防風林

防風林
アメリカ合衆国サウスダコタ州に広がる農地防風林/風食から土壌を守る。
日本豪雪地帯[* 1]である砺波平野(上の画像)では、一円に分布する散居村のそれぞれに屋敷林「垣入(かいにょ)」が設けられている[1]。垣入(下の画像)は第一に防雪林であるが、防風林などとしても重要な役割を果たす[1]
フィンセント・ファン・ゴッホ 『二本の糸杉』
フランスアルル近郊の町サン=レミ=ド=プロヴァンスにて、ミストラルを防ぐために設けられた防風林のイトスギを数多く描いたゴッホによる1889年の作。

防風林(ぼうふうりん、英語windbreak)は、に備える防災林(災害防止林)の一種。家屋農地・その他人間の活動領域を風(地方風季節風台風爆弾低気圧暴風雨暴風雪など)による被害cf. 風害)から守ることを主目的として設けられる森林のことである。長く大規模に伸長するものは防風林帯(ぼうふうりんたい、英語:shelterbelt)と呼ばれることもある。

農地土壌風食から守るなどする目的で設けられるものは農地防風林[2][3]耕地防風林[4][5][6])、海岸部で海風等を防ぐために造られるものは海岸防風林[2][* 2]列車鉄道施設の防護のために鉄道路線に沿って造られるものは鉄道防風林[* 3]と呼ばれる。道路や鉄道沿いで、雪による吹き溜まりなどを防ぐ目的のものを、特に防雪林と呼ぶことがある。

そのほか、日本語では、家屋を守ることを主目的として家の敷地内に設けられる森林を「屋敷林」と呼ぶが、防風林としての機能は必ず期待されるものである[* 4]

概要[編集]

多くの場合は植林・造成されるものであるが、日本富山県西部に広がる砺波平野散居村に伝統的な屋敷林「垣入(かいにょ)」のように[1]、元からその地にあった原生林の一部を残して利用するという形で設けられたものもある[1]。一定の地域を対象とした基幹防風林[5]、一定の区画を対象とした農地防風林耕地防風林)などがある。現代日本の場合、基幹防風林など公益性の高いものは保安林として地方自治体が管理していて[7]、多くの場合は防護対象となる土地利用の形態から幅の狭い帯状となっている。また、公益的な防風林については、防風保安林に指定され、落葉の採取や伐採等が制限されている[7]

グレートプレーンズで発生する猛烈な砂嵐による深刻な土壌侵食旱魃に悩まされていた1930年代アメリカ合衆国は、フランクリン・ルーズベルト大統領の下で1934年、防風と土壌中の水分蒸発を防ぐことを主目的としてグレートプレーンズ防風林帯英語: Great Plains Shelterbelt の造成に着手し、1942年までに北はカナダ国境から南はテキサス州を流れるブラゾス川までの総延長距離約18,600マイル(約2万9933.80 km)、幅約100マイル(約160.93km)の地帯に、約2億2000万本もの樹木を植えた。 日本最大規模の防風林は、北海道東部の根釧台地に広がり、最長直線距離約27 km、総延長距離約648 km、幅約180 mにわたって格子状に造成された「根釧台地の格子状防風林」であり、北海道遺産に選定されている[8][9][10]

樹種[編集]

日本においては、家屋周辺には枝張りがよく高木になる樹種、海岸付近には塩害に強く薄い土壌でも生育できる樹種が多く用いられる傾向があり、寒冷地では、寒さに強く枝が柔らかく雪が積もりにくい樹種が多く用いられるが、高低・多種多様な樹種を組み合わせて雑木林のような形をとるものも多い。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 砺波市など特別豪雪地帯指定地域を含む。
  2. ^ 防風を主目的とする海岸防災林。
  3. ^ 防風を主目的とする鉄道林
  4. ^ 「屋敷林 = 防風林」ではない。

出典[編集]

  1. ^ a b c d カイニョとは - 砺波市”. 砺波旅(公式ウェブサイト). 砺波市. 2012年10月21日閲覧。
  2. ^ a b 平田攻(育林保全室員). “防風林の機能および樹種特性に関する研究 -各種防風施設の風洞実験-” (PDF). フォレスターネット(公式ウェブサイト). 一般社団法人 林業人材育成支援普及センター[1]. 2012年10月21日閲覧。
  3. ^ 農地防風林”. (公式ウェブサイト). 内閣府沖縄総合事務局 農林水産部土地改良課. 2012年10月21日閲覧。
  4. ^ とかち大平原”. (公式ウェブサイト). 農林水産省. 2012年10月21日閲覧。
  5. ^ a b 防風林”. (公式ウェブサイト). 北海道. 2012年10月21日閲覧。
  6. ^ 耕地防風林管理条例”. (公式ウェブサイト). 芽室町. 2012年10月21日閲覧。
  7. ^ a b 保安林制度”. (公式ウェブサイト). 林野庁. 2012年10月21日閲覧。
  8. ^ 防風林の多面的機能と 造成管理のための解説書” (PDF). (公式ウェブサイト). 北海道立林業試験場[2] (2007年4月). 2012年10月21日閲覧。
  9. ^ 根釧台地の格子状防風林”. (公式ウェブサイト). 中標津町役場 経済振興課. 2012年10月21日閲覧。
  10. ^ 根釧台地の格子状防風林”. 北海道遺産(公式ウェブサイト). NPO法人 北海道遺産協議会事務局. 2012年10月21日閲覧。

参考文献[編集]

  • 伊礼智『オキナワの家』インデックスコミュニケーションズ、2004年12月。ISBN 978-4-7573-0276-1 
  • 宮脇昭『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る 植樹による復興防災の緊急提言』学研パブリッシング学研新書〉、2011年9月20日。ISBN 978-4-0540-5091-4 

関連項目[編集]