ハムレット (チャイコフスキー)

音楽・音声外部リンク
演奏会用序曲「ハムレット」を試聴する
Tchaikovsky - Hamlet - ギンタラス・リンケヴィチウス(Gintaras Rinkevičius)指揮エルサレム交響楽団による演奏。エルサレム交響楽団公式YouTube。
P.Tchaikovsky 'Hamlet' - デニス・ヴラセンコ(Denis Vlasenko)指揮”新ロシア”国立交響楽団による演奏。指揮者自身の公式YouTube。
Tchaïkowsky - Hamlet Op.67 - カルロス・パイタ指揮ロシア・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。指揮者自身の公式YouTube。

幻想序曲ハムレット』(ロシア語: Гамлет)作品67aは、ピョートル・チャイコフスキーが作曲した演奏会用序曲シェイクスピアの戯曲『ハムレット』を題材としている。なお、チャイコフスキーは『ハムレット』上演のための劇付随音楽も作品67bとして作曲している。

概要[編集]

当作品の献呈を受けたグリーグ《1888年頃撮影》

交響曲第5番とほぼ同じ年の1888年にフローロフスコエにて作曲された。順番としては、8月に交響曲第5番が完成され、その後直ちにこの『ハムレット』に着手しようとしたが、チャイコフスキーの頭の中では、両者が併存していた時期もあったと思われる。『ハムレット』のスケッチは6月22日に一応完成したが、この後チャイコフスキーは交響曲第5番のオーケストレーションに専念し、交響曲の完成後に再び『ハムレット』の浄書に取りかかったといわれている。

シェイクスピアを題材とする、いずれも《幻想序曲》と銘打たれたチャイコフスキーの作品は、初期の『ロメオとジュリエット』(1869年)が有名で、他に『テンペスト』(1873年)がある。この『ハムレット』は、1888年11月24日サンクトペテルブルクで、作曲者自身の指揮によって初演された。また、当日は交響曲第5番も再演されている。

なお、この曲はグリーグ献呈された。チャイコフスキーは1888年1月にライプツィヒでグリーグに逢い、のちに2人は深い共感で結ばれた。

劇付随音楽[編集]

音楽・音声外部リンク
付随音楽「ハムレット」を試聴する
Tchaikovsky Hamlet Incidental Music - ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団による演奏《序曲部を含めた抜粋で》。ロシア・ナショナル管弦楽団公式YouTube。

チャイコフスキーは1891年に『ハムレット』の上演のための付随音楽(作品67b)を作曲した。作曲の依頼は作品67aの作曲以前から受けていたのであるが、その仕事が滞っている間に、先に演奏会用序曲として作品が成立することになった。しかし、付随音楽の序曲には作品67aの短縮版を作って用いている。なお、この付随音楽には他に、交響曲第2番第2楽章の行進曲、交響曲第3番第2楽章、弦楽のためのエレジーなどの旧作が転用されている。

楽器編成[編集]

演奏時間[編集]

作品67a:約18分(原典版)、作品67b(付随音楽)の短縮版:約10分。

構成[編集]

楽曲全体には様々な動機が出てくるが、重要なのは冒頭の主題(ハムレット自身を暗示する)と、3分の1ほど進んでから出てくるオーボエによるロシア民謡風のもの(オフィーリアを表す)、そして木管が表情豊かに出す「愛の主題」の3つで、最後は原典版のみ fffff のクライマックスがあり、その後に『ロメオとジュリエット』のように葬送行進曲ふうになる。『ロメオとジュリエット』ほどのものではないが、この『ハムレット』は、チャイコフスキー特有のオーケストレーションの巧みさとメロディの美しさで、聴き手に感銘を与える。

関連作品[編集]

チャイコフスキーの《幻想序曲》

外部リンク[編集]