イヌシデ

イヌシデ
イヌシデの盆栽
分類クロンキスト体系
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : マンサク亜綱 Hamamelidae
: ブナ目 Fagales
: カバノキ科 Betulaceae
: クマシデ属 Carpinus
: イヌシデ C. tschonoskii
学名
Carpinus tschonoskii Maxim. (1881)[1]
シノニム
和名
イヌシデ、シロシデ、ソネ[1]
品種

イヌシデ(犬四手[4]学名Carpinus tschonoskii)は、カバノキ科クマシデ属落葉高木。山野に生える。別名はシロシデ[4]ソロ[注 1]ソネ[1]

名称[編集]

和名の由来は、花穂の垂れ下がる様子が注連縄(しめなわ)などに使われる紙垂(しで)に似ていることから[5]。近縁種のアカシデと区別するため、耐寒性に劣ることから「イヌ」(劣るの意)をつけている[4]。学名の種小名 tschonoskii須川長之助献名されたもの。中国名は、昌化鵝耳櫪[1]

分布と生育環境[編集]

内陸の冷温帯と暖温帯の中間である中間温帯林の構成種であり[6]本州岩手県新潟県以南)、四国九州の山野に自生する[4][7]雑木林で普通に見られる[4]。基本的に陽樹だが、稚樹や幼樹には一定の耐陰性がある[6]

特徴[編集]

落葉広葉樹の高木で、高さ15 - 20メートル (m) 。樹皮は灰色でなめらかであり、縦に濃灰色の筋ができ、老木になると筋の部分が凹凸になる[7]。一年枝は毛が密生するが、毛がないこともある[7]の側脈の間に白い毛が多くあり、秋には葉が黄色く紅葉する[5]紅葉は、多少赤褐色がかるものもあるが遠目にはほとんど黄色に色づく[4]。葉が散って地上に落ちると、葉はすぐに丸まる[4]

花期は4 - 5月ごろ[7]。雌雄異花で花序は穂状で下垂する。 風によって花粉を飛ばす風媒花であり、種子も風を利用した種子散布に適応した羽根形の構造となっている[6]。紅葉するころには、果実も完熟する[4]果苞はあまり切れ込まない[7]

冬芽は長楕円形に鱗芽で、茶褐色をしており、芽鱗の数はアカシデよりも少ない[7]側芽は枝に伏してつき、互生する[7]

近縁種にアカシデクマシデがある。アカシデは新芽と紅葉の葉が赤くなり、イヌシデはアカシデほどの芽吹きの時の赤みはないため、全体の色合いで判別できる[7]。また、アカシデよりも樹皮の縦筋が明瞭に出る[7]。クマシデは葉の脈が倍以上あることからイヌシデと区別することができる。アカシデは花も赤いのに対して、イヌシデは黄色っぽい傾向がある[4]

人との関わり[編集]

新緑や紅葉が美しいことから、庭園木や盆栽に利用される[4]。かつてはシイタケほだ木、薪炭材として利用され[4]、巨木になると樹形が美しいことから地域の境界を示す境界木として植えられる事もあった[6]

広島県北広島町にあるイヌシデの変異種の群生「天狗シデ」は、2000年に天然記念物に指定されている[8]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ アカシデクマシデも共に、ソロとよばれる[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Carpinus tschonoskii Maxim. イヌシデ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月28日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Carpinus fauriei Nakai イヌシデ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月28日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Carpinus tschonoskii Maxim. f. pendula Hayashi シダレイヌシデ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月8日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 亀田龍吉 2014, p. 72.
  5. ^ a b イヌシデとは?どんな樹木?葉や花の特徴や見分け方をご紹介!”. BOTANICA. 2022年6月3日閲覧。
  6. ^ a b c d 渡辺一夫 『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか:樹木の個性と生き残り戦略』 築地書館 2009 ISBN 9784806713937 pp.132-138.
  7. ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 134
  8. ^ 大朝のテングシデ群落 - 文化遺産オンライン、2017年11月25日閲覧。

参考文献[編集]

  • 亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年10月5日。ISBN 978-4-418-14424-2 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、133頁。ISBN 978-4-416-61438-9 

関連項目[編集]