カシオトーン

カシオトーン CT-201 (1980年)

カシオトーンCasiotone)は、カシオ計算機1980年から製造・販売している電子楽器キーボード)のブランドである。

概要[編集]

カシオトーン第一号は1980年1月[1]に発売されたCT-201。玩具を別にすれば唯一楽器専業メーカー以外で製造されている電子キーボードで、他社製品と遜色ない性能でありながら安い価格設定が特徴である。また、鍵盤が光るメロディガイド機能を用意したのはカシオトーンが初めてである。

初期製品のノウハウは1984年から発売されたプロユース向けのシンセサイザーであるCZシリーズ、VZシリーズなどに生かされたが、わずか数年でシンセサイザー開発・販売から撤退し、それ以降は一般家庭・初心者向きの製品に絞り込むこととなった。2012年にXWシリーズをもってシンセサイザー市場に再参入したが、現在は生産終了している。

初代モデル以降、カシオトーンという名称は公式に用いられなくなり、カシオの電子キーボード全体を指す通称として一部で使われていたが、2020年1月に楽器事業40周年を迎えるにあたり、新たな電子キーボード市場を創造するべく、2019年のCT-S2000とLK-312の発売に合わせ、「Casiotone」として名称が復活した[2]

音源方式[編集]

初期のものはデジタル合成で、HZ-600から継承したSD音源も存在したが、1988年のCT-640よりPCM方式のサンプリング音源に移行。最初期には本体にも「Pulse Code Modulation」と書かれていた(ステレオ式に移行したときにはその表示もあった)。廉価版機種では現在まで「PCM音源」と呼ばれているのに対し、上位機種になると「CD音源」や「スーパーCD音源」と独自の呼称が付く[3]。その後、上位機種の音源は1機種(CTK-1000)のみに終わった「IXA音源」、同社の電子ピアノ「セルヴィアーノ」に採用された「A²(Aスクエア)音源」、「ZPI音源」や「HL音源」と次々に改良が加えられていった。現在では生楽器の音色の表現をメインにHL音源を改良し、最大同時発音数を向上(32音→48音)させた「AHL音源」と廉価版のPCM音源に二分されている[4]
GM対応になったのはCTK-750・CTK-650が最初であるが、この2機種は音色配列のみの対応のためGMマークが付いていない(それ以降の128音色以上を搭載する機種は完全対応している)。

製品ラインアップ[編集]

過去の上位機種では「SUPER CD SOUND COMPOSER」や「IXA SOUND KEYBOARD」と音源方式にちなんだシリーズ名が付けられていたこともあったが、それ以下の機種では特にシリーズ名はなく、自動伴奏を搭載する機種では「カシオトーン」で統一されていた。また、SD音源を搭載し、音色を加工して本体内もしくはRAMパックに保存できたHTシリーズも過去に存在した。

鍵盤が光るレッスン支援機能「光ナビゲーション」[5]の登場前には、「ピッカピカトーン」という鍵盤の奥に個別に配置された赤と緑のLEDで音の長さ、音階の2つのモードでメロディガイドを行う初心者向けの機種(PTシリーズ)も存在しており、本体内蔵曲だけでなく別売のROMパックを本体にセットすることにより様々な曲を演奏できた[6]

型番については、標準サイズの61鍵以下の鍵盤を持つ機種には「CT(1990年代中ごろよりCTK)」、73鍵以上の機種[7]には「WK」が頭に付く。ミニサイズ以下の鍵盤を持つ機種には「MT」と付けられていた[8]。その他廉価版では「SA(49鍵未満の小型機種)」「CA」「MA」となっていたが、CAシリーズは現在ではCTK型番に統一されている。

2019年に復活したCasiotoneブランドは、光ナビゲーションキーボード、ベーシックキーボード、ミニキーボードを包括するが、ハイグレードキーボードのみ「CT-X」としてCasiotoneとは別扱いになっている。

現在の製品ラインアップは以下の通り。

  • 光ナビゲーションキーボードLKシリーズ[9]):鍵盤が光るメロディガイドを採用した初心者向けの機種。内蔵デモ曲が豊富。全てAHL音源。
  • ベーシックキーボード(CT・CTKシリーズ):機能を基本的なものに絞った機種。上位機種ではAHL音源を搭載。
  • ミニキーボード(SAシリーズ):ミニサイズ(もしくはそれ以下)の鍵盤を持つ小型機種。
  • ハイグレードキーボード(CT-Xシリーズ):ベーシックキーボードに、AHL音源搭載機種にSDメモリーカードスロット、ピッチベンドホイールを追加した最上位機種。

その他[編集]

  • かつてDTM向け商品を扱っていた時期に販売されていた音源モジュール(GZ-50Mなど)の音源方式はカシオトーンのものを流用していた。
  • サトウ食品_(新潟県) - 「サトウの切り餅」の商品二個分の応募券で『CASIOもちもちトーンPT-1』のクローズド懸賞を行っていた。

脚注[編集]

  1. ^ Nipponstyle[リンク切れ]
  2. ^ 手軽に持ち運べる軽量・コンパクトサイズの電子キーボード”. カシオ計算機 (2019年8月21日). 2019年10月5日閲覧。
  3. ^ 基本的に全てPCM音源であるが、価格帯によって音質や最大同時発音数が違う。
  4. ^ 廉価版でも音質は向上しているが、最大同時発音数を少なくしているなどのデチューンはされている。
  5. ^ 当初は「MAGICAL LIGHT」。その後「KEY LIGHTING SYSTEM」を経て現在の名称となる。
  6. ^ この機能は後にヤマハが自社のポータブルキーボードに採用していたことがあった。
  7. ^ 73鍵(6オクターブ)はWK-1200のみ。
  8. ^ レゲエ界に革命を起こしたリズム「スレンテン」は日本人女性が生み出した:カシオ開発者・奥田広子さん”. nippon.com (2022年1月3日). 2022年1月5日閲覧。
  9. ^ LKという型式は、かつてカシオトーンのうち低価格帯の機種に教則本やビデオなどを付属して製造・販売されていたものにも命名されていた。

外部リンク[編集]