スペンサー (衣服)

海軍等で使われるスペンサー

スペンサー (Spencer) は、1790年代に現れた、燕尾服の尾の部分を切り取った形状をもつ、もともとはウール製の外套である。着丈はまでと短く、男性用のダブル(両前)合わせのジャケットとして、長い燕尾服を着用した上に着重ねるものであった。

名称の由来となったスペンサー伯爵ジョージ・スペンサーのように、軍関係の勲章をあしらうのが最も正統な、お洒落な着こなしとされていた。一説によれば、スペンサーは燕尾服を来て暖炉のそばに立っていて、尾の部分を焦がしてしまい、その部分を切り取ったことから、期せずして新しい流行を生み出したという[1]。別の説によれば、ある日、狩猟に出かけたスペンサーが、燕尾服の尾の部分が野イバラに引っかかってしまうのに苛立ち、途中で尾を切り取ってしまったのが由来であるという[2]

その後スペンサーは、1790年から1820年にかけてのイギリスの摂政時代 (British Regency)には、大西洋の両岸で女性のファッションとして人気が高まった[3]。当時のスペンサーは、今日のカーディガンと同じように着用され、着衣の腰の線の少し上までの長さの短いジャケットとして、着衣とは別物と分かるようになっていた[1]

女性が着用するスペンサー

スペンサーという名称は、19世紀まで続いたが、後にはより広く、短いジャケットやコート類であれば、どのようなものでもそう呼ぶようになっていった。なお、オーストラリアでは、スペンサーという言い方で、保温性の下着を指すことがある[4]

脚注[編集]

  1. ^ a b Thomas, Pauline Weston. “Regency Fashion History. 1800s Costume History”. Fashion-Era.com. 2012年4月13日閲覧。
  2. ^ Gottfred, J.. “Making a Man's Tailcoat”. Northwest Journal. 2012年4月13日閲覧。
  3. ^ Lord Scott. “An Introduction to Ladies' Fashions of the Regency Era”. Lord Scott. 2012年4月13日閲覧。収録の図:その1その2
  4. ^ Oxford English Dictionary, "Spencer n.2", 2006 online edition.

関連項目[編集]