野ざらし紀行

野ざらし紀行』(のざらしきこう)は、江戸時代中期の紀行文松尾芭蕉著、1巻。芭蕉第1作目の紀行作品。

概要[編集]

1684年貞享元年)8月、門人苗村千里を伴って深川の芭蕉庵を出立、東海道を上って伊勢・伊賀・大和を経て、以後は単独で吉野、9月下旬に美濃大垣、桑名・熱田・名古屋から伊賀上野に帰郷して越年、春の大和路をたどって京都へ出て、近江路から江戸への帰路のおよそ8ヶ月の紀行を題材とする[1]。初稿本巻末に各地での付合を抄録した「酬和の句」を付載するなど、句集的性格を顕著に出している[1]。再稿、三稿を経た後に芭蕉自筆に21画面の絵を入れた画巻本が作成され、門人中川濁子筆の清書画巻も伝わる[1]。刊行されたのは1698年元禄11年)『泊船集』所載のものが初めてである[2]

「猿を聞人捨子に秋の風いかに」のような破調句も見られるが、「山路来て何やらゆかしすみれ草」のような平明な句も得るなど、『虚栗』調を脱しようとする意図が感じられる[2]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 岡本勝雲英末雄『新版近世文学研究事典』おうふう、2006年2月、312-313頁。 
  2. ^ a b 佐藤勝明編『21世紀日本文学ガイドブック5 松尾芭蕉』ひつじ書房、2011年10月、102-103頁。