恵那山

恵那山
北側から望む恵那山 地図
標高 2,191[1] m
所在地 日本の旗 日本
長野県下伊那郡阿智村
岐阜県中津川市
位置 北緯35度26分37秒 東経137度35分50秒 / 北緯35.44361度 東経137.59722度 / 35.44361; 137.59722座標: 北緯35度26分37秒 東経137度35分50秒 / 北緯35.44361度 東経137.59722度 / 35.44361; 137.59722[1]
山系 木曽山脈[注釈 1]
恵那山の位置(日本内)
恵那山
恵那山の位置
プロジェクト 山
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恵那山の地形図

恵那山(えなさん)(胞衣山・胞山)は長野県阿智村岐阜県中津川市にまたがる、木曽山脈(中央アルプス)の最南端[注釈 2]に位置する標高2,191 m[注釈 1][3]日本百名山[5]及び新・花の百名山[6]に選定されている。岐阜県は胞山県立自然公園に指定している。

概要[編集]

中津川の市街地を見下ろすようにそびえ立ち、そして濃尾平野岡崎平野、さらに遠く伊勢平野の広範囲の地域から[7]、その大きな櫛形の山容を望むことができる美濃最高峰である[8]。山頂の標高2,191 mの最高点の南東には、一等三角点[9]、展望台、恵那神社奥宮本社がある。山頂展望台は、周囲にトウヒコメツガなどの背が高い針葉樹林があるため、展望はあまり良くない[注釈 3]中津川支流である黒井沢からの登山道と主稜線の合流点には、恵那山頂避難小屋があり、その裏の岩場からは、北アルプス御嶽山中央アルプス南アルプス富士山などの展望が得られる。

北東にある富士見台高原の真下を、中央自動車道恵那山トンネルが通っている。北山麓には中山道馬籠宿妻籠宿がある[3]。馬籠で生まれ育った島崎藤村が幼少時代に眺めていた山であり、『夜明け前』で描かれている。また、プロレタリア文学葉山嘉樹の『セメント樽の中の手紙』にも登場する。

山名の由来[編集]

古くは胞衣山(胞山)と呼ばれ、また角度により船を伏せたように見える事から舟覆伏山 (ふなふせやま) などとも呼ばれた。松平君山の吉蘇志略で「天照大神がここで降誕され、その胞衣(えな)がこの山に埋められた」と記載されており、これが山名の由来とされている[10]。信州側では「野熊山」とも呼ばれていた[8]

環境[編集]

恵那山の植生は、垂直分布では低地丘陵帯、山地帯、亜高山帯まで幅広く、植物の宝庫になっている[3]

山の上部はウラジロモミコメツガトウヒなどの針葉樹林帯である。江戸時代の初期までは西面がヒノキモミなどの美林であったが、その後の乱伐により荒廃した[8]。他の斜面では、林道が整備されスギカラマツなどが植林されている。登山道では、イワウチワサラサドウダンシャクナゲショウジョウバカマズダヤクシュバイカオウレンなどの花が見られる。

人間史[編集]

恵那山の風景
山の上部は針葉樹林で覆われている
山頂部に避難小屋一等三角点がある

信仰対象としての恵那山[編集]

山頂部にある恵那神社奥宮

恵那山は古くは胞衣(えな)山や胞山と記され、イザナギイザナミが神坂峠を越え、美濃国で天照大神が誕生した際に胞衣 (えな) を納めた地であると伝わる[3]。この胞衣 (えな) とは、胎児を包む膜及び胎盤のことをいう[3]

恵那山にはイザナギとイザナミを主祭神とする恵那神社があり、山頂に奥宮本社、山麓に前宮本社がある[3]

江戸時代中期には毎年修験道者が礼拝に訪れ、前夜に恵那神社で禊ぎをして登山を行っていた。また明治から大正時代にかけては道路や登山道が整備された事により恵那講が流行し、白装束を来た一般人が多く訪れるようになった。

現在、恵那山山頂の恵那神社奥宮には 7 つの社が置かれている (以下黒井沢ルートから見た順序)。麓の中津川市の川上には恵那神社がある。

登山[編集]

毎年4月29日頃に、富士見台高原の神坂小屋付近にて、阿智村と合同で安全を祈願する開山祭が開催されている[13]。1893年(明治26年)5月11日に、英国人のウォルター・ウェストンが恵那山に登り、恵那山を全世界に紹介した[11]。これを記念して、ウェストン公園が整備されており、ウォルター・ウェストンの胸像が置かれている[3]。また毎年5月11日に中津川市観光協会により、ウエストン祭が開催されている[13]。冬期には積雪があり、春先の残雪期にも注意が必要である[15]

登山ルート[編集]

  • 黒井沢ルート - 野熊ノ池、避難小屋と水場(山頂避難小屋から約250m下ったところに岩清水)がある。
  • 神坂峠ルート - 展望が良い、強清水から鳥越峠及びアルプス展望台から千両山へのサブルートがある。
  • 広河原ルート - 長野県の阿智村からの最も新しい最短のルート。
  • 前宮ルート - 健脚向き、登山口への道路脇には恵那山ウェストン公園と恵那神社がある。

周辺の山小屋[編集]

周辺には以下の山小屋があり、萬岳荘の他は無人の避難小屋である[16]

画像 名称 所在地 標高
m
恵那山からの
方角と距離km
収容人数
(人)
備考
恵那山頂避難小屋(2016年12月2日撮影) 恵那山頂避難小屋 黒井沢ルートと
稜線との合流点
2,170 南東 0.2 15 無人の避難小屋
トイレ設置
野熊ノ池避難小屋(2016年12月3日撮影) 野熊ノ池避難小屋 黒井沢ルート
野熊ノ池周辺
1,720 南東 2.5 5 無人の避難小屋
萬岳荘(2007年10月23日撮影) 萬岳荘 神坂峠
その先の林道終点
1,590 北東 4.9 45 期間外一部開放
阿智村
神坂小屋(2007年10月23日撮影) 神坂小屋 富士見台高原と
神坂峠との中間点
1,690 北東 5.1 休憩所
トイレ設置

地理[編集]

周辺の山[編集]

木曽山脈(中央アルプス)南部の主稜線上にある。北の富士見台高原との鞍部には、東山古道であった神坂峠がある。

山容 山名 標高
m
三角点等級
基準点名[9]
恵那山からの
方角と距離km
備考
御嶽山 3,067  (一等)「御岳山」
(3,063.41m)
北北西 51.0 日本百名山
南木曽岳 1,676.93  二等
「南木曾」
北北東 17.3 日本三百名山
前山 1,351.0  三等
「前山」
西北西 5.4 まえやま
富士見台高原 1,739 北北東 5.4 ふじみだいこうげん
神坂山 1,684.21  三等
「神坂山」
北東 5.3 みさかやま
恵那山 2,191 (一等)「恵那山」
(2,189.81 m)
 0 日本百名山
新・花の百名山ぎふ百山
焼山 1,709.17  三等
「焼山」
南西 5.2
大川入山 1,907.74  二等
「大川入」
南南東 7.6
納古山からの望む冠雪した恵那山

源流の河川[編集]

以下の主な源流の河川は、伊勢湾太平洋遠州灘)へ流れる。

交通・アクセス[編集]

恵那山の風景[編集]

聖岳から遠望する恵那山 馬籠宿から望む恵那山 摺古木山から望む恵那山 前宮ルートから望む恵那山 国道153号勘八峡愛知県
豊田市)より望む恵那山
名古屋市守山区矢田川
の堤防道路より望む恵那山

山頂付近からの展望[編集]

三角点付近は針葉樹林に覆われているため、その横に設置された展望台からは良好な展望が得られない。 恵那山頂避難小屋の裏の岩場などからは、中央アルプスや伊那谷南アルプス富士山などを望むことができる。

中央アルプスの山並み 南アルプス北部の山並みと伊那谷 赤石山脈南部と富士山

テレビ番組[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 三河高原の一部とする説もある。[1]
  2. ^ 恵那山を中央アルプス最南端とする資料[2][3]大川入山を中央アルプス最南端とする資料[4]がある。
  3. ^ ただし日本百科大事典(小学館1969年)第2巻 p.436によれば、当時は山頂からの眺めがよく、伊勢湾琵琶湖も見えたという。

出典[編集]

  1. ^ a b 日本の主な山岳標高(岐阜県の山)”. 国土地理院. 2010年12月16日閲覧。
  2. ^ 国定公園中央アルプス”. 中央アルプス山岳観光協議会. 2023年2月24日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h ご当地自慢 日本百名山「恵那山」のご紹介”. 東濃森林管理署. 2023年2月24日閲覧。
  4. ^ 石原淳. “矢作川源流部におけるササ原の分布について”. 中部地方整備局. 2023年2月24日閲覧。
  5. ^ a b 深田久弥『日本百名山』朝日新聞社、1982年7月、283-286頁。ISBN 4-02-260871-4 
  6. ^ 田中澄江『新・花の百名山』文藝春秋、1995年6月、214-217頁。ISBN 4-16-731304-9 
  7. ^ 京都の愛宕山から比叡山や比良山脈、恵那山を遠望 2012年1月”. 2020年11月9日閲覧。 “さらに条件が良ければ、京都市右京区愛宕山から山影を望むことが出来るという”
  8. ^ a b c 日本山岳会『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月、993-935頁。 
  9. ^ a b 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2010年12月16日閲覧。
  10. ^ 『日本の山1000』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1992年8月、355頁。ISBN 4635090256 
  11. ^ a b ウォルター・ウェストン 著、青木枝朗 訳『日本アルプスの登山と探検』岩波文庫、1997年6月、372-373頁。 
  12. ^ 日外アソシエーツ編集部 編『日本災害史事典 1868-2009』日外アソシエーツ、2010年9月27日、35頁。ISBN 9784816922749 
  13. ^ a b c 中津川市の主な行事予定【平成23年5月】” (PDF). 中津川市. 2011年6月30日閲覧。
  14. ^ 岐阜県の山に小型機が墜落”. ウィキニュース. 2010年12月16日閲覧。
  15. ^ 恵那山登山時の注意事項”. 中津川市. 2010年12月16日閲覧。
  16. ^ 『山と溪谷2011年1月号付録(山の便利手帳2011)』山と溪谷社、2010年12月、172頁。ASIN B004DPEH6G 
  17. ^ NHKクロニクル 保存番組検索結果詳細 日本百名山 恵那山(1994年11月4日放送)”. NHK. 2016年11月18日閲覧。
  18. ^ NHKクロニクル 保存番組検索結果詳細 趣味悠々 中高年のための登山学~日本百名山をめざす 恵那山(1997年8月7日放送)”. NHK. 2016年11月18日閲覧。

参考文献[編集]

  • 『中央アルプスの山旅 地形・地質観察ガイド』飯田市美術博物館 
  • 津野祐次『中央アルプスを歩く』山と溪谷社〈フルカラー特選ガイド〉、2000年3月、65-69頁。ISBN 4635170748 
  • 『中央アルプス 御嶽山・白山』山と溪谷社〈ヤマケイ アルペンガイド11〉、2009年6月、88-92頁。ISBN 9784635013598 
  • 『東海・北陸の200秀山 下(東海・信州編)』中日新聞社、2009年10月、182-183頁。ISBN 9784806205999 
  • 『改訂版 岐阜県の山』山と溪谷社〈新・分県登山ガイド〉、2009年12月、122-123頁。ISBN 9784635023702 
  • 『改訂版 長野県の山』山と溪谷社〈新・分県登山ガイド〉、2010年1月、130-131頁。ISBN 9784635023658 
  • 『改訂新版 名古屋周辺の山』山と溪谷社、2010年7月、180-183頁。ISBN 9784635180177 
  • 『木曽駒・空木岳』昭文社〈山と高原地図 2011年版〉、2011年3月。ISBN 9784398757807 

関連項目[編集]