地理院地図

地理院地図(ちりいんちず)は、国土地理院が提供する、地図空中写真などが閲覧可能なサービスである[1]。2013年から公開が開始された[2][3]

WebGISの1つであり、Webブラウザ上で閲覧可能である[4]

機能[編集]

  • 地形図(標準地図とよばれる)や主題図土地条件図など)のほか、空中写真の閲覧ができる[1]
    • 空中写真については最新のものに限らず、過去の空中写真も閲覧が可能である[5]。このため、新旧の写真を比較することもできる[6]
  • 色別標高図、陰影起伏図、赤色立体地図なども閲覧可能である[3]
    • 地理院地図には「自分で作る色別標高図」機能があり、地域個別の状況に応じて各自で色・境界となる標高値を設定できる[7]
  • 作図機能を利用し、点や線、領域などの作図を行えるうえ、作図したデータをKMLまたはGeoJSON形式のファイルで保存することもできる[4]
  • 距離や面積の計測や、地図中への線や文字などの追加の作図を行うことができる[8]
  • 3Dで見ることもできる[9]

地理院タイル[編集]

地理院地図で提供される地図や空中写真のデータは、地理院タイルとよばれる[10]。地理院タイルは地理院地図に限らず、それ以外のシステムやアプリケーションでも利用可能である[10]。また、国土地理院コンテンツ利用規約に従って利用できる[11]

ただし、基本測量成果であり、一部の利用方法を除いて測量法に基づく国土地理院長への承認申請が必要なタイルが以下の通り[12]

  • 標準地図淡色地図 - 電子国土基本図および小縮尺地図。広域から詳細なものへ順に ズームレベル5 - 8、9 - 11、12 - 14、15 - 17、18の5段階の図尺がある[12]
  • English - 100万分の1までの小縮尺英語地図[12]
  • 数値地図25000(土地条件図)、火山基本図、宅地利用動向調査、20万分1土地利用図、湖沼図などの主題図[12]

以下のタイルは、出典の記載のみで、政府標準利用規約(第2.0版)(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの表示4.0 国際(CC-BY-4.0)と互換)に従い利用できる[12]

赤色立体地図地質図など、ほかの会社・機関から提供されており個別の許諾が必要なタイルもある[12]

ArcGISGoogle EarthなどのGISソフトウェアでも、地理院タイルを利用することができる[13]。例えば、ArcGISの場合では、ESRIが提供する「地理院地図対応ツール」を利用することが可能である[13][2]

地理院地図Vector[編集]

地理院地図Vectorでは、ベクターデータとして地図データが配信されている[14]。これにより、利用者が自由に地図をデザインして地図表現ができるようになった[14]。すなわち、地図上で必要な項目だけを表示したり、表示項目の色や太さなどを自由に変更することができる[9]

2019年7月29日から試験公開が開始され[15]、当時は公開範囲が関東地方の一部に限られていたが、2020年3月19日から日本全国が公開対象地域となった[16]

また、GitHubでソースコードも公開されている[14]

ベース・レジストリとしての位置付け[編集]

2020年12月21日に日本初となるデータ戦略である「データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ」の別紙として添付されたベース・レジストリ・ロードマップにおいて、ベース・レジストリの重点整備対象候補として『地理院地図』が挙げられ[17]、その後2021年5月26日に地理院地図の基礎コンテンツである電子国土基本図がベース・レジストリとして指定される[18]基礎となった。

脚注[編集]

  1. ^ a b 野間ほか 2017, p. 157.
  2. ^ a b 橋本 2016, p. 159.
  3. ^ a b 平井 2019, p. 13.
  4. ^ a b 野間ほか 2017, p. 162.
  5. ^ 国土地理院 地理空間情報部 情報普及課 2019, p. 233.
  6. ^ 芹澤ほか 2022, p. 4.
  7. ^ 芹澤ほか 2022, pp. 3–4.
  8. ^ 芹澤ほか 2022, pp. 4–5.
  9. ^ a b 芹澤ほか 2022, p. 6.
  10. ^ a b 国土地理院 地理空間情報部 情報普及課 2019, p. 236.
  11. ^ 地理院地図|地理院タイル一覧”. maps.gsi.go.jp. 2023年1月9日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j k 地理院タイル一覧」、国土地理院 地理院地図、2023年1月17日閲覧
  13. ^ a b 野間ほか 2017, p. 159.
  14. ^ a b c 青木 2019, p. 41.
  15. ^ 自分でデザインしたウェブ地図を簡単に作成! ~学校教育や防災対応を地図で支援~”. 国土地理院 (2019年7月29日). 2020年9月17日閲覧。
  16. ^ ウェブ地図を自分でデザイン!~地理院地図Vector(仮称)を全国データ公開~”. 国土地理院 (2020年3月18日). 2020年9月17日閲覧。
  17. ^ デジタル・ガバメント閣僚会議 (2020年12月21日). “ベース・レジストリ・ロードマップ” (PDF). p. 15. 2022年2月16日閲覧。
  18. ^ 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 (2021年5月26日). “ベース・レジストリの指定について” (PDF). p. 4. 2022年2月16日閲覧。

参考文献[編集]

  • 青木和人「地理院地図Vector」『ESTRELA』第307号、2019年、40-43頁。 
  • 国土地理院 地理空間情報部 情報普及課「地理院地図を使ってみよう」『情報の科学と技術』第69巻第6号、2019年、232-237頁。 
  • 芹澤由尚、宇根寛、佐藤壮紀、藤村英範 著「地理院地図で知る日本」、地理情報システム学会 教育委員会 編『改訂版 地理空間情報を活かす 授業のためのGIS教材』古今書院、2022年、2-7頁。ISBN 978-4-7722-5341-3 
  • 野間晴雄香川貴志土平博山田周二河角龍典小原丈明『ジオ・パルNEO 地理学・地域調査便利帖』(第2版)海青社、2017年。ISBN 978-4-86099-315-3 
  • 橋本雄一『四訂版 GISと地理空間情報 -ArcGIS 10.3.1とダウンロードデータの活用-』古今書院、2016年。ISBN 978-4-7722-4192-2 
  • 平井史夫「授業で活かせ! ネット地図」『地理』第64巻第9号、古今書院、2019年、12-21頁。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]