はくちょう座

はくちょう座
Cygnus
Cygnus
属格 Cygni
略符 Cyg
発音 英語発音: [ˈsɪɡnəs]、属格:/ˈsɪɡnaɪ/
象徴 the Swan or The Northern Cross
概略位置:赤経 20.62
概略位置:赤緯 +42.03
正中 9月10日21時
広さ 804平方度[1]16位
バイエル符号/
フラムスティード番号
を持つ恒星数
84
3.0等より明るい恒星数 5
最輝星 デネブ(α Cyg)(1.25
メシエ天体 2
確定流星群 はくちょう座α流星群
はくちょう座κ流星群
隣接する星座 ケフェウス座
りゅう座
こと座
こぎつね座
ペガスス座
とかげ座
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はくちょう座(はくちょうざ、白鳥座、Cygnus)は、トレミーの48星座の1つ。北天の有名な星座の1つである。この星座は天の川の上にを広げ、からに向けて飛ぶ形をしている。日本ではの代表的な星座の1つである。

十字の形に星が並んでいることから、南十字星と対比する形で北十字星[2](北十字[3])やノーザンクロス[3] (Northern Cross[4]) と呼ばれる。もっとも十字形の下端の星アルビレオはかなり離れた3等星であるため、ここまで十字の縦軸を届かせるには少し眼を強いなければならない。そのため中国では十字に結んでいないが、日本ではジュウモンジサマと呼ぶ地方が存在する[5]

α星は、全天21の1等星の1つであり、デネブと呼ばれる。デネブと、こと座のα星ベガわし座のα星アルタイルの3つの1等星で、夏の大三角と呼ばれる大きな二等辺三角形を形成する[6]

主な天体[編集]

恒星[編集]

はくちょう座には明るい恒星がいくつかある。1等星のα星(デネブ)以外に、γ星[7]、ε星[8]の2つの2等星がある。

主な恒星[編集]

以下の恒星には、国際天文学連合によって正式な固有名が定められている。

  • α星:デネブ (Deneb) は、はくちょう座で最も明るい恒星で、全天21の1等星の1つ[9]。この星は約1,200〜1,650光年も離れているにもかかわらず、明るい1等星である[9]。この白色超巨星[9]は白鳥の尾部、北十字の上部の端にある。
  • β星:アルビレオ (Albireo) は、白鳥の口の部分に当たる。この星は、小さな望遠鏡でもよく見える、美しい二重星である。
  • γ星:サドル (Sadr)
  • δ星:A星にFawarisという固有名が付けられている。
  • ε星:かつてギェナー (Gienah) と呼ばれていたが、それがからす座γ星の固有名とされたため、同じ語源の Aljanah が正式な固有名とされた。
  • π1:Azelfafage

変光星[編集]

有名な変光星としては、以下がある。

その他の恒星[編集]

星団・星雲・銀河[編集]

天の川に位置するので、多くの星団星雲がはくちょう座の中にある。

デネブからγ星付近にかけて、北の石炭袋 (Northern Coal Sack) [11]と呼ばれる大規模な暗黒星雲が存在する。地球からは約2600光年に位置するとされ、その中では若い星が生まれつつある。

その他[編集]

由来と歴史[編集]

アラトスは単に「鳥」を意味する Ὄρνις と呼んでおり、半世紀ほど後の偽エラトステネスによって「白鳥」とされた[4]。しかし、偽エラトステネスから350年ほど後のクラウディオス・プトレマイオス(トレミー)はアラトスに倣って Ὄρνις としている[4]

アウクスブルク生まれの17世紀の天文学者法学者ユリウス・シラー英語版は、著書『キリスト教星図 (Coelum Stellatum Christianum)』の中で、十字架を抱いた聖ヘレナの姿に置き換えて描いた[12][13]

神話[編集]

星図カード集『ウラニアの鏡』に描かれたはくちょう座(中央)。ほかにとかげ座(左)、こと座(右)、こぎつね座(下)

ギリシア神話では、はくちょう座に関する異なるいくつかの神話が伝わっている。

最も有名なのは、大神ゼウス白鳥に化けた姿というものである[4]。偽エラトステネスは、ゼウスに追われガチョウに姿を変えて逃げようとした女神ネメシスを捕えるため白鳥に変身したゼウスの姿であるとした[4]ヒュギーヌスは、ネメシスを油断させるために、鷲に追われた白鳥の姿に化けたゼウスであるとしている[4]。いずれの物語でも、ネメシスは1つの卵を産み、その卵がスパルタの女王レーダーの元に届けられ、卵からヘレネーが産まれたとしている[4]

ゲルマニクスの伝える物語では、卵を産むのはネメシスではなくレーダーとなっている[4]。ゼウスはスパルタの王テュンダレオースの妃レーダーに恋し、白鳥に化けて接近した[4]。白鳥が去ったあと、レーダーは2つのを産み落とし、その1つからはふたご座の兄弟ポリュデウケース(ポルックス)とカストールが生まれ、もう1つからはヘレネークリュタイムネーストラーの姉妹が生まれた[4]

別の説によれば、太陽の馬車を持ち出したパエトーンゼウスの怒りにふれてエリダヌス川エリダヌス座)に落ちたとき、彼の姿を探し回る友人キュクノスを、パエトーンの父神アポローンヘーリオスとも)が、天に上げてはくちょう座にしたという[13]

またある説では、の天才オルペウスこと座を参照)が死んだときに、音楽の神アポローンが天に上げてはくちょう座にしたという。[要出典]

なお、中国星図では、ほぼ白鳥の翼にあたる部分を大きな船の形に結んで天津と名付け、天の川の中の渡し場と見ているが、七夕鵲の橋の伝説と直接の関係は無い[14]

はくちょう座に由来する事物[編集]

ギャラリー[編集]

出典[編集]

  1. ^ 星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
  2. ^ はくちょう座”. 美星天文台. 2015年6月18日閲覧。
  3. ^ a b 博物館通信Vol2”. 岡山天文博物館 (2001年6月). 2015年6月18日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j Ian Ridpath. “Star Tales - Cygnus”. 2015年6月18日閲覧。
  5. ^ 野尻抱影「じゅうもんじぼし・あまのがわぼし はくちょう座」『日本の星・星の方言集』中央公論社、1976年7月10日、104頁。ISBN 9784122003507 
  6. ^ 夏の星空を楽しもう”. AstroArts. 2013年5月11日閲覧。
  7. ^ SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME SADR. 2013年1月23日閲覧。
  8. ^ SIMBAD Astronomical Database”. Results for LHS 5358b. 2013年1月24日閲覧。
  9. ^ a b c SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME DENEB. 2013年1月16日閲覧。
  10. ^ 巨大画像で見る、巨大なはくちょう座ループ”. AstroArts (2012年12月21日). 2015年6月18日閲覧。
  11. ^ 星形成レガシープロジェクト VII. 北の石炭袋のミリ波観測”. 国立天文台野辺山宇宙電波観測所. 2015年6月18日閲覧。
  12. ^ Coelum Stellatum Christianum. - Page 47. Constellation IX. Star Map. St. Helen formerly Cygnus.”. Linda Hall Library. 2017年9月11日閲覧。
  13. ^ a b 野尻抱影「夏の星座」『星座の話』(改訂2版)偕成社、1981年2月、152-157頁。ISBN 4037230100NCID BA31860186 
  14. ^ 野尻抱影「7月14日「鵲の橋」」『星三百六十五夜(下)』中央公論社、1978年2月10日、28頁。ISBN 9784122005150 

関連項目[編集]

座標: 星図 20h 37m 12s, +42° 01′ 48″