セマルグル

セマルグル

セマルグル[1](Semargl。ウクライナ語: Симаргл, Семаргл、またはシマルグル (Simargl))は、スラヴ神話である。グリフォンに似た姿で表現されている[2]

概要[編集]

セマルグルの名前は、アヴェスター語パフラヴィー語ペルシア語で「聖なる鳥」を意味する単語に由来している[2]ウラジーミル1世によるキリスト教導入まで東スラヴ人によって信奉され続けていた。キエフリャザンで見つかった12〜13世紀頃のものとされる銀製の腕輪には、体が鳥と動物の要素の入り交じった生き物が彫刻されたものがあるが、一部の研究者はその生き物をセマルグルだと考えている。その生き物は、イラン神話に登場するシームルグに似ているとする意見もある[3]

キエフの丘に祀られた神々の1柱であり[4]、しばしば女神モコシと関連付けられている。つまり、大女神に寄り添いその守護者でもある聖獣の類であるとか、大女神が「畑」に撒いた種子を神格化したものであるなどといわれ、農耕と植物の生育にかかわる神だとされる[3]。一方、寒気と霜の神という説もある[5]

これとは逆にその名を「七つの頭」と解して、ペルーンダジボーグモコシストリボーグホルスなどの7柱の神を統合させた存在であるとする説もある[6]

脚注[編集]

  1. ^ 伊藤 (2002) ではセマルグル中堀 (2014) ではセマールグルワーナー,斎藤訳 (2004)では シマリグル清水 (1995) ではシマルィグル
  2. ^ a b 中堀 (2014), p.300.
  3. ^ a b ワーナー,斎藤訳 (2004), p.22.
  4. ^ 清水 (1995), p.49.
  5. ^ 清水 (1995), p.47.
  6. ^ 伊藤 (2002), p.54.

参考文献[編集]

  • 伊東一郎「スラヴの神話伝説」『世界の神話伝説総解説』吉田敦彦他共著(改訂増補版)、自由国民社〈Multibook〉、2002年7月、51-61頁。ISBN 978-4-426-60711-1 
  • 清水睦夫 著「ロシア国家の起源」、田中, 陽兒、倉持, 俊一、和田, 春樹 編『ロシア史1:9世紀-17世紀』山川出版社〈世界歴史大系〉、1995年9月。ISBN 978-4-634-46060-7 
  • 中堀正洋 著「セマールグル」、松村, 一男、平藤, 喜久子、山田, 仁史 編『神の文化史事典』白水社、2013年2月、300頁。ISBN 978-4-560-08265-2 
  • ワーナー, エリザベス『ロシアの神話』斎藤静代訳、丸善〈丸善ブックス 101〉、2004年2月。ISBN 978-4-621-06101-5