山下諭一

山下 諭一(やました ゆいち、1934年5月8日 - 2018年10月[1])は、日本作家翻訳家

略歴[編集]

兵庫県神戸市[2]出身。

早稲田大学文学部中退[2]。大学在学中から創作、翻訳などの執筆活動を開始し、1958年に創刊された雑誌『マンハント』(久保書店)では編集長・中田雅久の「特別補佐官のような重要や役割」[3]を果たし、翻訳をはじめ、のちコラム執筆を行う[4]

翻訳においては、カーター・ブラウンに代表される、いわゆる軽ハードボイルド作品の紹介で独自の軽妙な文体を披露。また創作における代表作は『危険な標的』(1964)にはじまる、ニューヨークの日本人無頼漢、曾根達也(ソネ タツヤ)を主人公とした連作シリーズである。他にも殺し屋を主人公とした『俺だけの埋葬簿』(1965)など、一貫して軽ハードボイルド作品を書きつづけた[5]

一方、こうした活動と並行して「裏街道を歩く女たちのドキュメント」を週刊誌に連載[6]。さらに1969年に創刊された雑誌『えろちか』(三崎書房)では編集長をつとめた[7]。以後は専ら性文化の研究に努め、多くのポルノ小説も翻訳した。

日本ジャーナリスト専門学校で翻訳作法を教え[5]池袋でバーを開いていた。

著書[編集]

  • 『危険な標的 ソネ・タツヤ無頼帖』(三一新書) 1964
  • 『危険とのデート ソネ・タツヤ点鬼簿』(三一新書) 1965
  • 『俺だけの埋葬簿』(芸文社) 1965
  • 『殺し屋を消せ 灰色の禁猟区』(久保書店) 1966
  • 『曾根達也無法ノート 危険猟区』(双葉新書) 1969
  • 『エロス美術館 東方の愛を探る』(三崎書房、バニーブックス) 1970、のち改題『アジアの秘画 東方の愛を探る』 1972
  • 『禁断の絵本 幻想と美と陶酔と』(ベストセラーズ) 1970
  • 『性教育の再検討 対談集』(みき書房) 1974
  • 『動物園』1 - 5(編著、ぎょうせい) 1982
  • 『アイアム・サイエンス 自然科学の勝手口 対談集』(日本コンサルタント・グループ) 1984.7
  • 『美食殺人倶楽部』(ベストセラーズ) 1989

「日本の郷土料理」[編集]

  • 『九州 (日本の郷土料理)』(石毛直道, 神崎宣武, 奥村彪生共編、ぎょうせい) 1986.4
  • 『北海道・東北 (日本の郷土料理)』(石毛直道, 神崎宣武, 奥村彪生共編、ぎょうせい) 1986.5
  • 『四国 (日本の郷土料理)』(石毛直道, 神崎宣武, 奥村彪生共編、ぎょうせい) 1986.7
  • 『東北 (日本の郷土料理)』(石毛直道, 神崎宣武, 奥村彪生共編、ぎょうせい) 1986.9
  • 『中部 (日本の郷土料理)』(石毛直道, 神崎宣武, 奥村彪生共編、ぎょうせい) 1986.11

翻訳[編集]

  • 『殺人稼業』(ブレット・ハリディ、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1961
  • 『あなたのミスはここにある』(ダイ・リース、産報、イーグル・ライブラリー) 1962
  • 『ビロードの爪』(ガードナー東都書房、世界推理小説大系第23) 1963
  • 『クランシー・ロス無頼控』(リチャード・デミング、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1963
  • 『堕落した天使 / うっかりもの連盟』(ワイルド / バー、東都書房、世界推理小説大系第24) 1964
  • 『沈黙部隊』(ドナルド・ハミルトン、早川書房) 1965、のち文庫
  • 『魔女を焼き殺せ』(A・メリット徳間書店、ワールドホラー・ノベルシリーズ) 1968
  • 『ダーリン』(ハリエット・デイムラー、フランス書院) 1974
  • 『明日なんかいらない』(ドン・エリオット、フランス書院) 1975
  • ビッグフット サルか?ヒトか?謎の巨人を求めて』(ピーター・バーン、金沢文庫) 1976
  • 『古代のアラン』(H・R・ハガード国書刊行会ドラキュラ叢書) 1977
  • 『覗き』(ロイ・カールスン、フランス書院) 1978、のちフランス書院ノベルズ 1983
  • 『快楽へのパスポート』(H・C・ホークス、フランス書院) 1979
  • パール傑作選』1(富士見ロマン文庫) 1979
  • 『生餌』(ロイ・カールスン、フランス書院) 1980.3
  • 『赤毛の女』(ピーター・ブルック、ロングセラーズ、ムックの本) 1980
  • 『奴隷になった女』(ピーター・ブルック、ロングセラーズ、ムックの本) 1980
  • 『熱い罠の女』(ピーター・ブルック、ロングセラーズ、ムックの本) 1980
  • 『バケツ一杯の空気』(フリッツ・ライバーサンリオSF文庫) 1980
  • 『歓ぶ』(ハリー・ベスト、フランス書院) 1981.7
  • 『プッシー・アニマル 写姦』(フレデリック・カー、フランス書院ノベルズ) 1981.11
  • 『あばずれ』(ロイ・カールスン、フランス書院) 1981.12
  • 『人類学者のクッキングブック』(ジェシカ・クーパー編、石毛直道共訳、平凡社) 1983.4
  • 『パール傑作選』3(富士見ロマン文庫) 1983
  • 『危険な抱擁』(D.v.ゾーレン、富士見ロマン文庫) 1983
  • 『診察室』(H・C・ホークス、フランス書院ノベルズ) 1983

カーター・ブラウン[編集]

  • 『墓を掘れ』(カーター・ブラウン、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1960
  • 『ハワイの気まぐれ娘』(カーター・ブラウン、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1962
  • 『女闘牛士』(カーター・ブラウン、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1963
  • 『男たらし』(カーター・ブラウン、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1964
  • 『宇宙から来た女』(カーター・ブラウン、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1968

「わくわく探検ブック」シリーズ[編集]

  • 『秘密のリサちゃん みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1991
  • 『フランキーと怪物くん みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1991
  • 『ローラの冒険旅行 みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1991
  • 『スージーの楽しい遊園地 みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1992
  • 『フレディの不思議な旅 みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1992
  • 『ヘクターのわんわん大行進 みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1992
  • 『おちゃめな魔女ウェンディ みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1992
  • 『サムのびっくり世界一周 みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1992
  • 『とびだせドナルド名探偵 みんなどこにいるのかな!?』(アンソニー・タラリコ、ワニマガジン社、わくわく探検ブック) 1992

脚注[編集]

  1. ^ 鏡明『ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた』(フリースタイル)P.361
  2. ^ a b 『禁断の絵本』(KKベストセラーズ)著者紹介
  3. ^ 小鷹信光「『マンハント』がおもしろかった頃…」『宝島』1978年9月号)
  4. ^ 鏡明『ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた』(フリースタイル)P.287 - 288
  5. ^ a b 権田萬治新保博久監修『日本ミステリー事典』新潮選書、2000年
  6. ^ 沖山黎二「著者についてひと言」(『エロス美術館 東方の愛を探る』カバー裏)
  7. ^ 鏡明『ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた』(フリースタイル)P.296 - 297