徘徊型兵器

IAI ハロップ
パリ航空ショー、2013年

徘徊型兵器または徘徊弾薬(はいかいがたへいき、はいかいだんやく、: loitering munition)は、攻撃型の無人航空機 (UCAV) の一種。

離陸した無人航空機が数時間にわたって目標地域上空を「徘徊(loitering)」し、高価値目標を発見するかもしくは地上管制システムからの指令を受けることにより、対地ミサイルのように搭載した爆薬もろとも目標に突入し自爆して攻撃を行うというものである[1][2]

徘徊可能な時間内に目標が発見できない場合には自爆するか、機種によっては自力で帰投し再使用可能なものもある。

呼称[編集]

呼称については徘徊型自律兵器 (Loitering Autonomous Weapons[1]) 、徘徊型攻撃システム (Loitering Attack Systems[3]) というようにも表現される。

「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自殺ドローン・自爆型ドローン[4])」、「Killer Drone(キラードローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」、「Samurai Drone(サムライドローン)」などとも呼ばれている[注 1][5][6]。コストパフォーマンスの高さから「Costco Drone(コストコドローン)」という表現もある[7]

日本語では、うろつき型兵器[2]自爆型UAV特攻型UAVカミカゼUAV、などと訳されている。

概要[編集]

徘徊型兵器の、従来の対地ミサイル巡航ミサイルとの違いとしては

  • 発射(離陸)する時点では必ずしも攻撃目標が明確である必要が無い。
  • 飛翔体自身が自分で攻撃目標を探す事ができる。
  • 攻撃目標が見つかるまで"徘徊"して待つことができる。
  • 攻撃目標が見つからない場合に帰投できる機体もあり、コスト的にも無駄にならない。

といった点が挙げられる。

この種の兵器として最初に実用化されたのは、イスラエルIAIが開発し1994年に初飛行に成功したハーピー[1]、これは敵防空網制圧英語版(SEAD)を目的としており、検出した敵レーダー波に向かって突入する機能を持つものであった。

その後は各国で開発が進み、歩兵1名での運用、移動中の車両への攻撃、全天候/夜間での行動、遠隔操作による目標の再設定など多彩な機能が実現している。2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、アメリカ製のスイッチブレードがロシア軍の車両を多数破壊し、評価が高まっている[4]

機種の例[編集]

IAI ハーピー
パリ航空ショー、2007年

イスラエルの旗 イスラエル

敵の防空レーダーに突入し自爆する機能を持つ。
ハーピーの改良型[8]。可視光カメラを搭載し、敵がレーダー波の放出を停止しても攻撃可能になっている。
ハーピー/ハロップの改良型[9]。NGは New Generationの意。全天候/夜間攻撃能力を持つ。
小型・軽量・低コストの徘徊型UAV[10]。2016年のシンガポール・エアショーで初公開された。
クアッドコプター型で、地上部隊の兵士が一人で携帯・操作可能なサイズのUAV[11]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

1980年代に開発された対レーダーミサイルで、限定的な徘徊機能を持つものとして計画されたが1991年に開発中止となった。
徘徊機能を持つLAM(Loitering Attack Munition)は実用化されず開発中止となった。
LOCAASはLow Cost Autonomous Attack System(低価格自律攻撃システム)の略。30分程度の"徘徊"が可能な巡航ミサイル。開発中止となった。
エアロヴァイロンメント英語版製の小型の自爆型UAV。地上部隊の兵士が一人で携帯・操作可能なサイズである。
エアロヴァイロンメント英語版製の自爆型UAV。6時間の滞空が可能とされる[12]
LMAMSはLethal Miniature Aerial Missile System(致死性小型航空ミサイルシステム)の略。アメリカ陸軍が開発している小型の自爆型UAV。地上部隊の兵士が一人で携帯・操作可能なサイズである。

イギリスの旗 イギリス

MBDAが開発し、イギリス軍への導入提案についてはIAI ハロップが競合機種となった[1][13]

大韓民国の旗 大韓民国

  • デビルキラー
韓国航空宇宙産業(KAI)が開発した自爆型UAV[14][15]

ポーランドの旗 ポーランド

WBエレクトロニクスポーランド語版製の自爆型UAV。ウクライナ軍にも供与されている。

イランの旗 イラン 以下のドローンは全て2022年ロシアのウクライナ侵攻時にイランからロシア軍に提供されている[16]

ロシアの旗 ロシア

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ロシアによるウクライナな侵攻で発生した2022年ロシアのウクライナ侵攻のウクライナ軍兵士-ウクライナ語「Камікадзе ми з японських Crazy Boys — тепер дрон-камікадзе — це теж самурайський дрон,」、英語「We’re Japanese's Crazy Boys’ Kamikaze is now Kamikaze Drone is too the Samurai Drone from now,」

出典[編集]

  1. ^ a b c d “Loitering Autonomous Weapons”. defense-update.com. http://defense-update.com/features/du-1-07/armedUAVs_8.htm 
  2. ^ a b “新開発された「特攻ドローン」の強烈な威力(動画あり)”. WIRED.JP. http://wired.jp/2015/08/28/drone-missile/ 
  3. ^ IAI Loitering Attack Systems
  4. ^ a b 日本放送協会. “ウクライナ支える武器供与 欧米の狙いは? 専門家と読み解く | NHK”. NHKニュース. 2022年6月5日閲覧。
  5. ^ 佐藤仁 (2021年3月4日). “UAEの軍事企業 UAE初の「神風ドローン」公開:新たな兵器として紛争での主流へ”. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/fd1c41827afe57a00dee7815cda3b770cf680535 
  6. ^ 佐藤仁 (2021年2月3日). “アメリカ海兵隊、神風ドローン搭載の自律型無人船を導入”. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/73c88291384a7861ac3656f8297e3c0b6420a6d6 
  7. ^ 海外では「コストコ・ドローン」と呼ばれていた!「ヤマダ電機のドローン」とウクライナ紛争の関係について、もう一度考えよう(小倉 健一) @gendai_biz”. 現代ビジネス. 2022年6月5日閲覧。
  8. ^ IAI HAROP
  9. ^ IAI HARPY NG
  10. ^ IAI GREEN DRAGON
  11. ^ IAI ROTEM L
  12. ^ ロシア軍が恐れる最新ドローン「フェニックス・ゴースト」の正体 ドンバス地域に展開するロシア軍を待つ「戦艦大和」の運命”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2022年6月5日閲覧。
  13. ^ “thinkdefence.co.uk Fire Shadow Loitering Munition”. http://www.thinkdefence.co.uk/uk-complex-weapons/fire-shadow-loitering-munition/ 
  14. ^ “UAVGLOBAL KAI Devil Killer”. http://www.uavglobal.com/kai-devil-killer/ 
  15. ^ “韓国KAI、長距離を精密に攻撃する自爆型UAVを開発”. militaryblog.jp. http://news.militaryblog.jp/e367556.html 
  16. ^ 佐藤仁. “ロシア軍が使用の新たなイランの神風ドローン「シャハド131」首都キーウで撃破した写真公開”. Yahoo!ニュース. 2022年10月15日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]