コーチ

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ニューヨーク・ヤンキースジョー・トーリ監督(右端)とコーチ(左から右)ケビン・ロングロン・ギドリードン・マッティングリー

コーチ(英語: coach)とは、訓練指導する人、家庭教師監督などを意味する。本記事では主にスポーツの指導者としてのコーチについて扱う。

由来[編集]

「コーチ」という語は、ハンガリーコチ(Kocs)という町の名に由来する[1]。コチは四頭引きの四輪大型乗合馬車が走った最初の地であった[1]。そこから「人を目的地に運ぶ道具」がコーチであるとみたイギリス人学生が、スポーツ指導者をコーチと呼ぶようになったといわれている[1]

欧米では今日でも綴りや発音こそ異なるものの、鉄道車両バスなどを含めて、馬車に替わる乗り物が広く「コーチ」の名で呼称されている(英語版 Coachを参照)。

歴史[編集]

欧米[編集]

19世紀ごろのオックスフォード大学で、家庭教師チューター、tutor)を指すスラングに、このコーチ (coach) の語が用いられたことが、英語のコーチ (coach) に指導の意味が派生した契機となっている。スラングとされたのは、当時のイギリスの教育では枝むちが用いられていたためだが、「(人や荷物を)馬車で運ぶ」ことになぞらえて、名詞として指導指導員を指す正規の意味となっていった。また、「馬車で旅行する」という自動詞から「(家庭教師のもとで)勉強する/訓練する」という意味も生まれた。

コーチの動名詞形であるコーチング (coaching) は、馬の愛好家を中心に、riding horse などの語法に代わる乗馬四輪車両を牽引しない馬の疾駆)の俗語としても用いられるようになったが[2]、一方でアメリカ英語ではコーチをスポーツの指導の意味でも使うようになり、それが訳されることなく外来語として日本でも使用されるようになった。しかし、世界共通語ではなく、大陸欧州などの非英語圏では、もっぱらトレーナー (trainer) と語源を同じくする語が使用されている。その場合、トレーナーが日本語の監督を意味していることもある。

日本[編集]

スポーツ用語としてのコーチという言葉は、日本では20世紀の初頭ごろから使われ始めたとみられる。文献上での初見は、1921年に出版された「新しき用語の泉」で、『野球の用語で、走塁者を指揮し声援すること』として解説されている[3]。ただし、1906年4月16日付の東京日日新聞では『毎日々々コーチャーたるメリー氏は……』とあることから[3]、コーチャーという言葉の方が先に定着したことが窺える。

1930年に出版された婦女界社の「結婚心得帖」には、指導する立場の者が必ずしも信用の置けない例として、『家庭教師や水泳教師、さては庭球のコーチャーなどにも、相当仮面を被ってゐる者があります』とあることから[3]、この頃にはすでに野球以外の外来スポーツにも使用領域が広がっていたものの、コーチ(指導)とコーチャー(指導員)が明確に使い分けられ、いまだコーチャーの用法の方が主流を占めていたとみられる。

競技別[編集]

野球[編集]

庭球[編集]

蹴球 [編集]

役割[編集]

試合・大会[編集]

試合や大会、コンテストなどで、戦略戦術を実施するよう指導、指示したり、必要な際には選手交代などを行う。多くのコーチは過去に同じスポーツを選手として経験している場合が多い。

監督・経営[編集]

いくつかのプロスポーツでは、英語のヘッドコーチ監督またはゼネラルマネージャーと訳される。この場合のヘッドコーチには選手の採用や契約交渉、トレードや解雇などを決める権限がある場合も多い。

トレーニング[編集]

学校スポーツ、部活動などでは特に、コーチは選手に対し、技量やルール、戦術などを教え実行できるように訓練する。

スタッフ[編集]

大きなチーム、スポーツ組織では、コーチ部門にも多くのスタッフがいて、コーチをサポートする。ヘッドコーチの下に何人かのコーチがいて、特有の部門を受け持つ場合もある(野球のピッチング・コーチなど)。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 伊與田康雄. “スポーツ用語 面白い旅”. 筑波経済月報(2015年8月号). 2019年9月28日閲覧。
  2. ^ 日本の乗馬クラブや馬の牧場などでも用いられている。例:ベーシカル・コーチング・スクール(ただし、コーチング・スクールは和製英語であり、英語としては通じない)。
  3. ^ a b c 日本国語大辞典(第二版)「コーチ」、小学館

関連項目[編集]