河野博史

河野 博史(かわの ひろふみ、1968年10月7日 - )は、日本カブトムシブリーダーおよびブドウ農家[1][2]宮崎県延岡市在住[1]

実家のブドウ農園を経営する傍ら、世界最大のカブトムシであるヘラクレスオオカブトの飼育をしている[3]。日本を代表するカブトムシブリーダーとして知られ[4]、「HirokA」の名前で国内外から注目を集めている[5]。また、「Hiroka」(ヒロカ)は河野が育ててインターネットオークションなどで販売しているヘラクレスオオカブトのブランド名にもなっている[6]

2022年に作出したヘラクレス・ヘラクレス(ヘラクレスオオカブトの原名亜種)の全長は182.8 mmを記録し、国内外のカブトムシ愛好家から応募を募る『BE・KUWAカブト飼育レコード』における世界記録となっている[7]

略歴[編集]

  • 1968年 - 宮崎県東臼杵郡北浦町(現:延岡市)に生まれる。28歳で家業のブドウ農家を継承する[4]
  • 2006年 - ブドウ農家の副業としてヘラクレスオオカブトの飼育を始め[7]HirokAのペンネームでオークションに出品を始める。
  • 2015年 - 全長171 mmのヘラクレスオオカブトが誕生し、昆虫専門誌の大きさを競うコーナーで第1位を獲得[3]。同個体は日本国外からも注目され、インターネットオークションで約300万円で落札された[4]。世界でもトップクラスのブリーダーとなり、海外からも注目を受ける。それ以降、2度にわたり他の愛好家に記録を更新される[8]
  • 2016年 - 自己最大および当時の最大記録(三重県の愛好家が羽化させた171.8 mm)を上回る174 mmの成虫を羽化させる[9]。この個体は2014年4月に卵から育て始め、同年5月に孵化して幼虫になり、2016年1月に羽化したものである[10]
  • 2017年 - ヘラクレスオオカブトの幼虫から成虫になるまでのタイムラプス動画をFacebookにアップロードした。公開から約1週間で再生回数2,700万回を記録[11]し、翌年の2018年にはナショナルジオグラフィックにて紹介される[12]
  • 2018年 - 彼が育てたヘラクレスオオカブトが延岡市ふるさと納税返礼品として選ばれる[13]
  • 2019年 - 河野の全面監修のもと原寸大のヘラクレスオオカブトを再現した組み立て式カプセル玩具「1/1ヘラクレスオオカブト」が発売され、人気の高さから品薄状態になったことが報じられた[14][15]。また2023年6月には「1/1 ヘラクレスオオカブト ver2.0」を発売[16]
  • 2022年 - 福島県田村市が進める「昆虫の聖地」づくりに向けた昆虫サポーターのうちの1人として任命された[17]

人物[編集]

栽培しているブドウの品種は、父の代から栽培を始めた藤稔である[18][19]。河野の父親(2023年7月時点で88歳)は1967年(昭和42年)から巨峰の栽培を始めたが、2023年(令和5年)7月時点から遡って約25年前から、栽培品種を巨峰より大粒で糖度の高い藤稔に切り替えている[20]。ブドウ畑の面積は35アール[21]、広さ約20アールのビニールハウス内でブドウを栽培している[20]。収穫時期は例年7月末からお盆前後で、イオン延岡ショッピングセンターで販売されているほか、市内外に固定ファンも多く、直接注文する者もいるという[20]。また、10アールの畑でアスパラガスの栽培も行っている[21]

2018年時点ではヘラクレスオオカブトの成虫・幼虫を併せて1,000 - 2,000頭程度を自宅に近接する建物で常時飼育している[6]。この飼育小屋は愛用していた外車を売った金で建てたもので[4]、面積は約35平方メートルである[10]。本人によれば大型のオス個体は30万円の値がつくこともあり、年間の総販売額は1,000万円以上に達するという[6]。元々は虫嫌いだったが、2006年(平成18年)ごろに量販店で販売されているカブトムシの幼虫を見たことで「ビジネスとして成立するのでは」と考え、数日後にヘラクレスオオカブトを見て感激したことが飼育を始める切っ掛けとなった[4]。専門誌やインターネットなどを見て独学し[3]、片道3時間以上かかる熊本県の昆虫ショップに数十回通い[6]、本格的に飼育法などを学んだ[3]。飼育を始めて以来、国内各地のブリーダーを訪問して助言を受け、幼虫の餌を独自に研究したほか、愛車を売却して専用の飼育小屋を建設するなどした[4]

幼虫の餌は、マイタケなどの菌床ブロックの粉砕くずに栄養分を添加させて発行させることで作っている[10]。この餌は実家のブドウ農園でのノウハウを生かし、試行錯誤を積み重ねたものである[3]。大型個体を作出するため、大型血統同士を掛け合わせたり、室温・餌の配合を調整するなど試行錯誤を繰り返している[8]。育てたヘラクレスオオカブトは「河野血統」と呼ばれ、国内外で高い人気を集めている[1]

「感覚が鈍る」との理由から、ヘラクレス以外の種類は飼育していない[4][22]。飼育室の気温は、ヘラクレスの原産地であるグアドループの平均気温である25を基準にエアコンで管理している[7]。また室内にはハエなどの害虫が侵入しないよう厳重に管理し[22]、幼虫に触る前は細菌感染を防ぐため、手の消毒を徹底している[4]

2018年には『日経ビジネス』の「2025年 稼げる新職業」(2018年7月2日号)で紹介された[6]。昆虫の展示会などのイベントではサインを求められることも多い[6]。また学校や福祉施設への無償提供や、子供たちに昆虫に興味を持ってもらうための講演などにも、可能な限り応じている[4]。延岡市議会議員の河野治満は同年、市議会における質疑応答で、博史を地域で活躍する人材の1人に挙げており、同市長読谷山洋司も博史らを「延岡に対する強い愛、そして延岡を何とかしなければいけない、そのような強い使命感を持っておられる方々」と考えている旨を述べている[23]

紙面掲載[編集]

テレビ・ラジオ出演[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c ヘラクレスオオカブトブリーダー河野博史さん 聡明中1年生に講演 「一生懸命やれば成果が出る」」『夕刊デイリー』夕刊デイリー新聞社、2021年3月24日、7面。2023年7月17日閲覧。オリジナルの2023年7月17日時点におけるアーカイブ。
  2. ^ 菅原鯉沙「教諭が記者体験-北浦夏休みエンジョイ教室を取材 ヘラクレスの生態に驚き-地域講師と体験活動」『夕刊デイリー』夕刊デイリー新聞社、2022年8月3日、7面。2023年7月17日閲覧。オリジナルの2023年7月17日時点におけるアーカイブ。
  3. ^ a b c d e 「世界最大のカブトムシを飼育」『JAだより』第329号、延岡農業協同組合、2017年8月22日。  - 2017年9月号。
  4. ^ a b c d e f g h i j 毎日新聞』2015年6月11日西部朝刊宮崎地方版25頁「さんさん宮崎人:ヘラクレスオオカブト飼育家・河野博史さん(46)=延岡市北浦町 一目ぼれ 尽きない情熱」(毎日新聞西部本社・宮崎支局【荒木勲】)
  5. ^ ブリーダーとして、個人事業主として… 河野さんが北浦中で講話 すべて自分の責任-やりがいも大きい」『夕刊デイリー』夕刊デイリー新聞社、2020年10月15日、6面。2023年7月17日閲覧。オリジナルの2023年7月17日時点におけるアーカイブ。
  6. ^ a b c d e f 日経ビジネス』2018年7月2日号「特集 2025年 稼げる新職業 親子で考える仕事選び PART1 激変する高収入職業 アナタのお子さん むしろ有望株!?」(22-33頁)→「「新しい仕事」(2) 趣味が高じて億万長者」(28-30頁) - 28-29頁に河野への言及あり。)
  7. ^ a b c 河野博史さん(延岡市北浦町)のヘラクレス 世界記録更新182・8ミリ」『夕刊デイリー』夕刊デイリー新聞社、2022年5月27日、7面。2023年7月17日閲覧。オリジナルの2023年7月17日時点におけるアーカイブ。
  8. ^ a b 182.8mmのヘラクレスオオカブトで世界最大級に認定 試行錯誤重ねるブリーダー 次は“世界で初の185mm超”目指す【宮崎発】」『FNNプライムオンラインテレビ宮崎、2022年6月8日。2023年7月30日閲覧。オリジナルの2023年7月30日時点におけるアーカイブ。
  9. ^ a b 荒木勲「巨大カブトムシ 体長174ミリ、国内最高更新」『毎日新聞毎日新聞西部本社、2016年6月11日。オリジナルの2016年6月11日時点におけるアーカイブ。 - 2016年6月11日西部朝刊社会面25頁に同内容の記事が掲載されている。
  10. ^ a b c d 読売新聞』2016年6月22日西部朝刊宮崎県版第二地方面27頁「「国内最大」体長174ミリ ヘラクレスオオカブト 延岡・河野さん飼育=宮崎」(読売新聞西部本社
  11. ^ 『夕刊デイリー』2017年5月29日付「ヘラクレスオオカブト 成長過程動画 再生2700万回 国内屈指のブリーダー北浦の河野さんが紹介 世界的話題に」(夕刊デイリー新聞社)
  12. ^ 【動画】世界最大のカブト、幼虫もソーセージ大ナショナルジオグラフィック
  13. ^ 返礼品「ヘラクレスオオカブト」で巻き返し」『西日本新聞西日本新聞社、2018年7月18日、朝刊。2023年7月18日閲覧。オリジナルの2023年7月17日時点におけるアーカイブ。
  14. ^ 『夕刊デイリー』2019年8月3日夕刊「超リアル 模型のカブトムシ メーカーが発売 延岡の河野さんが監修」(夕刊デイリー新聞社)
  15. ^ ヘラクレスオオカブトを玩具に」『宮崎日日新聞』宮崎日日新聞社、2019年10月7日。2023年7月30日閲覧。オリジナルの2023年7月30日時点におけるアーカイブ。
  16. ^ 全長18センチ超え!「1/1 ヘラクレスオオカブト」が形状を一新してカプセルトイ・ブラインドBOXで登場!希少なブルーヘラクレスも!!”. 電撃ホビーウェブ (2023年3月2日). 2024年1月7日閲覧。
  17. ^ “聖地づくりへ昆虫サポーターを任命 福島県田村市 飼養家ら4人”. 福島民報. (2022年8月31日). オリジナルの2022年8月31日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220831092518/https://www.minpo.jp/news/moredetail/20220831100189 2024年1月7日閲覧。 
  18. ^ 粒が大きくて糖度高い ブドウ「藤稔」収穫始まる-延岡市北浦町」『夕刊デイリー』夕刊デイリー新聞社、2021年7月26日、1面。2023年7月17日閲覧。オリジナルの2023年7月17日時点におけるアーカイブ。
  19. ^ 大粒で糖度高い藤稔 河野さん方、収穫始まる-延岡市北浦町」『夕刊デイリー』夕刊デイリー新聞社、2022年8月1日、1面。2023年7月17日閲覧。オリジナルの2023年7月17日時点におけるアーカイブ。
  20. ^ a b c 『夕刊デイリー』2023年7月29日付1頁「特産のブドウ 藤稔が収穫期 延岡市北浦町 河野さんのハウス」(夕刊デイリー新聞社)
  21. ^ a b 日本農業新聞』2017年8月6日付「巨大カブト飼育に情熱 延岡市の農家河野さん 技術磨きより大きく」
  22. ^ a b MRT宮崎放送 福田英俊「ヘラクレスしか育てない~世界一のカブトムシブリーダー~」『RKBオンライン』RKB毎日放送、2021年3月15日。2023年7月30日閲覧。オリジナルの2023年7月30日時点におけるアーカイブ。
  23. ^ 延岡市議会「平成30年 第18回定例会(第4号 6月14日)」→No.121 河野治満君、No.122 市長(読谷山洋司君) - 延岡市議会会議録検索システムより2023年7月30日に検索・閲覧。
  24. ^ 佐々木六華大きいことはいいことだ!」『ニュース時々虎・海・バンド』UMKテレビ宮崎、2015年8月20日。2023年7月30日閲覧。オリジナルの2023年7月30日時点におけるアーカイブ。
  25. ^ 世界一のヘラクレスオオカブトを求めて~河野博史の挑戦~”. ケーブルメディアワイワイ (2021年). 2023年7月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月30日閲覧。
  26. ^ 公式ケーブル4K【4K】世界一のヘラクレスオオカブトを求めて~河野博史の挑戦~【2021年】」『YouTube』、ケーブルメディアワイワイ、2021年5月21日https://www.youtube.com/watch?v=TLFT2xjp1KQ 
  27. ^ 世界一のヘラクレス王になる! ~北浦より愛をこめて~”. FMのべおか (2020年7月20日). 2024年1月7日閲覧。
  28. ^ 当選者発表~♪”. FMのべおか 88.6MHz. FMのべおか (2020年8月5日). 2023年7月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月30日閲覧。
  29. ^ ヘラクレス プレゼント 当選者発表”. FMのべおか (2023年8月17日). 2024年1月7日閲覧。

外部リンク[編集]