爆薬

爆薬(ばくやく、: High explosivesHE)は、爆発性の物質のうち、特に激しく爆発する物。一般には爆発によって生じる衝撃波音速(秒速約340メートル)を超える物質を指す。このような爆発を特に爆轟と呼ぶ[1][2]。広義には火薬類の一種であるが、法令上の扱いは一般の火薬とは異なる(後述)。なお、広島に1945年8月6日に投下された原子爆弾ガンアセンブリという方式であった。

反応速度によって、低速のものと高速の物(一般にはこちらを爆薬と呼ぶ)に分けられることもあり、後者は約3–9キロメートル毎秒 (9,800–29,500 ft/s)の爆発速度で爆発する。たとえば、TNT(トリニトロトルエン)の爆発(燃焼)率は約5.8キロメートル毎秒 (19,000 ft/s)、導爆線は6.7キロメートル毎秒 (22,000 ft/s)、代表的なプラスチック爆薬のC-4は約8.5キロメートル毎秒 (28,000 ft/s)である。それらは通常、鉱業、爆破解体、軍事用途で使用される。

なお、英語で「高爆発物 High explosives」と表記するのは「低爆発物 Low explosive」との区分のためである。高爆発物(HE)が起こす爆発を爆轟と呼ぶのに対して、低爆発物(LE)の爆発は爆燃(deflagrates)と呼ぶ[3]

日本の火薬類取締法では、火薬類を「破壊的爆発の用途に供せられる爆薬」と「(黒色火薬無煙火薬およびそれら)と同等に推進的爆発の用途に供せられる火薬」に大きく分けており、概ねHEとLEがそれぞれに対応する[2]

無数の爆薬が化学的に合成可能だが、商業的および軍事的に重要なものには、NG(ニトログリセリン)TNT(トリニトロトルエン) 、TNX(トリニトロメタキシレン)、 RDX(トリメチレントリニトロアミン)HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)PETN(ペンスリット)TATB(トリアミノトリニトロベンゼン)HNS(ヘキサニトロスチルベン)などがある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 爆薬 [JSME Mechanical Engineering Dictionary]”. 一般社団法人 日本機械学会. 2020年11月8日閲覧。 “爆ごうを起こす火薬類の総称”
  2. ^ a b 大波篤司 (2008-08-29). 図解 ヘビーアームズ. 新紀元社. https://books.google.co.jp/books?id=o1g-DwAAQBAJ&lpg=PA1&hl=ja&pg=PT306#v=onepage&q=%E7%88%86%E8%96%AC&f=false 2020年11月8日閲覧。 
  3. ^ 野津 剛, 日比 一喜「水素ガス爆発による爆風」『日本風工学会誌』第37巻第3号、2012年、204頁、doi:10.5359/jawe.37.204“爆発現象には,燃焼速度が音速以下の爆燃(deflagration)と,音速を超え衝撃波を伴う爆轟(detonation)とが知られている。”