2167-8359. https://peerj.com/articles/313. 
  4. ^ a b c 中山敬一「実は医学論文の七割が再現不可能 小保方捏造を生んだ科学界の病理」『文藝春秋』第92巻第7号、2014年6月、97頁、2014年5月21日閲覧 
  5. ^ a b c “小保方論文「コピペ疑惑」、ネットが暴いた 「11jigen」「世界変動展望」…謎のブロガーが次々告発”. J-CASTニュース. (2014年3月18日). https://www.j-cast.com/2014/03/18199548.html?p=all 2022年8月28日閲覧。 
  6. ^ a b 牧野洋 (2014年4月18日). “STAP細胞報道、ブロガーに完敗したメディアは「取材を尽くした」と言えるのか”. 現代ビジネス. https://gendai.media/articles/-/38999 2014年9月28日閲覧。 
  7. ^ インターネットにおける論文不正発覚史 田中嘉津夫, Journal of the Japan Skeptics, 24号, 4-9 (2015)[リンク切れ]
  8. ^ a b 菊地重秋「我が国における研究不正(ミスコンダクト)等の概観 : 新聞報道記事から(その6)」『埼玉学園大学紀要. 人間学部篇』第14巻、埼玉学園大学、2014年12月、99-112頁、CRID 1050564287951718528ISSN 13470515NAID 120005768686 
  9. ^ 菊地重秋「我が国における研究不正(ミスコンダクト)等の概観 : 新聞報道記事から(その9)」『埼玉学園大学紀要. 人間学部篇』第18巻、埼玉学園大学、2018年12月、215-228頁、CRID 1050001338007180544ISSN 13470515NAID 120006579638 
  10. ^ a b “小保方さん博士論文、20ページ酷似 米サイトの文章と”. 朝日新聞. (2014年3月11日). オリジナルの2015年4月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150424181256/http://www.asahi.com/articles/ASG3C72D1G3CULZU00Q.html 2022年8月28日閲覧。 
  11. ^ 小室一成グループ 論文疑惑”. komuroissei.blogspot.com. 2019年11月26日閲覧。
  12. ^ Husten, Larry (2013年5月10日). “Suspicions Raised About Another Japanese Cardiovascular Researcher” (英語). Forbes. https://www.forbes.com/sites/larryhusten/2013/05/10/suspicions-raised-about-another-japanese-cardiovascular-researcher/ 2022年8月28日閲覧。 
  13. ^ 研究上の不正疑義に関する調査報告書(PDF 5MB)”. web.archive.org. 名古屋市立大学 (2011年12月13日). 2019年11月26日閲覧。
  14. ^ 吉村周平 (2011年2月10日). “独協医大:不正論文で調査 学長に告発文 /栃木”. 毎日新聞. オリジナルの2011年2月27日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2011-0227-2126-41/mainichi.jp/area/tochigi/news/20110210ddlk09100126000c.html 2022年8月28日閲覧。 
  15. ^ “独協医大で「不正論文」の告発 栃木”. MSN産経ニュース. (2011年2月9日). オリジナルの2011年2月9日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2011-0209-1718-28/sankei.jp.msn.com/region/news/110209/tcg11020902400002-n1.htm 2022年8月28日閲覧。 
  16. ^ 論文捏造&研究不正 (2014年2月13日). “小保方晴子氏のNature論文(Letter)の疑惑1の説明図です。Fig1b最右画像とFig2g下画像の胎盤部分だけが、なぜか互いに類似。しかも2画像の実験条件は互いに異なる?前者はSTAP細胞のキメラ、後者はFI-SCのキメラ”. @JuuichiJigen. 2019年11月26日閲覧。
  17. ^ 論文捏造&研究不正 (2014年3月8日). “小保方晴子氏のNature Article論文のFig2e下段のSTAP細胞由来テラトーマ免疫染色画像と、小保方晴子氏の博士論文のFig.14下段の骨髄sphere由来テラトーマ免疫染色画像が類似しており、不正な画像流用が疑われます。”. @JuuichiJigen. 2019年11月26日閲覧。
  18. ^ 論文捏造&研究不正 (2014年3月10日). “小保方氏の博士論文の冒頭の"BACKGROUND"の文章のほとんどが、NIHの下記サイト(Stem Cell Basics)からの剽窃(盗用)です。 http://stemcells.nih.gov/info/basics/pages/basics1.aspx”. @JuuichiJigen. 2019年11月26日閲覧。
  19. ^ 小野昌弘 (2014年6月8日). “嘘とポエムと内部告発”. Yahoo! News 個人. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/bfbc88694fc3929be858db7915077ab1a709f382 2014年9月28日閲覧。 
  20. ^ “STAP細胞、博士論文の画像転用か 理研も把握”. MSN産経ニュース. (2014年3月10日). オリジナルの2014年10月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141023101416/http://sankei.jp.msn.com/science/news/140310/scn14031020560010-n1.htm 2022年8月28日閲覧。 
  21. ^ “小保方氏の博士論文 20ページが米NIHサイトとほぼ同じ”. MSN産経ニュース. (2014年3月12日). オリジナルの2015年1月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150102115227/http://www.sankei.com/life/news/140312/lif1403120019-n1.html 2022年8月28日閲覧。 
  22. ^ 捏造の科学者 STAP細胞事件 須田桃子 文藝春秋 2015-01-07 2016年12月6日閲覧
  23. ^ あの日 小保方晴子 講談社 2016年01月29日
  24. ^ 座談会「最先端研究どう伝える STAP報道の現場から」(PDF 4.5MB) 日本記者クラブ会報 2014年11月10日第537号
  25. ^ McCoy, Terrence (2014年7月3日). “How Japan’s most promising young stem-cell scientist duped the scientific journal Nature — and destroyed her career” (英語). Washington Post. 2019年11月27日閲覧。
  26. ^ https://c.disquscdn.com/uploads/users/6426/5821/avatar92.jpg
  27. ^ ノーベル賞「山中教授」が隠していた「小保方的」実験ノート 週刊新潮 2014年5月8・15日号 2016年12月9日閲覧
  28. ^ “京大 山中教授が自身の論文巡り会見”. NHK. (2014年4月28日). オリジナルの2014年5月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140501050729/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140428/k10014091181000.html 2022年8月28日閲覧。 
  29. ^ 論文捏造&研究不正 (2014年4月28日). “Fig.3Aの画像の疑義の件は、2chで匿名Aさんが指摘された件ですね。”. @JuuichiJigen. 2019年11月26日閲覧。
  30. ^ 読売新聞朝刊 2014年4月2日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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