ベア級カッター

ベア級カッター
基本情報
種別 中距離用カッター (WMEC)
就役期間 1983年 - 就役中
前級 リライアンス級
次級 アーガス級英語版
要目
排水量 軽荷1,200トン / 満載1,780トン
全長 82.3 m (270 ft)
最大幅 11.58 m
吃水 4.11 m
主機 アルコ18V-251ディーゼルエンジン×2基
推進器 可変ピッチ・プロペラ×2軸
速力 19.5ノット
航続距離 10,250海里 (12kt巡航時)
乗員 士官11名+下士官兵89名+航空要員16名
兵装62口径76mm単装速射砲×1基
M2 12.7mm単装機銃×2基
搭載機 HH-65救難ヘリコプター×1機
C4ISTAR SCCS-270戦術情報処理装置
FCS Mk.92 mod.1 艦砲用
レーダー ・AN/SPS-64(V)1 航法用
・AN/SPS-64(V)6 航法用
電子戦
対抗手段
AN/SLQ-32(V)2電波探知装置
Mk.137 6連装デコイ発射機×2基
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ベア級カッター(ベアきゅうカッター、英語: Bear-class cutters)は、アメリカ沿岸警備隊の中距離用カッター英語: Medium Endurance Cutter, WMEC)の艦級。本級の艦名は、いずれも著名なカッターからとられていることから、ジェーン海軍年鑑やアメリカ海軍協会(USNI)ではフェイマス型(Famous-class)と称される。1977年度計画で建造が開始され、1983年より13隻が順次に就役した[1][2][3][4]

来歴[編集]

本級はもともと、1930年代に建造されたトレジャリー型英語版の更新用として計画された。1977~1979年度計画で2隻ずつ、1980年度計画で3隻、1981年度計画で1隻、1982年度計画で3隻が発注された。このうち、1979年度以降の建造分については、1980年8月29日に一度はタコマ造船所が受注したものの、デレクター造船所が不服を訴えて提訴したことから、1981年1月17日に同造船所が受注し直す騒ぎとなり、計画の遅延を来した[3][4]

設計[編集]

船型は長船首楼型を採用した。大西洋の過酷な海況でも活動できることが求められたことから、L/B比が類を見ないほど小さい幅広の船体となっている[3]。ただし排水量のわりに過積載であり、当初は耐航性に問題があり、青波による破損を避けるため、31番砲は0.76メートル嵩上げされた[1]。また減揺装置としてフィンスタビライザーを後日装備している[4]

主機としては、リライアンス級(210フィート級)の後期建造艦と同系統で、気筒数をV型18気筒に増やしたアルコ18V-251ディーゼルエンジンを搭載した[1][3][4]

電源としてはキャタピラーD398ディーゼルエンジンを原動機とするKATO社製の発電機(出力475キロワット)3基を備えている[4]

装備[編集]

本級は、沿岸警備隊の艦艇としては初めて、建造された当初より統合された指揮管制システムを備えており、戦術情報処理装置としてSCCS-270(Shipboard Command Control System)、統合化船橋システムとしてCOMDAC(Command Display and Control)を備えている。SCCS-270はJMCISの技術に準拠して、フリゲート統合艦載戦術システムと同様に民生用のコンピュータを利用して構築されている。武器管制機能とは連接されていないものの、リンク 11による戦術データ・リンクに対応するほか、1992年より、海軍の衛星通信システムであるOTCIXSにも対応した[3][5]

艦砲としては、艦首に62口径76mm単装速射砲(Mk.75; オート・メラーラ 76mmコンパット砲)を装備し、Mk.92 mod.1射撃指揮装置による管制を受けた。これは1973年度計画より建造を開始した海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートに準じた構成であり、後にはより大型のハミルトン級カッターにも近代化改装の際に搭載された[3]。また近距離用として、小火器用のピントルマウント6ヶ所が配置されており、M2 12.7mm機銃またはMk.19 40mm自動擲弾銃を搭載できる[1][4]

電子戦装備としては、電子戦支援用としてAN/SLQ-32(V)1電波探知装置(後に(V)2に更新)、電子攻撃用としてMk.137 6連装デコイ発射機2基を備えている[1][3][4]

船楼甲板後半部はヘリコプター甲板とされており、伸縮式の格納庫には中型ヘリコプター1機を収容できる。なお本級は、ヘリコプターの搭載能力を持つ唯一の中距離カッターであった[3]

また、有事にはファランクス 20mmCIWSハープーン艦対艦ミサイル(SSM)の4連装発射筒2基を搭載する余地が確保されていた。固有の対潜兵器は備えられていないものの、航空艤装はSH-60B LAMPS Mk.IIIヘリコプターの運用に対応可能であった。このことから、1988年には、「エスカナーバ」にAN/SQR-18戦術曳航ソナー(TACTASS)LAMPS用データ・リンク、AN/SQR-17ソナー情報処置装置が搭載され、対潜護衛艦としての改装・運用試験が行われた[2]。ただし冷戦終結を受けて、これらの追加武装の計画は放棄されたものと見られている[3][4]

同型艦[編集]

WMEC-910「セティス」
 
「和星」(台湾1,800t型)
# 艦名 起工 就役 母港
WMEC-901 ベア
USCGC Bear
1979年8月 1983年2月 ポーツマス
WMEC-902 タンパ
USCGC Tampa
1980年4月 1984年3月
WMEC-903 ハリエット・レーン
USCGC Harriet Lane
1980年10月 1984年9月
WMEC-904 ノースランド
USCGC Northland
1981年4月 1984年12月
WMEC-905 スペンサー
USCGC Spencer
1982年6月 1986年6月 ボストン
WMEC-906 セネカ
USCGC Seneca
1982年9月 1987年5月
WMEC-907 エスカナーバ
USCGC Escanaba
1983年4月 1987年8月
WMEC-908 タホーマ
USCGC Tahoma
1983年6月 1988年4月 キタリー
WMEC-909 キャンベル
USCGC Campbell
1984年8月 1988年8月
WMEC-910 セティス
USCGC Thetis
1989年6月 キーウェスト
WMEC-911 フォワード
USCGC Forward
1986年7月 1990年8月 ポーツマス
WMEC-912 リガーレ
USCGC Legare
WMEC-913 モホーク
USCGC Mohawk
1987年6月 1990年3月 キーウェスト

なお、中華民国海巡署は、本級の設計を元に、艦載機運用能力とバーターで高速艇4隻を搭載した巡視船として1,800t型巡防救難艦を建造しており、「和星」(CG101 Ho Hsing)、「偉星」(CG102 Wei Hsing)の2隻を配備している。

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e Bernard Prezelin (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. p. 893. ISBN 978-0870212505 
  2. ^ a b Robert Gardiner, ed (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. p. 633. ISBN 978-1557501325 
  3. ^ a b c d e f g h i Stephen Saunders, ed (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. p. 964. ISBN 978-0710628886 
  4. ^ a b c d e f g h Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. pp. 911-912. ISBN 978-1591149545 
  5. ^ Mike Raber (1996年6月14日). “The Coast Guard Shipboard command and control system and its role in future joint military operations” (PDF) (英語). 2017年8月29日閲覧。

関連項目[編集]