双身毘沙門天

双身毘沙門天立像(岐阜県長福寺)

双身毘沙門天[1]とは仏教における天部の一尊。二尊の毘沙門天が背中を合わせて立っている姿で表される。

片方が毘沙門天で、片方が吉祥天女であると言われている(諸説あり)。

「阿娑縛抄[2]」などによると「福徳法」「敬愛法」の本尊とされるが、類例は少ない。

解説[編集]

岐阜・長福寺の銅製双身毘沙門天立像

天台宗由来の仏尊で、祀ることの難しさは聖天尊(歓喜天)と双璧を成す秘仏とされる。

立像が主で、平安時代・12世紀にさかのぼるものとしては、木造(浄瑠璃寺・馬頭観音立像胎内仏)・東大寺(勝敵毘沙門天[3])や銅製(岐阜長福寺[4]・銅製双身毘沙門天立像)のものがあるが、近世に降る作例を含めても、十数例程しか確認されていない。[5]

背中合わせで片方は合掌した手を胸前に構え、輪宝を持ち、もう一方は合掌した手を下方に向け腹前に構え、独鈷杵を持ち、牙が伸びて脇の下をくぐり相手方の牙と合体している場合が多い。

その効験は多岐に及び、戦勝祈願の懐守り仏や、調伏[6]、信仰心を寄せる者の願いを叶えると秘仏として浴油法も行われる。

真言:「オン・シチロクリ・ソワカ[7]」「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」

脚注[編集]

  1. ^ 双身毘沙門天小像の諸相. 法蔵館. (2003/12). p. 1 
  2. ^ 第2版, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,精選版 日本国語大辞典,世界大百科事典. “阿娑縛抄とは”. コトバンク. 2021年11月28日閲覧。
  3. ^ limer (2020年2月8日). “毘沙門天 -北方鎮護のカミ-(奈良国立博物館) | 奈良寺社ガイド”. 2021年11月28日閲覧。
  4. ^ 多治見 青龍山長福寺”. 長福寺. 2021年11月22日閲覧。
  5. ^ The Kyoto National Museum Bulletin 淺湫毅『学叢』京都国立博物館、2021年第42号、107頁。
  6. ^ 小項目事典, 日本大百科全書(ニッポニカ),精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,ブリタニカ国際大百科事典. “調伏とは”. コトバンク. 2021年11月28日閲覧。
  7. ^ 『印と真言の本』. 学研. (2004). p. 126 

参考文献[編集]

  • 奈良国立博物館 特別展 毘沙門天 ー北方鎮護のカミー

外部リンク[編集]

Xユーザーの中日新聞さん: 「https://t.co/JBhRW2PPcG 12世紀ごろに作られたとみられる銅製の双身毘沙門天立像が、岐阜県多治見市の長福寺で見つかった。2体の毘沙門天が背中合わせにくっついており、銅製の立像の発見は全国で初めてとみられる。奈良国立博物館で2月4日から開催される特別展で展示される。 https://t.co/sgfm8WHn1n」 / X (twitter.com)