ナンヨウツバメウオ

ナンヨウツバメウオ
成魚
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
: マンジュウダイ科 Ephippidae
: ツバメウオ属 Platax
: ナンヨウツバメウオ
P. orbicularis
学名
Platax orbicularis (Forsskål1775)
シノニム[2]
  • Chaetodon orbicularis Forsskål, 1775
  • Chaetodon vespertilio Bloch, 1787
  • Platax vespertilio (Bloch, 1787)
  • Platax ehrenbergii G. Cuvier, 1831
  • Platax blochii G. Cuvier, 1831
  • Platax guttulatus G. Cuvier, 1831
英名
orbicular batfish 等(本文参照)

ナンヨウツバメウオ(学名:Platax orbicularis)は、マンジュウダイ科に属するの一種[3]インド太平洋に分布するが、西大西洋への侵入が確認されている。

分類[編集]

本種は1775年にフィンランド探検家東洋学者博物学者であるPeter Forsskålによって Chaetodon orbicularis として記載された。タイプ産地はサウジアラビアジッダである。

種小名は「円形」という意味で、成魚の円状の体形に由来する[4]。英名は様々で、orbicular batfish、cooper batfish、circular batfish、orbiculate batfish、round batfish、narrow-banded batfish、orbic batfishなどがある。

形態[編集]

体長は最大60cm[2]。体は側扁した円形[5][6]。背鰭は5棘34 - 39軟条から、臀鰭は3棘25 - 29軟条から成る[2]。鱗は小さく細かく、顔には少ない[7]。同属種のアカククリ程では無いが、吻部が少し突出する[7]。成魚と幼魚では姿が大きく異なる。

成魚の体色はくすんだ銀色で、眼を通る位置と頭部後方、体側面後方、尾鰭前部に暗い茶色の帯が入る[6][8]。腹鰭前部、胸鰭、背鰭上部と臀鰭前部、尾鰭中央部は黄色[8]。背鰭上部、臀鰭下部、尾鰭後部は黒く縁どられる[8]。体側面には小さな黒点がある[8]

幼魚は背鰭、臀鰭、腹鰭が細長く、成長とともに丸みを帯びてくる[6]。幼魚の体色は全体的に赤褐色で、眼を通る暗色帯が一本あり、胸鰭と尾鰭の大部分は透明である[6][8]。この体色は枯葉に擬態していると考えられている[8]。体側面には黒く縁どられた小さな白い点をもつ[6]

幼魚

分布・生態[編集]

南アフリカマダガスカルマスカリン諸島セーシェル東アフリカからインド太平洋に分布し、分布域は紅海からペルシア湾を通って、ミクロネシアトゥアモトゥ諸島に至り、日本オーストラリア南部から北部まで広がる[1][2][8]。西大西洋のフロリダ州沖で記録されており、おそらく放流されたものと考えられている[5]

オーストラリアでは西オーストラリア州シャーク湾から北部まで、南は東海岸のシドニー付近まで発生し、ティモール海アシュモア・カルティエ諸島のほか、インド洋東部のクリスマス島ココス諸島でも見られる[8]

日本では幼魚が岩手県以南の太平洋沿岸、鳥取県瀬戸内海で見られ、漁港などで枯葉擬態し浮遊している姿も観察される[6][8][9]。成魚は琉球諸島など比較的温暖な地域でよく見られる。

成魚は単独または数匹で、水深10 - 25 mの沿岸部のサンゴ礁岩礁砂地で生活する[8]。稀に大規模な群れを作る[8]。幼魚は単独または数匹で生活し、沿岸部の漁港やマングローブ林、サンゴ礁で見られる。藻類無脊椎動物、小魚を捕食する雑食[8]

雌は全長30 cm程で性成熟する[1]。繁殖は満月の日の日暮れに行われ、雌が直径平均1.3 mmのを75000 - 150000個産み、24時間後に全長平均3.7 mmの稚魚が孵化する[10]。稚魚はプランクトンを捕食し、18日ほどで全長1.5 cmに成長する[10]

人間との関係[編集]

日本では普通食用とされないが、南太平洋地域では釣りを使った小規模漁業で漁獲され、食用となる[2]フランス領ポリネシア、特にタヒチでは養殖が行われている。幼魚はその特異な姿から観賞用として販売される[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d Carpenter, K.E.; Robertson, R. (2019). Platax orbicularis. IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T190152A53937753. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T190152A53937753.en. https://www.iucnredlist.org/species/190152/53937753 2024年1月11日閲覧。. 
  2. ^ a b c d e Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2023). "Platax orbicularis" in FishBase. February 2023 version.
  3. ^ WoRMS - World Register of Marine Species - Platax orbicularis (Forsskål, 1775)”. www.marinespecies.org. 2023年5月7日閲覧。
  4. ^ Order ACANTHURIFORMES (part 2): Families EPHIPPIDAE, LEIOGNATHIDAE, SCATOPHAGIDAE, ANTIGONIIDAE, SIGANIDAE, CAPROIDAE, LUVARIDAE, ZANCLIDAE and ACANTHURIDAE”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (2021年1月12日). 2024年1月11日閲覧。
  5. ^ a b Platax orbicularis (Forsskål, 1775)”. Nonindigenous Aquatic Species Database, Gainesville, FL. U.S. Geological Survey (2023年). 2024年1月11日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 中坊(2018).
  7. ^ a b Shorefishes - The Fishes - Species”. biogeodb.stri.si.edu. 2023年5月7日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l Platax orbicularis” (英語). fishesofaustralia.net.au. 2023年5月7日閲覧。
  9. ^ 丈, 浜橋 (2021). “兵庫県神戸市から得られた瀬戸内海初記録のナンヨウツバメウオ”. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan 15: 38–40. doi:10.34583/ichthy.15.0_38. https://www.jstage.jst.go.jp/article/ichthy/15/0/15_38/_article/-char/ja/. 
  10. ^ a b Platax orbiculaire • Platax orbicularis • Fiche poissons” (フランス語). Fishipedia. 2023年5月7日閲覧。

参考文献[編集]

  • 中坊徹次『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年、432頁。ISBN 978-4-09-208311-0 

関連項目[編集]