空手バカ一代 (映画)

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空手バカ一代
Karate for Life
監督 山口和彦
脚本 掛礼昌裕
原作 梶原一騎
影丸譲也
ナレーター 河合絃司
出演者 千葉真一
夏樹陽子
室田日出男
志賀勝
石橋雅史
リップ・タイラー
エディ・サリバン
鶴見五郎
スネーク奄美
米村勉
本郷功次郎
音楽 鏑木創
撮影 中島芳男
編集 祖田冨美夫
製作会社 東映
配給 東映
公開 日本の旗 1977年5月14日
上映時間 91分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 けんか空手 極真無頼拳
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空手バカ一代 』(からてばかいちだい、Karate for Life )は、1977年日本映画主演千葉真一監督山口和彦製作東映。フォーマットはカラー画面アスペクト比ワイド、91分。『けんか空手シリーズ』の第3作。

解説[編集]

劇画空手バカ一代』を映画化した『けんか空手 極真拳』『けんか空手 極真無頼拳』に続く第3作である。大山倍達の波乱に富んだ半生を、前2作同様に千葉真一が大山、監督山口和彦コンビで製作された[1]

大山倍達のアメリカ遠征を復帰前の沖縄遠藤幸吉を藤田修造、グレート東郷をグレート山下など、本作の脚色が加えられ、大山の相棒となる藤田には柔道有段者の本郷功次郎、ヒロインの麗子にはファッションモデルから俳優に転身した夏樹陽子が配役されている[2][3]

格闘にリアリティを求め、対戦相手には三部作すべてに出演している石橋雅史を筆頭に[注釈 1]国際プロレススネーク奄美米村勉鶴見五郎IWA世界タッグ王座の選手権試合で来日していたUSタッグチーム・チャンピオンのリップ・タイラーエディ・サリバンなど[1][6]、実際の格闘家が扮した。千葉真一と“引き裂き屋”の異名を持つタイラーの対決は山場の一つで、千葉は石橋やタイラーとの戦いで空手の技だけでなく、器械体操の技術も披露し、格闘シーンはこれまでにない迫力を見せている[1]

ストーリー[編集]

かつて猛牛や熊を倒した大山倍達を「ケンカ空手」「売名家」として認めない空手界に対し、大山は道場破りで応じた。道場「玄武館」館長の与那島剛造は、ある日殴り込んできた大山に対し、油をまいた床での百人組手で迎え撃つも、片目を潰され、固く復讐を誓う。

与那島を破った大山であったが、むなしさが募り、酒浸りと金欠の日々を続ける。ヤクザの用心棒をしていた大山のもとに、日系人の興行師・トッド若松が訪ねてくる。トッドは大山をプロレスラーとして米軍統治下の沖縄での興行に参加させたいと申し出る。スカウトに応じた大山は沖縄へ渡る。

大山を日系人プロレスラーのグレート山下と柔道家の藤田修造が迎える。3人は兄弟ギミックのユニット「山下ブラザーズ」としてアメリカ人レスラーに挑むことになっていた。興行は主に駐留米兵向けだったため、接戦の末に山下ブラザーズが敗れる、という八百長的なブックが事前に用意されていた。しかし加減のできない大山はブックを破って相手を打ち負かし、感化された藤田も2戦目で相手を破る。興行元のギャングたちに目をつけられたグレートは暴行を受け、大山と藤田は解雇される。

空港へ向かう大山は、荷物をスられて飛行機に乗りそびれたことから、戦災孤児の少年たちと仲よくなり、リーダー格の少年・カズオとその姉・麗子と知り合う。麗子はギャングに捕らわれ、体を売らされ続けたために結核を病み、一刻も早い治療を必要としていた。グレートおよび藤田と偶然再会した大山は、麗子の治療費を稼ぐためにギャングのボス・劉鳳厳に頭を下げ、ふたたび八百長プロレスに身を投じる。しかしまたも相手を倒してしまい、ギャングの怒りを買ったグレートは射殺される。ギャングたちは大山の居場所を探るために麗子を拷問して死なせる。

怒りに燃える大山は藤田とともに劉の邸宅に殴り込んだ。そこには用心棒として与那島が雇われていた。大山は与那島を倒し、劉をも打ち破った。大山は「極真に終わりなし」とつぶやき、沈む夕日に向かって三戦を繰り返し続けるのだった。

キャスト[編集]

※クレジット順。

スタッフ[編集]

少年マガジン連載「空手バカ一代」より)
作詞 - 中尾まさし - 作曲 - 清野友英、唄 - 西来路ひろみ

製作[編集]

終盤の決闘で大山倍達が前方宙返りしながら蹴りを与那島剛造に叩き込むが、千葉真一はフルコンタクト空手の試合でも実際にこの技を繰り出している(⇒ 詳細は#興行を参照)。

山口和彦は「『けんか空手シリーズ』の中で一番気に入っているのは本作」と答えている[7]

夏樹陽子は本作で女優デビューを果たしたが、沖縄ロケで車からゴミの山に落とされるシーンは、転げ落ちるところをスタントマンが行い、ゴミの山に横たわるのは夏樹自身が演じている[3]。ラッシュで撮った映像を確認すると、千葉真一が夏樹の演技を優しく褒めてくれたので、夏樹は涙が出るほど嬉しかったと語り、一番印象に残っているシーンと振り返っている[2][3]。「普通の人のように歩いて」と演出される映画の現場に最初は戸惑っていたが[8]、「きれいな服をいつも着ていられるのが日常のモデル」と異なる映画の世界で、顔の前にハエがブンブン飛んでいるようなゴミの山で羞恥心を捨て、演じきったことが、女優をやっていける自信になったと夏樹は思っている[3][8]

結末に『上海から来た女』『燃えよドラゴン』等で描かれた、鏡の部屋での対決場面がある。

興行[編集]

日本公開2か月前の1977年3月16日に千葉真一が空手道による真剣勝負をすることが発表され[9]、4月にハワイで開催された「日本代表極真会館チーム対ハワイ代表チーム」というフルコンタクト空手の対抗戦に参戦した[4][10]。日本代表メンバーには千葉のほか、東孝中村誠らがおり、対戦相手は「前アメリカ東海岸空手チャンピオンのグレッグ・カーフマン」という180センチメートル以上あるネグロイドであった[4][10]。千葉は通常の空手の技のほかに、跳び右後ろ回し蹴り胴回し回転蹴りの元となった前方宙返りして踵で蹴るなど、積極的に攻撃して[4][10]、第2ラウンドに千葉が二段蹴りKO勝ちしたが[4][10]、結果的に翌月封切り公開された本作の宣伝にもなった。

国内興行のキャッチコピーは、「リングを染めた鮮血の死闘45分! 牛殺し、クマ殺しの鉄拳が怪物レスラーに炸裂! “大山ケンカ空手”格闘世界一を決す世紀の一瞬![11]」。

ネット配信[編集]

YouTubeの「toei Xstream theater」にて、2021年9月11日から18日まで1週間の期間限定無料配信が行われた。

この後、同チャンネルのリニューアル版「東映シアターオンライン」にて、2022年11月4日から11月11日まで1週間の期間限定無料配信が行われた。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 石橋雅史は千葉真一にとって大山道場の先輩であり、石橋は大山道場と草創期の極真会館師範代を担っていた[4][5]

出典[編集]

  1. ^ a b c 空手バカ一代 - 日本映画製作者連盟
  2. ^ a b 女優デビューは千葉真一の相手役”. 週刊女性PRIME. SMAPをフェラーリに乗せ、森繁久弥さんからはお風呂のお誘い、夏樹陽子の豪華すぎる芸能界交友録. 主婦と生活社. p. 1 (2022年6月19日). 2022年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月21日閲覧。
  3. ^ a b c d 津島令子 (2022年4月5日). “◆女優デビュー作で、殴られ蹴られ吊るされて…”. テレ朝POST. 夏樹陽子、トップモデルから女優へ。ハードだったデビュー作の撮影「私はゴミだ! ゴミだ、ゴミだ!」. テレビ朝日. p. 1. 2022年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月22日閲覧。
  4. ^ a b c d e 中村カタブツ『極真外伝 〜極真空手もう一つの闘い〜』ぴいぷる社、1999年、173 - 174頁。ISBN 4893741373 
  5. ^ 『蘇る伝説「大山道場」読本』(初刷)日本スポーツ出版社、2000年1月14日、178 - 179頁。ISBN 4930943272 
  6. ^ 「山口和彦監督作『空手バカ一代』」、25頁。
  7. ^ ギンディ小林 「山口和彦 INTERVIEW」、28頁。
  8. ^ a b 藤木TDC「夏樹陽子、初降臨!!」『映画秘宝』第19巻第4号、洋泉社、2013年3月21日、47頁。 
  9. ^ 千葉真一三段がデスマッチ”. スポーツニッポン. (1977年3月16日) 
  10. ^ a b c d 大山倍達『わがカラテ革命』講談社、1978年、83 - 87頁。 
  11. ^ 本作ポスターより。

参考文献[編集]

※異なる頁を複数参照している文献のみ。発表年順。

  • 「史上最強のカラテ映画大戦争!」『映画秘宝』第12巻第5号、洋泉社、2006年4月21日。 

関連項目[編集]

主演・モチーフが同じ

外部リンク[編集]