新京成電鉄80000形電車

京成3100形電車 (2代) > 新京成電鉄80000形電車
新京成電鉄80000形電車
新京成電鉄80000形電車
基本情報
運用者 新京成電鉄
製造所 日本車輌製造
製造年 2019年 -
製造数 5編成30両
運用開始 2019年12月27日
主要諸元
編成 6両編成(MT比4M2T)
軌間 1,435 mm(標準軌
電気方式 直流 1,500 V
架空電車線方式
最高運転速度 85 km/h(新京成線内)
95 km/h(京成千葉線内)
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 3.5 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 776(座席282)人
車両定員 先頭車:122(座席43)人
中間車:133(座席49)人
車両重量 27.4 t - 34.8 t
編成重量 191.3 t
全長 18,000 mm
全幅 側構間:2,768 mm
全高 4,036.5 mm
パンタグラフ折りたたみ時:4,050 mm
車体 ステンレス鋼
台車 日本製鉄ボルスタ
モノリンク式ダイレクトマウント形空気ばね台車
FS-583SM形(電動車)
FS-583ST形(付随車)
主電動機 三菱電機製 MB-5160-D 形
かご形三相誘導電動機
主電動機出力 155 kW
駆動方式 WN駆動方式
歯車比 85:14 (6.07)
制御方式 SiC MOSFET素子適用VVVFインバータ制御
制御装置 三菱電機製 MAP-168-15V331
制動装置 三菱電機製MBSA形
回生ブレーキ併用
電気指令式空気ブレーキ
純電気ブレーキ
保安装置 C-ATS
備考 出典:交友社「鉄道ファン」2020年2月号CAR INFO「新京成電鉄80000形」記事。
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新京成電鉄80000形電車(しんけいせいでんてつ80000がたでんしゃ)は、2019年令和元年)に登場した新京成電鉄通勤形電車

概要[編集]

2005年平成17年)に製造したN800形に引き続き「京成グループ標準車両」として設計・製造された車両[1]で、2019年(平成31年)4月11日に導入が発表された[2]京成電鉄との共同設計で、京成電鉄では3100形として製造される[3]が、本形式と京成3100形では一部機器の仕様が異なり、特に制御装置や主電動機に関しては両者で全く別のものを採用している。

本形式は先に落成した京成電鉄3100形と同様に、「受け継ぐ伝統と新たな価値の創造」をコンセプトに、さらに新京成電鉄のキャッチフレーズ「まいにち、ちょっと、新しい」を具現化したものである[4]

車体[編集]

N800形と同じく、いわゆる「日車式ブロック工法」による、軽量ステンレス製18m級3扉車6両編成を組む[1]。前頭部は普通鋼製の強化構造[1]で、前面窓上部の前部標識灯(前照灯)は森尾電機製の16粒角型LED式ライトを採用、窓下には多角形構成の急行灯と後部標識灯(尾灯)を配置している[4]

やわらかさを演出するために外観を丸みを帯びた形状とし、N800形等の在来形式と異なり裾部だけではなく正面脇から側面上部にかけてにもジェントルピンクのラインを配色している[1]。これは高架区間でも新京成のコーポレートカラーであるピンクがわかるようにするためであるという[2][1]

なお、本形式の車体側面の車番表記は在来形式と異なり番号の前の社章がないほか、位置も車体下部から上部に変更されている。

車内設備[編集]

車内のカラースキームは8800形リニューアル車およびN800形N858編成(最終増備編成)に準じている[1]

オールロングシート構成だが、京成3100形で採用された「一部折りたたみ式ロングシート」[注 1]は採用されていない。ドア間は8人掛け(先頭車の車椅子スペース横は5人掛け)、車端部は5人掛けまたは2人掛け(フリースペース横)となっている[1]

座席は1人分の掛け幅が460 mmの片持ち式構造で、従来よりも背もたれを170 mm高くしたハイバックシートを採用している[4]。一般席の背もたれは赤色系、優先席部は青色として識別している[4]。優先席部おいては、つり革と手すりをオレンジ色着色品としている[4]

側窓ガラスは熱線吸収・UVカットガラスを採用している[1]。側窓のカーテンおよび連結面貫通扉には、沿線の名産品であるブドウナシのイラストを入れている[4]。先頭車の乗務員室直後に車椅子スペース、中間車の車端部(1両1か所)にはフリースペースを設置している[4]。フリースペースは、車椅子利用者だけではなくベビーカーや大きな荷物を持った乗客への配慮とした[1]

防犯カメラは1両に3台設置されている。KEISEI FREE Wi-Fiは未搭載。

空調装置三菱電機製の集中式CU718A形(京成3100形と共通)で、能力は46.51 kW(40,000 kcal/h)の装置を各車1台搭載する[5]。この他の共通点として、空気の浄化効果のあるプラズマクラスターイオン発生装置の導入[1]、空調制御ソフトの見直し、開放感を持たせるために座席端部の袖仕切りにおけるガラスの採用などがされている。

旅客案内機器[編集]

車内案内表示装置は各乗降扉上に17インチ液晶ディスプレイ(LCD)2画面を配置しており、2画面とも運行情報表示用となっている。新京成ではそれまで、車内LCDはLEDディスプレイ取付時横長LCDを採用しており、当初からの2画面LCDは新京成として初導入(京成3100形の2画面LCDも京成初)。ドアチャイムおよびドア開閉表示灯を備えている[1]

放送装置には自動放送装置を備えている[6]

乗務員室[編集]

運転台は従来からのT字型ワンハンドルマスコンを採用している[6]力行は最大5ノッチ、常用ブレーキは最大7段構成である[6]。運転台計器盤には8900形更新車と同様のタッチパネル式のモニタ装置を採用[7]を採用している[6]

主要機器[編集]

主制御装置には、8800形リニューアル車に続き、三菱電機製フルSiC-MOSFET素子VVVFインバータ制御 (MAP-168-15V331形) を採用している[5][8](1C4M2群制御・純電気ブレーキ対応)。N800形では、ベースとなった京成3000形と同じく東洋電機製造製の主制御装置が採用されており、同車のベースとなった3100形においても同社製の機器が採用されているが、本形式では新京成で広く使われてきた三菱電機製に回帰した。主電動機には同じく、三菱電機製の155 kW 出力全閉式かご形三相誘導電動機 (MB-5160-D形) が採用されている[5]。設計最高速度は120km/hだが、運転最高速度は新京成線内が85km/h、京成線内が95km/hに設定されている[8]

台車日本製鉄製のモノリンク式ボルスタ空気ばね台車を使用している[5]。形式は動力台車がFS583SM形、付随台車がFS583ST形であり[5]、京成電鉄3100形と同等のものである[5]

集電装置(パンタグラフ)は、東洋電機製造製シングルアーム式(PT7115-B形)をM5・M2車に2基ずつ搭載する[5]。補助電源装置は東芝インフラシステムズ製の静止形インバータ(SIV・INV192-F0形・定格容量 150 kVA )を搭載する[5]。空気圧縮機(CP)は三菱電機製のオイルフリースクロール式CP(URC1200SD-I形)を各先頭車に搭載する[5]

一方で、京成電鉄が3700形特急形車両を含めた場合はAE100形)以来採用してきた、「先頭車はコンプレッサー搭載電動制御車(京浜急行電鉄の規定)、先頭から2両目は主制御装置搭載電動車、先頭から3両目は補助電源搭載付随車」というユニット構成は3100形同様採用しており、新京成電鉄においてはN800形から引き続き採用する形となる[7]

主要諸元[編集]

編成表[編集]

 
松戸
 
号車 6 <5> 4 3 <2> 1 竣工時期
形式 モハ80006形
(Mc6)
モハ80005形
(M5)
サハ80004形
(T4)
サハ80003形
(T3)
モハ80002形
(M2)
モハ80001形
(Mc1)
機器 CP・BT VVVF SIV SIV VVVF CP・BT
車両重量 33.4t 34.8t 27.5t 27.5t 34.8t 33.4t
編成 80016 80015 80014 80013 80012 80011 2019年10月
80026 80025 80024 80023 80022 80021 2021年11月[9]
80036 80035 80034 80033 80032 80031 2022年11月
80046 80045 80044 80043 80042 80041 2023年10月
80056 80055 80054 80053 80052 80051 2024年3月
  • VVVF:主制御機(VVVFインバータ)
  • <>:パンタグラフ
  • SIV:補助電源(静止形インバータ)
  • CP:空気圧縮機
  • BT:蓄電池
  • 構造上は3・4号車間に中間電動車2両(松戸方から京成のM1'+M2に相当するユニット)が挟めるようになっている。ただし、N800形などと異なり、号車番号を示す車両番号の末尾は1から6までの連番となっている。

運用[編集]

京成高砂駅から京成本線を自走で回送された80026編成 (2021年10月)

2019年11月13日に80016編成が試運転を開始。同年12月21日に先行試乗会を開催。

2019年12月27日に1編成が営業運転を開始し、当初は平日を中心とした新京成線内折り返し運用に充当されている[3]。時期は未定だが、将来的に京成千葉線への直通運転にも充当予定と説明されている[8]

2021年10月9日には2編成目となる80026編成がくぬぎ山車両基地まで北総鉄道北総線京成本線を自走した上で搬入回送された。当編成は80000形で初めて他社線を自走したことになる。

2022年11月3日に3編成目となる80036編成が運行開始された[10]

2023年11月2日に4編成目となる80046編成が運行開始された[11]

2024年4月2日に5編成目となる80056編成が運行開始された[12]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 各扉間の8人がけロングシートが袖仕切り付きの3+2+3に分割されており、中間の2人がけの部分は、折りたたんで(跳ね上げて)スーツケース置き場とできる構造。京成3100形が成田スカイアクセスに充当されることを念頭に採用された。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k 鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』2020年4月号 new model「新京成電鉄80000形」pp.126-129。
  2. ^ a b 14年ぶりに新形式車両を導入します』(プレスリリース)新京成電鉄株式会社、2019年4月11日https://www.shinkeisei.co.jp/topics/2019/14836/2019年11月17日閲覧 
  3. ^ a b 【保存版】2019年秋 - 2020年春に導入された「鉄道新型車両」をずらり紹介【東日本編】 GetNavi web 2020年4月5日配信, 2020年5月3日閲覧.
  4. ^ a b c d e f g エリエイ「とれいん」2020年2月号MODELERS FILE「新京成電鉄80000形電車」pp.6 - 8・11。
  5. ^ a b c d e f g h i エリエイ「とれいん」2020年2月号MODELERS FILE「新京成電鉄80000形電車」pp.8 - 9。
  6. ^ a b c d 鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』2020年4月号 new model「新京成電鉄80000形」pp.130-132。
  7. ^ a b 大野雅人 (2019年12月16日). “新京成電鉄の新型車、本形式は京成3100形と共通設計で新発想”. Response.. 2020年8月19日閲覧。
  8. ^ a b c 上新大介 (2019年12月9日). “新京成電鉄80000形 12/27デビュー! 新型車両を報道公開、写真82枚”. マイナビニュース. 2020年8月19日閲覧。
  9. ^ 鉄道ダイヤ情報2022年4月号私鉄車両の動きより
  10. ^ 「80000形」新造車両をさらに導入します』(プレスリリース)新京成電鉄株式会社、2022年11月1日https://www.shinkeisei.co.jp/topics/2022/28380/2022年11月4日閲覧 
  11. ^ 「80000形」4次車を導入します』(プレスリリース)新京成電鉄株式会社、2023年11月1日https://www.shinkeisei.co.jp/topics/2023/32361/2023年11月7日閲覧 
  12. ^ 「80000形」5次車の導入について』(プレスリリース)新京成電鉄株式会社、2024年4月2日https://www.shinkeisei.co.jp/topics/2024/33482/2024年4月11日閲覧 

参考文献[編集]

外部リンク[編集]