グッバイ、ドン・グリーズ!

グッバイ、ドン・グリーズ!
Goodbye, DonGlees!
監督 いしづかあつこ
脚本 いしづかあつこ
出演者 花江夏樹
梶裕貴
村瀬歩
花澤香菜
田村淳ロンドンブーツ1号2号
指原莉乃
音楽 藤澤慶昌
主題歌 [Alexandros]Rock The World
撮影 川下裕樹
編集 木村佳史子
制作会社 MADHOUSE
製作会社 グッバイ、ドン・グリーズ!製作委員会
配給 KADOKAWA
公開 2022年2月18日
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 1億900万円[1]
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グッバイ、ドン・グリーズ!(英語:Goodbye, Don Glees!)は、いしづかあつこが監督・脚本を務める日本のアニメーション映画[2]KADOKAWAの配給で、全国200館の劇場にて2022年2月18日より公開された[3][4]

概要[編集]

本作は、アニメ『ノーゲーム・ノーライフ』や『宇宙よりも遠い場所』などで知られるいしづかあつこ監督・脚本のアニメ映画で、いしづかが初めて監督するオリジナル劇場アニメ作品となる[2][5]。『宇宙よりも遠い場所』でキャラクターデザイナーを務めた吉松孝博と再びタッグを組み、アニメーション制作はMADHOUSEが担当している[6][7][8]

企画が立ち上がった経緯について、いしづかは「それらしいきっかけはあまりない。いつも一緒に制作しているこのメンバーは、次はなにやる?みたいな会話が自然と出てくるチーム。いつの間にかふんわりあった。」と答えている[9]

キャラクターはストーリーが固まる前から"男の子3人組で"といしづかから指定されていた[8]。デザインした吉松はロウマ、トト、ドロップの3人の中で一番苦労したのはドロップだったと明かし、いしづかもラフから一番印象が変わったと言っている[8][10]。当初、3人は高校3年生の設定だったがキャラクターデザインの段階で吉松が年齢層を低く変更し、そのことでいしづかから足を短くしてほしいという要望が出た[8]。理由は鈍臭いシルエットにしたかったのと、リアリティを出したかったからだという[8]

コロナ禍のため、作品の舞台となったアイスランドにはロケーション・ハンティングに行くことができなかった[10]

あらすじ[編集]

田舎で実家の農業を手伝いながら高校に通うロウマ(鴨川朗真)はそのせいで周囲の同級生たちからは浮いており、同じく優等生だったせいで周囲と疎遠になっていたトト(御手洗北斗) と二人、「ドングリーズ」というチームを結成していた。ドングリーズは地元の夏祭りの際、祭りに参加せず二人きりで小さな花火大会をやることを約束しており、東京の高校に進学したトトも約束を果たすために帰省する。しかしそこにはロウマだけではなく、ドロップ(佐久間雫)という不思議な少年の姿もあった。ドロップの「見下ろしてやろうよ」という提案で、今年は夏祭りの花火を上空から撮影することとなり、三人は中古のドローンを購入する。
夏祭りの夜、ロウマが同級生から見下されていたことを知ったドロップの提案で、病院で習ったという化粧術を用いてドロップとトトは美女に変装、美女二人を伴ったロウマが颯爽と祭り会場を練り歩くことで周囲の目を引くという悪戯を敢行する。悪戯は大成功を収めたものの、購入した花火はどれも湿気っていて火がつかず、さらに空撮のために飛ばしたドローンはどこかに飛んでいってしまいドングリーズの花火大会は失敗に終わる。さらにその晩、山火事が発生してしまい、悪戯のせいで悪目立ちしたロウマたちが放火犯だという噂がクラス内のSNSで広がってしまう。
ドローンの空撮動画に三人の姿が映っていれば無実の証拠になるというドロップの提案から、ロウマとトトはGPSアプリを頼りに山奥へ飛んでいったドローンの捜索に向かう。しかし山火事のせいで国道は封鎖されており、さらに調査にあたる警察と消防を避けようと右往左往した挙げ句、三人は熊に遭遇。逃げ惑ううちに道を見失う。GPSも機能せず地図を頼りに道を進む中で、ドロップはロウマが一眼レフカメラを所持していることに気づく。ロウマは同級生のチボリ(浦安千穂里)と課外授業の写真撮影を通じて交流をしたことがあり、それをきっかけに写真撮影を始めたが、チボリがアイルランドに引っ越してしまったためそれっきりとなってしまい、トトがチボリのいるアイルランドに国際電話をかけ「15歳のお前の最後の冒険を見届けてやる!」と焚き付けるものの、結局何も言わずに通話を切ってしまったという過去があった。
やがて三人は沢に降りて滝を発見する。ドロップはそこでアイスランドで黄金の滝を見たことがあるという過去を語る。世界を切り裂くような深い渓谷の奥に黄金の滝があり、そこに一台の電話ボックスがあって、その電話ボックスからの電話に出ると自分の「宝物」がわかるのだという。荒唐無稽な話をトトは信用せず、さらに山道を進むうちに沢を落ちるなどして、結局元の滝にまで戻ってきてしまう。夜営をすることになったが準備不足で食料も足りず、カッとなったトトはドロップに八つ当たりをしてしまい、つい「ドングリーズなんてダサい」と馬鹿にしてしまう。その発言にショックを受けたロウマは一人その場を離れてしまった。
残されたトトは、ドロップに自分の過去を語る。塾をサボる形で抜け出してこの冒険に参加したこと。医者になることを目指して勉強して、田舎では優等生だったが、しかし東京に出たら決してそんなことはないと思い知らされたこと。ドロップはそんなトトを「今までも全部犠牲にしてきたんだろ。ロウマが自慢の友達だって言ってた」と励ます。トトはそんな自分をロウマだけは凄いヤツだと心の底から信じてくれているから、決して裏切れないことを泣きながら告げる。そこにロウマが戻ってきて、夜空に流星群が訪れたことを知らせ、三人は流星群の下で仲直りを果たす。ドングリーズと名付けたのはトトであり、意味はドングリではなく「ドント・グリーズ」つまり「喜びを知らぬ者たち」、教室の中で俯いている自分たちを指した、名詞に否定形をくっつけるという小学生の間違った英語による名付けだった。ロウマは間違いだらけの自分たちにお似合いの名前だと自嘲するが、しかしドロップは二人でいるときはとても楽しそうだから、やはりその名前は間違っていると笑う。そして自分たちが見ている満天の星空ですら、宇宙全体の中ではちっぽけな一部でしかないことから、三人は世界の広さを実感する。
翌朝、再びドローンを探して出発する三人だったが、その中のやり取りでロウマとトトは、ドロップが重篤な病を患っていることを察する。しかしドロップはそんなことを感じさせる素振りを一切見せず、ドローンを見つけた者に他の二人がコーラを奢ると宣言して走り出してしまう。ロウマとトトも慌てて後を追って走り出し、ドングリーズは山道を駆け抜けて行くが、道の先は水没していてぷっつりと途切れてしまっていた。あまりの事態にショックを受けたドロップは「こんな想いをさせたかったわけじゃない。こんなものを見せるために二人と仲良くなったわけじゃない」と泣き出してしまうが、ロウマは「自分たちはドロップと出会ったおかげでここまで来れた。この出会いが間違っていたみたいに言うな。15歳のお前の最後の冒険を見届けてやる!」と叱咤。三人は協力して新たな道を見つけ出し、ついにドロップがドローンを発見する。
帰り道はなだらかな一本道で、遠回りしたからこその冒険だったこと、そしてあの山には本来熊は生息していないはずだったことを三人は知り、熊を見たことが三人が冒険をした証拠となる。結局ドローンにはロウマたちの姿は記録されていなかったが、空撮画像に映る田舎の街はとてもちっぽけで、自分たちが囚われていた世界が大したものではなかったことを悟る。そしてロウマとトトはドロップにコーラを奢り、三人は各々の生活に戻っていった。周囲のクラスメイトたちもあっさり山火事のことを忘れ去り、目に見える変化といえばロウマがSNSを通じて、チボリとの交流を始めた程度。ロウマはチボリの撮影した美しい写真をきっかけに写真撮影を始めたが、チボリにその写真の構図を気づかせたのはロウマだったのだ。
やがてトトからドロップが死去したことを知らされたロウマは、ドングリーズの秘密基地を焼却し、そこにトトが駆けつける。だが秘密基地にはドロップから二人に当てた感謝の手紙と、二本のコーラが残されていた。燃える基地を前に二人はコーラを飲んでドロップの思い出を語り、トトは医者にならなければ助けようとする事さえできないのだと将来の進路に決意を固める。やがて二人は、コーラのラベルにドロップからのメッセージが描かれていることに気づく。それはアイスランドのどこかに眠る、ドロップがかつて見つけた「宝物」の在り処を示す宝の地図だった。ロウマとトトは二人でアイスランドに旅立ち、各地を旅して回った後、ついに深い渓谷とその奥にある黄金の滝、そして古びた電話ボックスを見つけ出す。電話ボックスのベルは鳴り響いており、二人は大慌てで電話ボックスに駆け寄るが、もう少しのところで間に合わずに電話は切れてしまう。
落胆する二人だが、そこで電話ボックスにドロップのメモと、電話ボックスの電話番号が残されていることに気づく。ドロップの宝物とは「15歳の最後の冒険を見届けてくれる友人」のことであり、電話ボックスの電話番号はアイルランドのチボリの電話番号と一つ違いだった。つまりあの時トトとロウマがかけた国際電話は、間違ってこの電話ボックスへと繋がり、たまたまそのタイミングで電話に出たドロップが「15歳のお前の最後の冒険を見届けてやる!」というメッセージを受け取っていたのだ。
ロウマとトトは出会うべくして出会った友人との冒険に思いを馳せながら、アイスランドの雄大な景色を見下ろし、世界というのは自分の意志でいくらでも見下ろすことのできる場所なのだと理解する。
そしてエンドロールとともにタイトルが表示される。グッバイ、ドン・グリーズ――さらば、喜びを知らぬ者たちよ。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

主題歌[編集]

Rock The World[14]
歌 - [Alexandros]

メディアミックス[編集]

月刊コミックジーン』(KADOKAWA)にて2021年11月号(2021年10月15日発売)から2022年3月号(2022年2月15日発売)まで、しんきが作画を担当する映画のコミカライズ版が連載された[15][16]。2022年には映画公開時期と前後してノベライズ作品が発売された。

  • 原作:Goodbye,DonGlees Project / 脚本:いしづかあつこ / 文:山室有紀子 『グッバイ、ドン・グリーズ!』KADOKAWA
    • 角川つばさ文庫版(本文挿絵:あきづきりょう) 2022年1月13日発売[17]ISBN 978-4-04-632145-9
    • 角川文庫版 2022年1月21日発売[18]ISBN 978-4-04-102651-9
  • 原作:Goodbye,DonGlees Project / 著者:庵田定夏 / 口絵・本文イラスト:青十紅 『グッバイ、ドン・グリーズ! オフショット』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2022年2月25日発売[19]ISBN 978-4-04-681285-8
  • 原作:Goodbye,DonGlees Project / 漫画:しんき『グッバイ、ドン・グリーズ!』 KADOKAWA〈MFコミックス ジーンシリーズ〉、2022年2月18日発売[20]ISBN 978-4-04-681081-6

出典[編集]

  1. ^ キネマ旬報』 2023年3月下旬特別号 p.34
  2. ^ a b グッバイ、ドン・グリーズ!:いしづかあつこ監督のオリジナル劇場版アニメ 2022公開 「宇宙よりも遠い場所」スタッフ集結 マッドハウス制作”. MANTANWEB(まんたんウェブ). 株式会社MANTAN (2021年7月2日). 2022年1月13日閲覧。
  3. ^ 劇場アニメ「グッバイ、ドン・グリーズ!」22年2月18日公開 花江夏樹オススメの公開日の覚え方は「花澤さんの…」”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム (2021年11月5日). 2022年1月13日閲覧。
  4. ^ [Alexandros]×『グッバイ、ドン・グリーズ!』、メンバーとキャラクターがイラスト上で共演”. THE FIRST TIMES. THE FIRST TAKE (2022年1月16日). 2022年2月15日閲覧。
  5. ^ “「よりもい」スタッフによる劇場アニメ「グッバイ、ドン・グリーズ!」来年公開”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年7月2日). https://natalie.mu/comic/news/435151 2021年11月10日閲覧。 
  6. ^ いしづかあつこ「グッバイ、ドン・グリーズ!」は"未来を大切にしたくなる映画"”. 映画ナタリー. 株式会社ナターシャ (2021年10月31日). 2022年1月13日閲覧。
  7. ^ “いしづかあつこ×吉松孝博×MADHOUSE「よりもい」チームの新作劇場アニメ「グッバイ、ドン・グリーズ!」が2022年に公開決定!”. KADOKAWA. (2021年7月2日). https://webnewtype.com/news/article/1040069/ 2022年1月13日閲覧。 
  8. ^ a b c d e タナカシノブ (2022年1月12日). “いしづかあつこ監督が呼びかけ「『グッバイ、ドン・グリーズ!』で『よりもい』要素を探して!」”. Movie Walker. 株式会社ムービーウォーカー. 2022年1月13日閲覧。
  9. ^ 松村沙友理「中高生の時って人間最強感がある」 アニメ映画で"尊い"感動”. ORICON NEWS. オリコン (2022年1月10日). 2022年1月13日閲覧。
  10. ^ a b 松村沙友理「中高生の時って人間最強感がある」 アニメ映画で"尊い"感動”. Pop'n'Roll. ジャパンミュージックネットワーク (2022年1月10日). 2022年1月13日閲覧。
  11. ^ a b c d “「グッバイ、ドン・グリーズ!」を水瀬いのりら「よりもい」キャストが語る”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年12月22日). https://natalie.mu/comic/news/458827 2022年1月13日閲覧。 
  12. ^ a b “「グッバイ、ドン・グリーズ!」主人公の両親役に田村淳&指原莉乃、本予告映像も到着”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年12月9日). https://natalie.mu/comic/news/456826 2021年12月9日閲覧。 
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n o “「ドングリーズ」×「よりもい」、水瀬いのり・花澤香菜らのナレーション入り映像公開”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年10月19日). https://natalie.mu/comic/news/449961 2022年1月13日閲覧。 
  14. ^ “「グッバイ、ドン・グリーズ!」主題歌は[Alexandrosが担当、楽曲入りPV公開”]. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年10月27日). https://natalie.mu/comic/news/451146 2021年11月10日閲覧。 
  15. ^ “劇場アニメ「グッバイ、ドン・グリーズ!」に花澤香菜が出演、コミカライズ連載も決定”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年9月28日). https://natalie.mu/comic/news/446902 2021年11月10日閲覧。 
  16. ^ “それ求愛性少女症候群じゃないですか?ボカロ楽曲が生んだ青春譚「ベノム」”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年2月15日). https://natalie.mu/comic/news/465792 2022年2月15日閲覧。 
  17. ^ 「アニメ映画 グッバイ、ドン・グリーズ!」 Goodbye,DonGlees Project[角川つばさ文庫]”. KADOKAWA. 2022年2月18日閲覧。
  18. ^ 「グッバイ、ドン・グリーズ!」 山室 有紀子[角川文庫]”. KADOKAWA. 2022年2月18日閲覧。
  19. ^ 「グッバイ、ドン・グリーズ! オフショット」 Goodbye,DonGlees Project[MF文庫J]”. KADOKAWA. 2022年2月25日閲覧。
  20. ^ 「グッバイ、ドン・グリーズ!」 しんき[MFコミックス ジーンシリーズ]”. KADOKAWA. 2022年2月18日閲覧。

外部リンク[編集]